パワハラ防止

2020年12月

2020.12.26

パワハラとうつ病|パワハラ防止法における適切な対策とは?

 企業における「メンタルヘルス対策」「パワハラ問題」「過重労働」が注目されるようになってきたのは、2015年の大手広告代理店で起きた新入女性社員自殺事件からです。誰もが知っている大手企業の事件ということもあり社会に衝撃を与えました。自殺により亡くなった女性社員A(享年24)は、1か月の時間外労働が約130時間に達し、通常過労死ラインと言われている80時間を大幅に超えていました。企業側は、Aに対し残業時間を超えないように勤務時間を過小申告するよう指示していたとのことです。過重労働だけでなく、上司からのパワハラも行われていたとのことで、Aはうつ病を発症しておりました。自殺の原因はうつ病による精神疾患を背景としたものであると認められています。

 厚生労働省の報告によると、職場における自殺の主な原因は、1位過重労働、2位ハラスメント問題(人間関係)となっており、この事件のような事例が珍しいものではないと言えます。また、WHOにおける調査によると、自殺する前に95%は何らかの精神疾患に該当する状態にあると報告しております。この精神疾患の中でうつ病の割合が最も多く、うつ病と自殺の関係は深いと言えます。

 企業側が適切な対策を講じていれば、この事件を防げていたのではないかと思われます。2019年4月1日から働き方改革関連法案が施行(中小は2020年4月1日)され、時間外労働の上限規制が導入されました。また、2020年6月1日からパワハラ防止法が施行され、パワハラ対策が義務化(中小企業は2022年4月1日から義務化)されました。国は職場におけるハラスメント、過重労働、メンタルヘルス問題を重視し、「パワハラ、過重労働を起こさないようにすること」「万が一起きた場合、最悪の事態が起こるのを避けること」を対策として求めていることとなります。

【意味のある対策を】 

 適切な対策として、まず、パワハラや過重労働を起こさないように企業側が周知を徹底します。パワハラを起こしてはならないということを就業規則に記載し、従業員が見えるところにおいておくことが法令で決められておりますが、現実問題として従業員が就業規則を見るという行為はしないでしょう。ですので、事業主側が定期的にパワハラを行ってはならないなどの周知をすることが求められます。また年に数回(最低でも1回)の研修は必須と言えます。次に過重労働ですが、過重労働を防ぐには、部署ごとの責任者の役目が大きく影響します。残業をしてはならないという空気感や部下に対しての周知、残業するには申告が必要などの徹底をすることが効果的であると言えます。出退勤の打刻をつけることが義務化されておりますが、上記記載の大手広告代理店での事件のように、勤務時間を過小申告(タイムカードを早く切ってその後残業するなど)する可能性がありますので完全な対策とは言えません。

 次に実際にパワハラや過重労働が起きてしまった場合です。パワハラ防止法で相談窓口の設置という形で義務化され、対策を取っていくものと言えます。しかし、この相談窓口の役目はただ設置すればよいというものではありません。形式上の相談窓口を設定した場合、相談がある→話を聞く→人事に伝える→行為者と話合いの場を設けるのような流れになります。しかし、相談窓口の本来の役目は、相談者を守ることです。ですので、相談者が現在精神疾患を発症していないかなどの判断ができるかが必要になります。過重労働やパワハラを受けている場合、不眠や動悸、食欲減退など何かしらの身体的症状まで出ていることが多く、すでにうつ病を発症している可能性がきわめて高いのです。ですので、うつ病の可能性がある労働者を早めに専門機関につなげる(リファー)が第一優先になります。その後、相談者と話し合い、どのようにその問題を会社に伝えるかを一緒に考えます。そして、実際に問題解決の動きに入るというのが本来の流れになります。問題解決ばかりに目がいき、現在の相談者の状況やエネルギーを理解しないまま、先走ってしまうという相談機関は機能を果たしているとは言えません。相談者が精神疾患の可能性があるかどうかの判断は素人には難しいものがあります。素人が簡単に手をだしてよい分野ではありません。看護師、精神保健福祉士、心理士、医師など普段から精神疾患に携わっている専門家の役目になってきます。相談窓口としての適切な機関として必ずメンタルヘルスの知識があることが必須条件です。

 ストレスチェック制度、産業医巡視、働き方改革、パワハラ防止法など様々な職場メンタルヘルス問題を解決しようと法律ができてきていますが、まだまだアメリカと比べ相当な遅れを取っております。過重労働やハラスメント問題、メンタルヘルス問題が企業に与える損失は計り知れず、いまだその部分を把握できていない企業が多いかと思われます。企業のグローバル化が進むにつれて、企業がメンタルヘルス問題に目を向ける時代が来ているのです。

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2020.12.19

パワハラの境界線

 職場メンタルヘルス対策が、近年企業の課題となっております。ストレスチェック制度、産業医巡視、働き方改革、パワハラ防止法など、様々な職場メンタルヘルス対策に対する法律ができてきましたが、まだまだ十分なものとは言えません。厚生労働省が公表した2018年の「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、「現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスになっていると感じる事柄がある労働者」の割合は58.0%に上がり、多少の増減はあるものの、大体6割前後で推移しています。ストレスの主な要因の一つとして、人間関係の問題があげられますが、そのなかでも、パワハラになりうる職場でのいじめや嫌がらせは問題視されています。 都道府県労働局等に設置した総合労働相談に寄せられる「いじめ、嫌がらせ」の相談件数は近年増加しています。このような背景から、2019年6月に公布された労働施策総合推進法の改正によって、事業主の義務としてパワハラ防止措置を2020年6月から講じなくてはならないことが決定しました。この法制化では、始めてパワハラを定義したというものになります。

【実際には難しいパワハラの境界線】
最近になってようやく、パワハラの定義や対策の義務化が法律で定められてきましたが、的を射たものではあるものの、その内容はいまだ抽象的な表現にとどまっています。そもそもパワハラの内容を完全に定義するのは難しいものがあります。パワハラは、行為を受けた人の主観的な判断を含んで認められることに加えて、関係性、環境、言動などを考慮し、人によってその判断が異なるためです。例えば上司が部下をからかうという行為ですが、愛情をもって、少しきつめの冗談をいったり、ときには頭をこずいたりする際、それをパワハラととらえる部下もいれば、上司に可愛がられていると思う部下もいます。つまり、パワハラでは、さまざまな行為などに対する個人の認識や判断が重視されるものの、個人の価値観に左右されるため、個人によって境界線は異なると言えます。そのためパワハラを評価するのはとても難しいのです。
パワハラはセクハラと比較しても判断が難しいと言えます。セクハラの場合は、仕事と関係ないか、仕事と関係していても、性差別や性的視点で相手を評価しようとするものでありますが、パワハラは仕事の延長で行われるものであるので、業務の範囲内か否かの線引きが難しいので評価しづらいと言えます。

【適切なパワハラ対策】
今回パワハラ防止法が施行されたことにより、企業が行わなくてはならない措置が決められました。行わなくはならないことは簡潔に、「パワハラを行ってはならない」ということを全ての労働者に周知すること、労働者が相談できる場を設けること、実際にパワハラが起きた場合適切に対処し、再発防止に努めることです。研修や呼びかけを行うことによって、「パワハラは悪質である」ということを意識すれば、自ら発する言動に対して注意を払うようになります。また、パワハラの行為者は自らの行為がパワハラであると自覚していないケースが多いので、パワハラを受けた側が気軽に相談できる場を設けることで、早期にパワハラの被害者を減らすことが可能となります。どの行為がパワハラとするかという定義を意識することも大事ですが、個人がパワハラを受けていると感じた際に、すぐに相談できる場というのは大変意味のあるものになります。今後、パワハラ防止法の施行により、パワハラの数は減ると期待されますが、パワハラという性質上、個人の判断や捉え方による部分が大きいので、個人の意見が尊重される体制づくりが求められます。

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※参考文献【「精神科 第36巻 第4号」 編集 精神科編集委員会 発行 科学評論社  

「職場のパワーハラスメントーチェックリストを中心にー」 入江正洋 小林百雲子 津田彰 】

2020.12.15

社長にパワハラを受けている どうする?

 2020年6月1日パワハラ防止法が施行されました。現在パワハラ対策が大企業では義務化、中小企業では努力義務となっております。2022年4月1日からは中小企業含め全ての企業に対してパワハラ対策が完全義務化されます。パワハラ対策を行っていない場合法律違反となりますので早めの対策を行いましょう。


今回は社長にパワハラを受けている場合に対しての解説をいたします。社長にパワハラを受けているケースは意外にも多く、直接社長に対して言うことはできないので、泣き寝入りしてしまうことが多いのが現状です。特にこのケースは、小規模企業に多く見られます。会社が小規模であるほど社長の権限は強く、周りも注意しづらい環境になります。そういった職場では退職者が多く出るため、社長本人が気づいてくれれば良いのですが、大体の場合、「根性がないだけ」「辞めてくれてよかった」などと言って問題に目を向けません。ではどうしたら良いのでしょうか?

【社長からパワハラを受けている場合の最適な対処法】
全てのパワハラの行為者に共通していることですが、大体の場合、本人はパワハラをしているという自覚がありません。そのため、行為者に対して「あなたの言動はパワハラです」といったことを指摘する必要があります。社長以外のものが行為者であれば、直接の上司や人事、役員に指摘してもらうことができますが、社長の場合は難しいですよね。ではどうするのかが適切かというと、外部機関に伝えてもらうことです。外部機関に社長本人に指摘してもらうことで、自覚してもらうことが大切です。指摘しても直らない場合はどうしようもないですが、「パワハラを行っている社長がいる会社」と世間に知れ渡っては会社経営が傾きます。今の時代ではSNSもあるので、すぐに拡散してしまいます。そうなれば、小規模の会社であれば倒産の可能性もでてくるのです。そのため、たいていの社長は自らの行為を改めようとしますので効果があります。
では外部機関はどこに頼めば良いのでしょうか。恐らく、ここまで読んでいただいた場合、「そうは言っても、社長が権限を持っているから、外部機関と契約はしてくれない」と思ったのではないでしょうか。確かに会社規模が小さいと売上に直接的につながらないことに対してお金を出すことは避けようとしますので難しい問題です。しかし、会社契約をしていなくても個人からの相談に対して対応してくれる機関はありますので、そちらを利用することをお勧めします。ミーデンでも個人からのご相談を承っておりますのでお気軽にお問合せください。

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2020.12.12

パワハラ事例③

 【過重なノルマ、厳しい叱責、長時間労働等によりうつ病発症】 
(自動車販売会社自殺未遂事件)

 自動車販売に勤務するAは、新任の部長から「中途半端な人間、凝り固まった化石」などと言われ、幾度となく厳しく叱責された。
Aは役職定年前に異例の外販担当に異動させられ、部長から他の従業員よりも高いノルマが設定され、一部ノルマを達成できなかったことから、Aはノルマ達成のために休日出勤や毎月80時間を超えるような時間外労働をしなくてはならなかった。
部長は、会議等の場で、「売上が上がらない役に立たない者は辞めていい」などと述べ、Aに対しては「あんた給料高いだろ、給料の5倍くらい働かなければ合わない」などと叱責した。また、Aのノルマ達成率が60%に達しなかったことから、Aは部長から他の従業員の前で無能呼ばわりされたりし、人格否定するような言葉を発した。
Aは、役職定年後販売店に異動し、これを左遷と捉えてショックを受け、異動直後自殺を図った。一命はとりとめたものの、その後うつ病の診断を受けて退職した。Aは部長から達成困難なノルマを課せられ厳しく叱責され長時間労働を強いられたこと、部長とAの関係はパワハラと評価できること等を主張し、Aのうつ病発症は業務に起因するとして、労基署長に対し休業補償給付を請求したが、不支給処分を受けたため、その取消しを求めた。

【判決要旨】
ノルマは前年度の177.2%と極めて高く設定されていること、Aはノルマ達成には至らなかったものの、前年実績との対比で見ると、外販担当5人中1位と認められるから、Aの仕事の能率が低下していたと認めることはできない。
部長の着任後、Aの外販担当への異動までの約8ヶ月間、Aは部長から長時間にわたる叱責を受けることがあり、人格否定するような発言が認められ、この間部長の説教や叱責がAの与えた判断指針における心理的負荷の強度は「Ⅲ」に修正されるべきである。
精神障害に寄与したであろう複数の出来事が重なって認められる場合のストレス強度は総合的に評価すべきであるところ、外販異動前の部長による指導の範囲を超えた厳しい叱責、外販異動後の厳しいノルマの設定及びそのノルマの不達成など、Aのうつ病発症時期前の出来事に限っても、判断指針によれば、その心理的負荷の強度の総合評価は「強」とされるべきであり、平均的な労働者に精神障害を発症させるおそれのある程度の強度の心理的負荷があったということができる。他方、Aには、業務外の出来事による心理的負荷が窺われないこと、個体側の要因が認められないことからすると、業務とAのうつ病発症及び憎悪との間には相当因果関係が認められるから、本件各処分は違法である。

※引用文献「ここまでやったらパワハラです! 裁判例111選」 著 君嶋 護男

【解説】
今回のケースでは、あきらかなパワハラといえるような言動がそろっています。長時間労働の強制、ノルマをあえて高く設定する、外販担当への異動、人格否定をする言動など、全ての要因がAに対して心理的負荷をかけてしまい、結果、Aはうつ病発症や自殺未遂をしてしまったのです。ノルマの設定では、営業職では特に気をつけなくてはいけません。明らかに目標達成が不可能なノルマを設定することはパワハラとして認定されることになります。また、それに対して人格否定することや他の従業員の前で厳しい叱責をすることはパワハラです。また、今回のケースでは長時間労働を強制されており、過労死する可能性も考えられました。部長の言動は悪質でありますが、職場の現状を把握できていない会社側にも問題のある事例です。

2020年6月1日からパワハラ防止法が施行されました。現在大企業はパワハラ対策が義務化、

2022年4月1日からは中小企業も完全義務化になります。 

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2020.12.09

ハラスメントの種類

  2020年6月パワハラ防止法が施行されました。現在大企業はパワハラ対策が義務化されております。パワハラ対策を行っていないことは法律違反となります。2022年4月1日からは中小企業も全てパワハラ対策が義務化されます。中小企業は2022年3月31日までは努力義務ですが、なるべく早めの対策を行いましょう。
【ハラスメント】
「ハラスメント」とは、「嫌がらせ」を意味します。皆さんがハラスメントと聞いて何を思い浮かべますでしょうか?
パワハラ」、「セクハラ」、「マタハラ」、「イクハラ」など様々なハラスメントがあります。時代が進むにつれて新しいハラスメントも増えています。また、新型コロナウイルスの影響で在宅ワークが増え、それによって新しいパワハラや新しいセクハラの形も問題となっており、会社側も時代に沿ったハラスメントへの対応が求められています。
一番最初のハラスメントはセクハラと言われており、日本では1989年に世間をにぎわせ、流行言大賞にもなりました。それからセクハラに対する法律やマタハラ、イクハラついに2020年パワハラに対する法律ができました。

【様々なハラスメント】


■セクシュアルハラスメント(セクハラ):職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件に不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること。
男性から女性だけでなく、女性から男性、同性間でも成立します。相談窓口では、基本的に男性相談者には男性相談員が、女性相談者には女性相談員が対応します。

■パワーハラスメント(パワハラ):職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること。
2020年6月にはじめてパワハラ対策が正式に義務化されました。パワハラを受けた相談者は高確率でメンタルヘルス不調をきたしているため、相談員にはメンタルヘルスの知識が求められます。

■マタニティハラスメント(マタハラ):女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、その他の妊娠又は出産に関する事由で当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いを受けることなど。
パワハラ、セクハラなどその他のハラスメントに関しても不利益な取り扱いをすることは法律違反となっております。不利益な取り扱いとは、ハラスメントを相談したことに対して、降格、解雇、退職勧奨、給料の減額等を行うことです。

パタニティハラスメント(パタハラ)、育児ハラスメント(イクハラ):職場で働く男性が育児休業を取得するなどのことで、解雇や退職勧奨、降格、給料の減額等の労働条件の切り下げ、上司や同僚からの嫌がらせなどの不利益な取り扱いを受けることをパタハラもしくはイクハラという(イクハラという場合、女性労働者が受けるケースも含みうる)。

ドクターハラスメント(ドクハラ):診察する立場である医者の言動、態度、雰囲気により、患者が不快な思いをしたり精神的ストレスを負うこと。

モラルハラスメント(モラハラ):言動や態度などによって人の心を傷つける、精神的な暴力や嫌がらせのこと。パワハラやセクハラも、モラルハラスメントの一種といえる。

スメルハラスメント(スメハラ):体臭や口臭など職場での臭いにより周りに迷惑をかけるハラスメントです。お風呂に入っていないことや服を洗っていない、歯を磨いていないなどが考えられますが、それだけにとどまらず、香水や化粧品の匂いなども問題にあげられます。本人が気づいていないことや本人に対して注意をしづらいなどの問題があります。

アルコールハラスメント(アルハラ):相手の意に反して飲酒を強要する行為などのこと。これによって命を落とす事件も発生し、社会問題になっている。

アカデミックハラスメント(アカハラ):大学の教授がその優越的な立場を利用して、学生に対して行う嫌がらせなどのこと。

SOGIハラスメント(ソジハラ):性の多様性に関する差別的な言動や嫌がらせ行為のこと。SOGIとは、性的指向(好きになる相手の性)と性自認(自分が認識している性)を意味するSexual Orientation and Gender Identity の頭文字である。

カスタマーハラスメント(カスハラ:客(カスタマー)によるハラスメント行為で、従業員や店舗側に非がないにもかかわらず、怒鳴り散らすなどの行為のこと。

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※参考文献【「法改正対応! 職場のハラスメント防止策と事後対応がわかる本」 監修 大槻哲也 編著 コンデックス情報研究所】

2020.12.05

パワハラ事例②

 【「うつ病みたいな奴はいらん」を苦に自殺未遂】
ワイン及び食料品の輸入、販売等を業とする被告に入社した原告は、入社後1週間を過ぎた頃、部長から「馬鹿野郎」、「大学を出ても何もならない」などと罵倒され、その日行った仕事を報告すると、「それしかできないのか、事務の女の子でもこれだけの量をこなしている」などと叱責され、仕事を取り上げられたことから、体調不調で欠勤した。
入社1か月後、原告は執務中居眠りをしていたところ、部長から医師等の診断を指示され、診断書を提出すると、「うつ病みたいな辛気くさい奴はいらん。お前はクビだ」と30分にわたり罵倒され、原告はこれにショックを受けて自殺を図ったが、一命を取り留めた。一方、その日原告の母は、被告から求められるままに、原告の自殺未遂について被告に責任がない旨の書面を提出した。
その後、原告が解雇について説明を求めたところ、部長は取り合わず、母は社長から「息子の行動を止めさせろ。息子の人生をめちゃめちゃにしてやる」などと脅されたことから、原告はパワハラによってうつ病を再発させられ、これを理由に解雇されたとして、被告に対し慰謝料200万円を請求した。

【判決要旨】
部長の発言は、単なる業務指導の域を超えて、原告の人格を否定し、侮辱するまでに至っており、不法行為と評価せざるを得ない。「うつ病みたいな辛気くさいやつ」発言は自殺未遂の直接の原因となったものと認めることができる。
部長の「クビ」発言は、原告が後日身分関係を問い合わせていることからも、これを解雇通告と受け止めていなかったことが推認されるが、このような発言は、従業員を困惑させるものであり、パワハラとしてかなり悪質といわざるを得ない。特に原告のうつ病を知った後にも部長がこのような言動を続けたことは、うつ病になった場合に自殺願望が生じることは広く知られたことであることに照らすと、原告に対する配慮を著しく欠いたものと評価せざるを得ず、部長の一連の言動は不法行為を構成し、同行為は職務に関連して行われたものであるから、被告は使用者責任を免れない。
被告は原告の精神的苦痛を慰謝する責任があるが、原告が自殺を企てたのはうつ病による自殺願望による面がないとはいえず、部長は診断書を見るまで原告のうつ病を知らなかったから、このような事情を考慮し、慰謝料の額は80万円をもって相当と認める。

※引用文献「ここまでやったらパワハラです! 裁判例111選」 著 君嶋 護男

【解説】
部長のAに対する言動は、悪質なパワハラになります。Aは元々うつ病を患っていたいましたが、自殺未遂にいたるのは明らかに部長によるものです。またうつ病であると診断され、それを部長に見せたにもかかわらず罵倒を繰り返す言動は許されるものではありません。判決では、Aのうつ病を知った後でも、罵倒を繰り返すことが、大変悪質なものとして考慮されたと思われます。
近年では、昔と比べだいぶ「うつ病」に対しての理解が深まってきました。今ではこのように「うつ病」と診断された人に対して悪質な言動をとるものはそこまで多いものではない気がします。現在職場において気を付けなくてはならないことは、「うつ病」であると診断された従業員に対して会社側がどのような対応を取るべきかが重要であります。会社の人事担当者がメンタルヘルスの知識がなく、対応に困るというケースは意外にも多く、それにより問題に発展する可能性もあります。日ごろから従業員にメンタルヘルス不調が起こった際にどのように対応するかのガイドラインを決めておくことや、適切な知識をあらかじめ身につけておくことが必要となっています。

2020年6月1日からパワハラ防止法が施行されました。現在大企業はパワハラ対策が義務化、

2022年4月1日からは中小企業も完全義務化になります。 

ミーデンでは中小企業様も導入しやすい金額でパワハラ対策を行います。

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