目次
働くことで心を壊す人が増えている現実
近年、「労働災害(労災)」という言葉は、単なる“事故”や“けが”だけでなく、「精神的な健康問題」も含むようになっています。厚生労働省の最新報告によると、仕事が原因で発症した精神障害による労災の申請・認定件数が過去最多となりました。
※TBSニュースより
これは、私たちの働き方や職場の構造そのものが大きく変化していることを示しています。
本記事では、なぜ精神障害による労災が増えているのか。どのような職場・年齢層に影響が出ているのか。私たちは何を考え、どう行動すべきかを整理して解説します。
1|最新の労災データまとめ
-
2024年度の精神障害による労災請求件数:3,780件(過去最多)
-
支給決定件数(認定件数):1,055件
-
いずれも2010年度と比べて約3倍以上に増加「脳・心臓疾患+精神障害」を含む業務災害全体では、請求4,810件・支給決定1,304件つまり、「働くことで心身に深刻なダメージを受ける人」が増えているということです。「働く=安全・安心」という前提が、今まさに揺らいでいるのです。
2|労災件数が増えている3つの背景
(1)対人関係・ハラスメントの増加
精神障害の認定事案では、
-
・上司とのトラブル
-
・パワーハラスメント(パワハラ)
-
・顧客や取引先からの迷惑行為(カスタマーハラスメント)
が目立ちます。
2024年度には、「上司等からの精神的攻撃を受けた」事例が224件報告されています。
かつては長時間労働や過重業務が中心でしたが、今は人間関係による心理的負荷が中心テーマになりつつあります。
(2)働き方・職場構造の変化
リモートワーク、副業、短時間勤務の組み合わせ、人手不足などにより、役割や責任の境界が曖昧化しています。
こうした「構造の揺らぎ」が新たなストレス要因となり、労災増加につながっています。
リクルートワークス研究所によると、20年前に比べて精神障害による労災は約8倍に増加しています。
(3)制度と社会の認知変化
「精神障害=労災」として認められやすくなったこと、また「ハラスメント」や「カスハラ」の評価が明確化されたことも要因です。
つまり、“隠れ労災”が見えるようになったということです。
3|どの業種・世代に影響が出ているのか
業種別では「医療・福祉」が突出
-
請求件数:医療・福祉983件、製造業583件、小売業545件
-
支給決定件数:医療・福祉270件、製造業161件、小売業120件
夜勤・感情労働・人手不足といった三重苦により、医療・福祉分野はリスクが非常に高いといえます。
年齢別では「働き盛りの40代」が最多
-
請求件数・支給決定件数ともに40~49歳が最多。責任が重く、役職や部下との関係にストレスを抱えやすい年代層が中心です。
4|「過去最多」という数字の本当の意味
「過去最多=悪化」と単純に捉えるのではなく、“見えるようになった”ことの意味を考えるべきです。
これまで表に出なかった負荷が、ようやく可視化され始めたとも言えます。
また、働き方改革やコロナ禍による職場変化で、
-
孤立感の増加
-
コミュニケーションの希薄化
-
責任範囲の拡大
といった**“新しいストレス構造”**が生まれています。
時間外労働だけでは測れない「質的な負荷」への対応が、今後の焦点になります。
5|個人と職場が取るべき行動
● 働く個人として
-
心のサインに気づく(眠れない・笑えない・責任感が過剰になる など)
-
「誰と・どんな関係で働いているか」を振り返る
-
労災申請は恥ずかしいことではない——権利として相談することをためらわない
● 職場・組織として
-
メンタルヘルス対策を構造改革として捉える(業務設計・コミュニケーション設計の見直し)
-
“時間管理”だけでなく“関係性の質”を評価軸に
-
メンタルヘルス支援を「個人任せ」ではなく「組織として守る仕組み」に
(例:ストレスチェック、相談窓口、メンタルヘルス研修など)
6|まとめ:見えるようになったことは、希望でもある
「労災件数が過去最多」という事実は、社会の危機であると同時に、ようやく“見えるようになった”という希望でもあります。
制度が整い、救済されるケースが増えていることは、働く人が声を上げやすくなった証でもあります。
無理をしすぎていませんか?
「大丈夫かな」と感じたら、早めに相談してください。
メンタルヘルス対策は“自己管理”ではなく、“社会の仕組み”です。
安心して働ける職場をつくるために、今こそ職場全体で向き合うことが求められています。
