パワハラ防止

2020.12.12

パワハラ事例③

 【過重なノルマ、厳しい叱責、長時間労働等によりうつ病発症】 


(自動車販売会社自殺未遂事件)

 自動車販売に勤務するAは、新任の部長から「中途半端な人間、凝り固まった化石」などと言われ、幾度となく厳しく叱責された。
Aは役職定年前に異例の外販担当に異動させられ、部長から他の従業員よりも高いノルマが設定され、一部ノルマを達成できなかったことから、Aはノルマ達成のために休日出勤や毎月80時間を超えるような時間外労働をしなくてはならなかった。


部長は、会議等の場で、「売上が上がらない役に立たない者は辞めていい」などと述べ、Aに対しては「あんた給料高いだろ、給料の5倍くらい働かなければ合わない」などと叱責した。また、Aのノルマ達成率が60%に達しなかったことから、Aは部長から他の従業員の前で無能呼ばわりされたりし、人格否定するような言葉を発した。


Aは、役職定年後販売店に異動し、これを左遷と捉えてショックを受け、異動直後自殺を図った。一命はとりとめたものの、その後うつ病の診断を受けて退職した。Aは部長から達成困難なノルマを課せられ厳しく叱責され長時間労働を強いられたこと、部長とAの関係はパワハラと評価できること等を主張し、Aのうつ病発症は業務に起因するとして、労基署長に対し休業補償給付を請求したが、不支給処分を受けたため、その取消しを求めた。

【判決要旨】


ノルマは前年度の177.2%と極めて高く設定されていること、Aはノルマ達成には至らなかったものの、前年実績との対比で見ると、外販担当5人中1位と認められるから、Aの仕事の能率が低下していたと認めることはできない。
部長の着任後、Aの外販担当への異動までの約8ヶ月間、Aは部長から長時間にわたる叱責を受けることがあり、人格否定するような発言が認められ、この間部長の説教や叱責がAの与えた判断指針における心理的負荷の強度は「Ⅲ」に修正されるべきである。


精神障害に寄与したであろう複数の出来事が重なって認められる場合のストレス強度は総合的に評価すべきであるところ、外販異動前の部長による指導の範囲を超えた厳しい叱責、外販異動後の厳しいノルマの設定及びそのノルマの不達成など、Aのうつ病発症時期前の出来事に限っても、判断指針によれば、その心理的負荷の強度の総合評価は「強」とされるべきであり、平均的な労働者に精神障害を発症させるおそれのある程度の強度の心理的負荷があったということができる。

他方、Aには、業務外の出来事による心理的負荷が窺われないこと、個体側の要因が認められないことからすると、業務とAのうつ病発症及び憎悪との間には相当因果関係が認められるから、本件各処分は違法である。

※引用文献「ここまでやったらパワハラです! 裁判例111選」 著 君嶋 護男

【解説】


今回のケースでは、あきらかなパワハラといえるような言動がそろっています。長時間労働の強制、ノルマをあえて高く設定する、外販担当への異動、人格否定をする言動など、全ての要因がAに対して心理的負荷をかけてしまい、結果、Aはうつ病発症や自殺未遂をしてしまったのです。ノルマの設定では、営業職では特に気をつけなくてはいけません。明らかに目標達成が不可能なノルマを設定することはパワハラとして認定されることになります。

また、それに対して人格否定することや他の従業員の前で厳しい叱責をすることはパワハラです。また、今回のケースでは長時間労働を強制されており、過労死する可能性も考えられました。部長の言動は悪質でありますが、職場の現状を把握できていない会社側にも問題のある事例です。

2020年6月1日からパワハラ防止法が施行されました。現在大企業はパワハラ対策が義務化、

2022年4月1日からは中小企業も完全義務化になります。 

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