うつ病の危険なタイミング

 うつ病の人は「治った」と思っても再発というリスクを抱えています。調子がよく、仕事も波に乗っていた矢先に具合が悪くなるということが起こるのです。これは、一度回復したとしても、後遺症として脳はダメージを受けていて、ストレスに敏感な状態がその後も続いているためです。後遺症が残っている数年の間に、過剰なストレスを受けたり、無理をしたりすると、再びうつ病の症状が現れます。
また、療養中に順調に回復している場合でも、過剰なストレスや無理がたたるとやはり症状は逆戻りしてしまうことがあるでしょう。これを症状の増悪(ぞうあく)と呼びます。
 それでは具体的にどのようなタイミングで再発・増悪をしやすいのでしょうか?今回はうつ病が再発・増悪しやすい危険なタイミングについて解説していきます。うつ病を患ったことがある人、現在も治療中の人はぜひ記憶にとどめておいて欲しい内容です。

 

 

【うつ病の危険な9つのタイミング】

 

1 抗うつ薬をやめて2~3カ月後


 抗うつ薬には再発の予防効果があります。服用している限りは再発から守られていると言っても良いでしょう。うつ病の症状が消えて通常の日常生活を送ることができても、脳は再発をしやすい敏感な状態が残っているため、その後も最低1年間は服薬を続ける必要があります。ただし、患っていた期間や重症度で予防期間は異なります。1年以上の長期の予防服薬が必要な人もいます。
 抗うつ薬を完全にやめても、2~3カ月は予防効果が残ってくれますが、それを過ぎる頃は完全に無防備の状態になってしまいます。ですから、薬をやめて2~3カ月くらいして症状が出てくるようならば、脳の敏感な状態が治っていなかったと考えるべきです。「せっかく薬をやめられたのに」と思わず、それ以上具合が悪くなる前に早めに薬を再開するのが良いでしょう。

 

2 体の病気を患ったタイミング


 うつ病が治っても、その後、甲状腺などの内分泌系の病気や、脳梗塞などの脳の病気を患った場合に再発することがあります。これらの病気は脳の働きを低下させるためです。
 また、癌などの慢性の病気になった場合も、将来の不安からうつ病が再発することがあります。

 

3 別の病気で薬を飲み始めた時


人によっては、うつ病を誘発してしまう薬があります。最近よく耳にするのは、糖尿病やダイエット目的で使われているGLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬です。リベルサス、セマグルチドといった名前で処方されています。
その他にも高血圧や高脂血症の薬、ピルと呼ばれる経口避妊薬、抗ウイルス薬、ステロイドなどもうつ病の症状が起こることがあります。何か新しい薬を飲むようになってからうつ病の症状が現れる場合は、処方してくれた主治医や薬剤師によく聞いてみましょう。
 また、薬ではありませんが、アルコールの取りすぎも再発・増悪のリスクを高めます。特に毎日飲酒する習慣のある人は要注意です。

 

4 生活が変化したタイミング・無理をした後


転職、仕事内容の変化、引っ越しといった環境の変化は、再発・増悪の大きなリスクです。人は変化に適応するためにエネルギーを使うので、環境が変わった直後に一時的に力が出てくることがありますが、その後に「反動の疲れ」が押し寄せます。このためにうつ症状が出やすくなります。自分では気付かないうちに無理をしていて、再発・増悪してしまうのです。


 

5 心配事が解決しない


 心配事を長く抱えたことからも再発・増悪することがあります。仕事の心配、お金の心配、家族の心配、体の病気の心配など、想定外のことがリスクになるのです。
 人生何が起こるか分かりません。心配事は自分で招いているわけではないので、うつ病の再発・増悪は自分の力で完全に避けられることではないのです。

 

6 挫折・別れ・孤独


失敗、挫折、別れ、孤独などの不安定な精神状態は、再発・増悪の大きなリスクです。特に希望が見えなくなった瞬間、心は一気に危険な状態に傾きます。「信じていた人に裏切られた」、「将来の見通しが立たない…」、こうした出来事は、心に「もう頑張っても意味がない」という感覚を植え付けてしまいます。自分の存在価値まで疑ってしまうことがあるでしょう。

 

7 過去のトラウマが刺激された時


発病が何らかのトラウマと関係していた場合、それと似た状況が引き金となり、再発・増悪に至ることがあります。例えば、ハラスメントから発病した人が、復職してからも別の人から似たような待遇を受けた場合、それが引き金になって再発することがあります。

 

8 妊娠や出産


若い頃にうつ病を経験したことがある女性の場合、妊娠や出産をきっかけに再発することがあります。妊娠・出産によってホルモンバランスが変わるのが理由です。
女性だけでなく、男性も子供を育てることが不安になり、再発をするケースがあります。家族が増えることはおめでたいことのようですが、うつ病が再発する大きなリスクも隠れているのです。

 

9 季節の変わり目


季節の変わり目も、再発・増悪するタイミングとして知られています。特に冬から春、夏から秋にかけては要注意です。これは、気温や日照時間の変化が体内時計やホルモンの分泌に影響するからです。再発予防のためには、苦手な季節に無理をしないことが大切です。

 

以上、うつ病が再発・増悪しやすい危険なタイミングについて解説しました。

 

最後に

 

 再発・増悪は忘れた頃にやってきます。危険なタイミングは、意外と日常の中に潜んでいます。そして、再発・増悪のサインは、眠りが浅くなること、食欲がなくなること、疲労感などの体調の変化から気づかれることが多いでしょう。「自分は大丈夫」と思い込まず、変化のある時期には立ち止まって、自分の心と体の声に耳を傾けることです。
しかしながら、人生何が起こるか分かりません。予期せぬ出来事から再発・増悪につながることが多いのです。ですから、一度うつ病を経験した人は、予防のために長く薬を飲み続けるということは大切なことです。「薬を早くやめたい」と考える人が多いのですが、そうではなく薬をお守り代わりに考えるのが良いでしょう。