パワハラ防止

2020.06.24

パワハラ防止法

 2020年6月1日からパワハラ防止法が施行されました。パワハラ防止法は全ての企業に対してパワハラ対策を義務付けるというものです。2020年6月1日から施行されたことにより、大企業は現在パワハラ対策が義務化されております。中小企業は、2022年3月31日までは経過措置(努力義務)ですが、2022年4月1日からは、中小企業もパワハラ対策が義務化となります。

 昨今パワハラに関するニュースが世間を騒がせております。パワハラは許されない行為という認識であるにもかかわらず、日本のパワハラは増加傾向をたどっているのです。2016年に厚生労働省が実施した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがある回答した者は32.5%にも及びました。2012年度の実態調査では、25.3%であったため、大幅な増加となっています。また、都道府県における「いじめ、嫌がらせ」の相談件数も2018年度には8万件を超えています。従業員別規模で見てみると、パワハラを受けたことがあると答えた従業員は、規模99人以下の企業では21.8%、100人以上の企業では28.1%に上っています。大企業でも中小企業でも約4人に1人はパワハラを受けたと感じている結果となっております。

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※引用元 https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/statistics/

 このような実態がありながら、今まで日本の法律ではパワハラに関する明確な定義がなく、防止施策も存在していませんでした。しかし、2019年6月5日に労働施策総合推進法の改正法が公布されることとなり、パワハラが初めて法律上で定義されることとなりました(2020年6月から施行)。つまり、パワハラは法律違反になると定義されたことになります。これにより、パワハラの減少が大いに期待されます。また、パワハラの定義付けは、パワハラを減らすという目的の他に、「パワハラ」という言葉の正しい認識を持ってもらうという意味合いもあります。「ちょっと厳しく指導したらパワハラと言われるので、部下の指導方法がわからない」など、現場の管理職の方々からは、そのような声も聞こえてきます。しかし、パワハラが明確に定義されることによって、「パワハラ」という言葉で、業務上、必要な指示や指導、あるいは教育ができなくなってしまうケースを避ける目的もあるのです。

【パワーハラスメントの定義|パワハラ防止法】


 ハラスメントというのは、他の労働者への言動により、法律で保護されている他者の権利や利益を侵害することです。パワーとは「権力」の意味で使われており、つまり、権力や立場などの優越性を背景にしたいじめや嫌がらせが「パワーハラスメント」ということになります。
厚生労働省が「パワーハラスメント」と定義するのは、
職場において行われる


優越的な関係を背景とした言動

業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

労働者の就業環境が害されるもの

①から③までの3つの要素を全て満たすものを言います。なお客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントに該当しません。
「職場」という言葉が使われおりますが、「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指します。当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所は「職場」に含まれます。また、「労働者」とは、正規雇用労働者のみならず、アルバイト労働者、契約社員等、いわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する労働者の全てを含む概念です。派遣社員に関しては、雇用は派遣元ですが、指揮命令が派遣先となりますので、就業先でパワハラに該当する行為を受けた場合は、パワハラと訴えることができます。

【どのような行為がパワハラとなるのか|パワハラ防止法】

 どのような行為がパワハラとなるのか、定義がなされました。職場におけるパワハラには6つの類型があるとされています。この6つの類型は、優越的な背景として行われたものであることが前提となります。また、6つの類型がパワハラの全てではありません。これら以外にも仕事上の優越的な関係を背景として、相手に対して精神的・肉体的に苦痛を与える者と判定されれば、それが6つの類型に当てはまらない行為であっても「パワハラ」となります。ハラスメントに関しては、時代や働き方によって様々なものがでてきます。新型コロナウイルスの影響でテレワークが広まりましたが、テレワークにおけるパワハラなども出てきました。どの行為がパワハラになるかは個人が常に意識すべき点であると言えます。
(6つの類型)
身体的な攻撃:殴る、蹴る、物を投げるなどの行為です。昭和の時代では上司に殴られるのは、当たり前だったというような声も聞こえてきますが、今の時代ではもちろん通用しません。殴る、蹴る、物を投げるなどの行為だけでなく、胸ぐらをつかむや頭をぶつなどの行為も受け取る側に苦痛を与える場合はパワハラとみなされる可能性があります。

精神的な攻撃:人格否定するような言動を行う・必要以上に長い厳しい叱責を繰り返し行う・他の労働者の前で大声で威圧的な叱責を繰り返し行う・相手の性格や能力を否定、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信する。パワハラにおいて、精神的な攻撃の事例が一番多いと言えます。また、業務上の指示、指導、教育と線引きが難しい部分が多く、混乱を招く部分ではありますが、その人自身の人格を否定するような言動は避ける、説教は短めに、部下に叱るときは大勢の前ではなく別の部屋に呼び出すなどをするとよいです。仮に部下の事が気にくわなかったとしても、あくまで叱るときは、部下のことを思って叱るということを忘れないようにしましょう。そこは仕事と割り切ることが大切です。

人間関係からの切り離し:意に沿わない労働者に対して、仕事を与えなかったり、長時間にわたり隔離したりする・一人の労働者に対して集団で無視をし、職場で孤立させる。パワハラの場合、被害を受けている者だけでなく、周りが見るに堪えなくなり、会社に伝えて発覚するということがありますが、集団でのいじめの場合、発覚しないまま泣き寝入りするケースが多いと言えます。被害者が気軽に相談できる場を設けることでこれらのケースは大幅に改善されます。

過大な要求:長時間にわたる苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を課す・必要な教育を行わないまま到底到達できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったら、厳しく叱責をする・労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。新入社員研修でよく起こりそうな内容です。近年では大分減りましたが、新入社員を合宿所につれていき隔離し、到底達成できないような目標を与え、罰として食事抜きだったり、睡眠時間を削らされる、何キロも走らされるなどの事例も以前はありました。新入社員研修では、学生気分を抜くために多少厳しくなる企業が多いですが、行き過ぎはパワハラに該当しますので気をつけましょう。

過小な要求:管理職を辞めさせるため、誰でも遂行可能な業務を頻繁に行わせる・気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない。確かに会社側としても会社に貢献していない労働者を雇い続けるのはリスクでしかありませんが、退職を促すためにこのようなことをしてはなりません。このようなケースは業務量が減るので労働者に負担になるわけではなく、パワハラとして相談させるケースは少ないと言えます。しかし、このような行為もパワハラであると定義されていると認識する必要があります。

個の侵害:労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をする・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機敏な個人情報について、当該労働者の了解を得ず他の労働者に暴露する。このケースは、テレワーク時に頻繁に起きたパワハラとして世間を賑わせました。テレワークであると、勤務時間とプライベート時間との線引きが難しく、それによる上司の監視などで不快感を訴える労働者が多かったと言えます。また、今後ダイバシティ経営が増えることで、より一層注意の必要な類型だと言えます。

【パワハラ対策は具体的に何をしなくてはならないのか|パワハラ防止法】


では、パワハラ対策として具体的にどのような対策を取れば良いのでしょうか。

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発就業規則等に「パワハラをしてはいけません。もしパワハラをしたら罰せられます。このようなことがパワハラとなります。」というような明記が必要になります。そしてそれを労働者に対して周知するのも義務となります。ちなみに就業規則とは、使用者がその職場で働く労働者の労働条件や服務規則、懲戒処分などについて定めたものです。常時10人以上の労働者が働いている職場については、就業規則の作成と届け出が義務づけられています。

相談窓口の設置:労働者がハラスメントを受けた際に相談できる場を設けることが義務化されました。形だけの相談窓口の取り付けは違法となりますので注意が必要です。例えば、「例えば相談窓口の設置が義務付けされたから、知識がない労働者を相談員にする」「適当に相談員を決め、労働者に周知しない」「人事や役員など人事権があるものを相談員とする」などはいけません。厚生労働省が明記するには外部相談窓口を設置することをおすすめしております。外部窓口に対してどのような機関が良いかはこちらをご参照ください。

ハラスメント発覚後の迅速かつ適切な対応・再発防止:ハラスメントが起こってしまった際に適切な対応をすることや再発防止に努めることが求められます。基本的にどのような対応をするかは相談窓口と十分に連携をとり行いましょう。

ハラスメント研修:ハラスメント研修については努力義務となってはおりますが、年に一回は実施した方が良いと言えます。就業規則に明記することやポスターなどで周知をすることは必須ですが、それだけでは、実際にどのようなことがパワハラになるのかという基準が分からない労働者が発生します。ですので、具体的に研修という場を設けることで、ハラスメントに関する知識を深めることが必要となります。

【パワハラ対策を行っていないとどうなるのか|パワハラ防止法】


パワハラ対策が義務化されたにも関わらず、パワハラ対策を行っていないと国から企業名が公表される可能性があります。会社の名前が公表されてしまった場合、特に中小企業にとっては、倒産に追い込まれる可能性もあります。また、昨今のSNSブームもあってか、国から企業名が公表される前に、パワハラ対策を行っていないという事実が広がる可能性もありますので、会社を守るためにも必ずパワハラ対策は行いましょう。
また、パワハラの行為者は、損害賠償責任や刑法上の責任を負う可能性もあります。それに加えて、労働契約法という法律においては、会社は、職場で働く労働者に対する安全配慮義務を負うこととしています。安全配慮義務とは、労働者が安全に働いてもらう環境を提供する義務です。よって、ハラスメントを放置してしまっている、あるいは間違った対応をしたばかりに、職場でのトラブルが起こったとき、会社側には、この安全配慮義務に基づいた、職場環境整備義務や職場環境調整義務違反が問われることとなり、民法上の損害賠償請求を問われることになりかねません。

 労働者の安全を守ることは会社としての義務です。昨今、ストレスチェック制度、働き方改革、パワハラ防止法など様々な形で職場のメンタルヘルス対策を実施しようと国が動いています。大企業だけでなく、中小企業も早めの内に、パワハラ対策を行うことを推奨いたします。

ミーデンでは中小企業様でも導入しやすい金額でハラスメント対策、メンタルヘルス対策を行います。

人数により月額3,000円~

詳細はこちら

参考文献「パワハラ セクハラ マタハラ 相談はこうして話を聴く 著 野原 蓉子」、「職場のハラスメント早わかり 著 布施直春」、「職場のハラスメント防止策と事後対応がわかる本 監修 大槻 哲也 編著 コンデックス情報研究所  」

 

 

 

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