統合失調症はいつ治るの?
更新日:2022年3月4日
統合失調症は、心の中に自分のものでない考えや感情が出入りして、それに振り回されてしまう病気です。まるで心を包んでいる壁がなくなったかのように、他人の思いが飛び込んできたり、自分の思いが他人に伝わってしまいます。
⇒「統合失調症はどんな病気?」
当事者としては、自分の心の壁が壊れているとは気づかず、周囲の何かが勝手に自分の中に侵入してくるのだと感じてしまいます。ですから、自分が病気になったとはなかなか気づけません。
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統合失調症になる原因
症状は心に起きていますが、統合失調症は脳の働きの病気です。神経伝達物質の分泌の異常が起きて、脳全体が尋常でない覚醒状態になったと考えられています。
生まれつきの遺伝的な要素がベースにあり、そこに心配事、孤独、虐待やいじめ、過労などのストレスが引き金となって発症します。脳の働きの問題ですから、カウンセリングなどの心理療法は効きにくく、抗精神病薬で脳の異常な覚醒状態を抑えることが治療になります。
統合失調症の治療方法
抗精神病薬は、神経伝達物質に働きかけて、脳の覚醒状態を改善させます。代表的な物にリスパダール、セロクエル、エビリファイ、ジプレキサなどがあります。発病してすぐに服用すれば、1カ月くらいで脳の活動は正常に戻ります。
しかし、自分で病気に気付くことができないために、治療を受けるまでに何年と時間が経っていることの方が多いようです。発病から受診までの期間が長いほど、長い期間服用しないと良くなりません。
一度良くなって、薬の治療をやめられても、脳の過敏な状態はその後もかなり長期に続きます。過敏なために再び何かのストレスが引き金になって再発してしまいます。
例えば、花粉症などのアレルギー反応は、体が記憶してしまうものなので、その後もアレルギーの原因物質に触れるたびに反応が出てしまいます。統合失調症もこれに似ているのです。
再発を予防するためには、症状が良くなっても薬を飲み続けることが大切です。ストレスで再び覚醒のスイッチが入らないように薬で脳の過敏さを抑えるのです。最低で2年間、1度再発している場合は5年以上服用を続けます。ただし、これは目安であって、発症から受診するまでの期間が長かった場合は、服薬期間はさらに長くなります。
統合失調症は再発が多い
統計によると、最初の2年間の服薬で良くなって、その後は治療しないで済む人は全体の20%にすぎません。残りの80%の人は再発してしまい、10年、20年、30年と長く薬を飲み続ける人がたくさんいます。脳の過剰な状態は、一度記憶されてしまうと、ほぼ生涯にわたって続いてしまう可能性もあるのです。
抗精神病薬の長期服用について
抗精神病薬は、長期に服用しても健康を害するものではありません。ただし、体重が増えることがあるので、それによる糖尿病や高脂血症には注意が必要です。食事と運動を意識して生活しましょう。
また、薬がホルモンに働きかけることもあり、女性は生理不順になる場合もあります。薬による不都合にはすべて対処方法があるので、主治医とよく相談しましょう。
再発の原因
再発で一番多いのは、薬を飲むのを自分の判断でやめてしまうことです。これを自己断薬と呼んでいます。理由は様々で、毎月の通院がめんどうになる人もいれば、体重が増えるのが嫌でやめてしまう人もいます。中には、「いつまでも薬に頼ってないで働きなさい」という家族や友人の言葉でやめてしまう人もいます。
色々な理由はありますが、背景に共通してあるのが病気であることへの劣等感です。精神科に通院して薬を飲むことを「人生の負け組」と思ってしまうのです。
最後に
統合失調症は「怠け病」ではありません。努力が足りないなどの気持ちの問題ではなく、脳の働きの問題なのです。運悪くこのような病気になってしまいましたが、薬を飲んで症状を抑えて生活することができるならば、それで治ったと考えても良いのではないでしょうか。
薬を飲まない頃の昔の自分に戻る必要はありません。薬を飲みながら、新しい価値観を持ち生きていきましょう。病気のハンディを背負いながらも生きていくことはとても立派なことです。健康で何をやってもうまくいく人よりも、人生を何倍も頑張って生きています。