パワハラ防止

2020年11月

2020.11.21

パワハラ 事例①

 【静岡労基署長(化学会社)自殺事件 東京地裁平成19年10月15日判決】

 Aは、大学卒業後の平成2年4月にN社に入社し、大阪支店に勤務した後平成9年4月から名古屋支店静岡営業所静岡2係に所属して、医薬情報担当者(MR)として勤務していた。上司のB係長から、「存在が目障りだ。居るだけでみんなが迷惑している。お前のおかみさんも気が知れん。お願いだから消えてくれ」、「給料泥棒」、「どこへ飛ばされようとAは仕事をしない奴だと言いふらしてやる」などと激しく罵倒されたほか、身なりに無頓着で、ふけがひどかったり、喫煙による口臭がひどかったりしたことから、「お前病気と違うか」などと罵られた。


平成15年1月から3月にかけて、Aは医師や患者からクレームを受け、土下座をするなどのトラブルが続いたことから、食欲、興味、性欲が減退し、3月7日未明、家族や上司を名宛人とする8通の遺書を残し、公園の立木の枝で首を吊って自殺した。BはAの告別式で、遺族や同僚に対し、Aのふけや口臭がひどかったこと、Aが医師等と意思疎通できなかったこと等を指摘した。
Aの妻(原告)は、労基署長(被告)に対し、
Aの死亡は業務に起因するものであるとして、労災保険法に基づき、遺族補償給付等を請求した。しかし、被告がこれを不支給とする処分をしたことから、審査請求及び再審査請求を経て、同処分の取り消しを求めて提起した。

【判決要旨】


労災保険法に基づく保険給付は、労働者の業務上の死亡等について行われるところ、労働者の死亡等を業務上のものと認めるためには、業務と死亡との間に相当因果関係が認められることが必要である。また、労災保険制度が、労基基準法の危険責任の法理に基づく使用者の災害補償責任を担保する制度であることからすれば、上記の相当因果関係を認めるためには、当該死亡等の結果が、当該業務に内在する危険が現実化したものであると評価し得ることが必要である。

精神障害の発症については、環境によるストレスと、個体側の反応性、脆弱性を考慮し、精神的破綻が生じるかどうかが決まるという「ストレスー脆弱性理論」が広く受け入れられていることからすれば、業務による心理的負担が、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重といえる場合に、当該精神障害の業務起因性を肯定するのが相当である。


労働者の自殺についての業務起因性が問題になる場合、当該労働者が業務に起因する精神障害を発症した結果、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、自殺を思い止まる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺に至った場合には、当該死亡結果を意図したとまではいえず、労災保険法12条の2の2第1項にいう「故意」による死亡に該当しないというべきである。
Aが遺書において自殺の動機を
Bの言動と挙げていること、Bの着任後、AがBとの人間関係で悩んでいたことを周囲に打ち明けていたこと、Aの個体側の要因に元々の精神疾患などを発症しているなどの問題が見当たらないことからして、Aに加わった業務上の心理的負荷の原因としては、BのAに対する発言によるものであると言える。

上司とのトラブルに伴う心理的負荷が、一般的に生じ得る程度のものではなく、①Aのキャリアだけでなく、その人格を否定するなど、Bの発した言葉の内容が過度に厳しいこと、②Aの死後における同僚や遺族に対する発言からも、BのAに対する嫌悪の感情の側面があること、③BがAに対して極めて直截な言い方をし、傍若無人発言をしていること、④係の勤務形態が、上司とのトラブルを円滑に解決することが困難な環境にあることから、Aの心理的負荷は平均強度を大きく上回るものといわなければならない。


以上によれば、Bの態度によるAの心理的負荷は、通常のものとはかけ離れた程度に強度のものということができ、一般人を基準として、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させるほどに過重なものと評価するのができる。
業務に起因して精神障害を発症したAは、精神障害になったまま、正常の認識及び行為選択能力が当該精神障害により著しく阻害されている状態で自殺に及んだと推定されるため、Aの自殺は、故意の自殺ではないとして、業務起因性を認めることができる

【解説】


職場において、上司が部下に対して、叱ることはあり、それによって関係が悪くなることはあります。しかし、それが直ちにパワハラに該当するかというとそうでない場合が多いです。しかし、それが通常許容される限度を超えるような場合には「パワハラ」とみなされます。上司として叱り方に注意を払うことは、重要なことです。

人間なので私情が入ってしまうこともあるかもしれません。
今回のケースでは、「パワーハラスメント」あるいは「パワハラ」という言葉は使われていませんが、その内容は典型的なパワハラ事案といえます。本判決では、心理的負荷が平均強度を大きく上回る理由として、①言葉が過度に厳しいこと②加害者の被害者に対する嫌悪の感情が見られること③直截で傍若無人の言い方であること、④勤務形態がトラブルを解決するのに困難な環境にあることを挙げてますが、今回のケースだけでなく、様々なケースで「パワハラ」と認定する際の基準として応用可能です。

※参考文献「ここまでやったらパワハラです! 裁判例111選」 著 君嶋 護男

2020.11.14

コミュニケーション不足によって起こるパワハラ|パワハラ防止法

【パワハラの起こりやすい職場チェックリスト】

もしこれらのチェックリストに半分以上当てはまるようであれば注意が必要です。
厚生労働省が発表している、
パワハラに関する相談があった職場の特徴についての調査結果は以下のようです。

上司と部下のコミュニケーションが少ない職場 45.8%

失敗が許されない/失敗への許容度が低い職場 22.0%

残業が多い/休みが取りにくい職場 21.0%

正社員や正社員以外(パート、派遣社員など)など様々な立場の従業員が一緒に働いている職場 19.5%

従業員が少ない職場 13.1%

様々な年代の従業員がいる職場 11.9%

他部署や外部との交流が少ない職場 11.8%

上記の結果から、パワハラが起こる職場はコミュニケーションの少なさが影響しているかもしれません。普段からコミュニケーションを取れていると、言葉の受け取り方は違いますよね。例えば上司から「叱る」という行為を受けても、普段はよくしている上司から注意を受けているのだから、これは自分に非があることで直さなくてはいけないなと素直にとらえられることもできます。

また上司側は、叱った後にフォローもしやすいです。普段から適度にコミュニケーションをとっておくことはパワハラを防ぐのに適切な方法です。会社での「雑談」はよくないとのイメージを持つかもしれませんが、適度な雑談を取ることは良い職場にするのに大切なのかもしれませんね。当社契約企業様でいつも職場が明るい企業様がおります。担当者様がおっしゃるには、社員同士がコミュニケーションを取りやすい雰囲気を積極的に作り出しているそうです。

まとめ

 普段からコミュニケーションをとることで、叱ったときや注意したときの細かいニュアンスなどの受け取り方が違います。普段は信頼関係を築けている上司からの注意に対して、それをパワハラと受け取る方はいないと思います。コミュニケーションが信頼関係を生むという考えを常に持っておくと良いと思います。仕事中の適度な雑談も働きやすい職場にする上で大切な要因と言えますね。

※参考文献【「職場のハラスメント」早わかり 著者 布施 直春】

2020.11.07

相談窓口における面談の進め方|パワハラ防止法

 ハラスメント対策において、相談窓口の初動は大変重要であります。相談員が初動を間違えると、相談者に失望感や不信感を与えてしまい、問題がさらに悪化してしまいます。こじれてしまったら最後、最終的には裁判沙汰になります。問題をこじらせないようにするためには、相談窓口の初動にかかっているのです。

問題をこじらせないようにするためには、初動で信頼関係をつくれるかにかかっています。面談には基本的にカウンセリングの基本姿勢で行います。面談の最初の時点では、相談者との信頼関係はまだできていません。

【信頼関係を作っていく上で大切な、最初の言葉】


・お待ちしておりました。
・お忙しい中、時間をつくっていただきありがとうございます。しっかりお話をうかがわせていただきます。
・この時間でお話しをすることは○○さんの同意がない限り絶対に漏れませんので安心してお話ください。

カウンセリングにおいて大切なことは、相談者と信頼関係を作ることです。信頼関係をつくれるかいなかで今後の相談の進み方が違います。信頼関係をつくることで相談者はこの人になら話しても良いという気持ちがでてきます。

【守秘義務 必ず同意をとること】


相談窓口の最重要事項といっても良いことは、守秘義務を遵守することです。相談者からの同意がない限りどんな内容も外部に漏らしていけません。誰かに内容を伝える必要がある場合は、どんなことであろうと「同意」を取る必要があります。相談員が「この内容は人事や上司に伝えた方が良い」と判断したとしても相談者の同意がない場合は絶対に漏らしてはいけません。どこまで会社に伝えるかは必ず相談者と随時相談し、同意を得てからになります。また、相談員が相談者とのかかわり方が分からなくなった場合、意見を求めるために、自分の上司や外部に内容を相談することもNGです。もし困った場合は、「今後のことで上司と相談をしたいので特定されない範囲で相談しても良いですか」と同意を得てからです。ただし、希死念慮がある場合は、この範囲には入りいません。

【具体的手順】

■相手の話をなぞる、適度にレビューする
カウンセリングではこれを「伝え返し」という技法で表現します。単にオウム返しするのではなく、適度にレビューをします。これを自然にできるようにするには訓練が必要です。不自然な形で行ってしまうと「バカにしているのか」と思われる場合もありますので気を付けましょう。これが適切に行えると相談者は、
「話をしっかりと聴いてもらっている」という実感を持ちやすくなります。

■声のトーンを共鳴させる
声のトーンを共鳴させると、相談者と相談員の気持ちが共鳴しやすくなり、
お互いの距離を近づけることもできます。

■相づちを打つ
話を受けとめていることを示すために、相づちを打ちます。適度に相づちを打つと、相談者は「話を聴いてもらっている」という実感を持つことができ、
話がしやすくなります。

■相談者の体調を確認する
ハラスメントは、それを受けた者の心理を追い込むだけでなく、体調面にも影響を及ぼします。相談者の中には体調を崩している人がいますから、体調についても必ず確認します。また寝れない、ご飯を食べれていないなどの事をうったえていたら、うつ病などがすでに発症している可能性もあるので気を付けましょう。

■過重労働について確認する
最近は、パワハラと過重労働が重なっているケースが増えています。違法な長時間労働を放置していると、会社も法的な処分を受けることになりますから、労働時間を確認することも欠かせません。

■要望を聴き取る
相談においては、相談者の要望を聴いておくことも大切です。要望どおりの対応ができるとは限りませんが、ハラスメントの事実が明らかになった場合には、可能な限り要望を尊重します。

■先の見通しを伝える
相談を続ける中で相談者が何を望んでいるかを確認したら、「いまのところの私の考えでは、問題の解決策をこのように考えています」と相談員から提案します。少し先の見通しをわかる範囲で伝えることは、相手に希望を持ってもらうことにつながります。ただし、安易な約束や断定を避けるのはいうまでもありません。

■言い残したことがないかたずねる
面談の残りの5分くらいの時点で、
言い残したことはないかをたずねます。

■時間がきたら、次回の約束をする
1回の相談では、相談者は話しきれないことがあります。特に、精神的ショックが大きい場合は、相談がなかなか進まないことがむしろ普通です。そういう場合には、相談の回数をできるだけ多く持つか、精神的ショックに対応できる専門家を紹介するようにします。

※参考文献「パワハラ・セクハラ・マタハラ相談はこうして話を聴く こじらせない!職場ハラスメントの対処法 野原蓉子」


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