メンタルヘルス

2020.12.05

虐待と自殺|メンタルヘルス

新型コロナウイルスの影響で、生活様式が大幅に変化しました。それに伴い、メンタルヘルス不調による問題が様々なところで取り上げられております。例年減少傾向であった自殺者数も、コロナの影響で増加してしまい、大変悲しい現状です。

今回は「虐待と自殺」というタイトルでご紹介したい文章がありますので、【待合室に置く「診療研究」現代医療のキーワード2020~2021 「診療研究」563号 「虐待や自殺のない社会へ 相談、通報をためらわないで」 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 精神科医 竹内 真弓】から引用させていただきます。

 新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出され、外出自粛、イベントの中止、在宅勤務が増え、普段の生活リズムが崩れている方も多いかと思います。その中で虐待の通報件数が増えていること、通報を考えなくてはならない状況も増えているという報告が相次いでいます。
7月から若い女性の自殺も増えているという情報があります。原因や対策は今後の分析を待たねばなりませんが、コロナによって、私たちの心のありようが問われていることは間違いありません。統計がとられている当初から、どの年代をみても男性の自殺率が女性よりも多いことが知られています。このことについては、様々な分析が試みられていますが、女性の方が言葉にして相談する機会が多く、ある意味社交的で人に対して開かれているためと考えられます。 
しかし、女性の自殺率がコロナ禍のあとに大きく増加しています。何が起こっているのでしょうか。虐待や暴力、自殺の問題はどこかでつながっています。今回は虐待について取り上げていきたいと思います。
「虐待」という言葉はまがまがしく、恐ろしいものと、とらえてしまうかもしれませんが、この言葉は法律用語として使われています。対象の人の人権が損なわれていることを指しています。2000年から4つの虐待、暴力法が次々とできました。児童虐待防止法(2000年)、DV防止法(2001年)、高齢者虐待防止法(2006年)、障害者虐待防止法(2012年)です。これらの法律では、「国民は通報や虐待防止の努力をおこなう」ことが謳われています。以下虐待を理解するポイントについてまとめます。

【虐待の種類】
虐待には、身体的虐待、心理的虐待、経済的虐待、性的虐待、介護放棄(育児放棄)があります。悪意の有無は関係ありません。「しつけ」「介護熱心のあまり」「世話する人が大変だから」ということで通報や介入を蹂躙してはいけません。それぞれの虐待防止法は差がありますが、虐待をしてしまう人の救済や指導や支援も謳っています。多くの場合、虐待はやりたくてしていることではなく、擁護者、介護者自身が追い詰められた末のSOSなのです。「これは虐待とは言えないのではないか」と自分で判断するのではなく、疑いの時点で通報してください。あなたの秘密は守られます。それが虐待している人にも、されている人にも救いになることがあります。また実際に虐待であるかどうかを判断するのは、都道府県や市区町村などの対応責務のある行政です。

【虐待への介入】
それ以上、虐待が進まないように支援します。決して刑罰を受けるためのものではありません。虐待を受けた方の意向も最大限反映できるように配慮されます。

身体的虐待】
暴力はもちろんのこと、身体的虐待は体への虐待です。状態に合わない無理なリハビリや、適切でない介護、徘徊予防として本人に開けられない鍵をつけること、物を投げつけるなども含まれます。

【心理的虐待】
心理的虐待とは暴言、また本人の症状を罵ったり、笑ったりすることも含まれます。高齢者を子どものように扱ったり、トイレに行けるのにおむつを付けることなども含まれます。

【経済的虐待】
経済的虐待は、本人の同意なしに勝手に財産を使うこと、理由なく本人の金銭を渡さないことを言います。日本は親子間で生活費の境界が薄く、必要に迫られて、このような虐待が起きがちです。

【性的虐待】
性的虐待は性行為の強要だけでなく、ポルノを見せる行為なども含まれ、通報が最も少ない虐待です。おかしいと思ったら女性センターに相談するなど、ためらわずに通報しましょう。

【介護放棄(育児放棄)】
介護(養護)放棄は必要な介護・養護を行わないことです。虐待というと暴力を思いがちですが、そうではない虐待もあります。

【虐待のリスク】
虐待へのリスクは「世話される人の症状が重い」「世話する人が身体、精神の症状が重い」「経済的困窮」「社会的に孤立していてSOSが出せない」「過去に家庭内で暴力があった」などがあります。
虐待や暴力がある場合、家族の歴史の中のでいろんな方向性の虐待が起きていることがあります。権利の方向性が拮抗していたり、1つではなく複数の虐待がおきていることもあります。
公務員、医療関係者、教師、弁護士などの社会的責務のある職業の人には、虐待の通報に関して一般の方より重い責任があります。新型コロナの生活様式は閉塞感、不自由さのため、家族親族の中でストレスがたまった結果のイライラが虐待になっていくことも起きています。

【つらいときには相談することやSOSを出すことが大事】
つらい状況が積み重なり、先が見えない気持ちになると、誰でもうつ状態になり「楽になりたい」「死んだら楽になるかもしれない」と思うことがあります。つらい状況に慣れてしまって、この状況がよくなると思えないあきらめの境地になることがあります。これが積み重なると「死んでしまう以外にほかのやり方はない」と思うようになります。コロナのなか社会の先が見えない状況(生活の変化、経済状態、病気の悪化など)になり、つらい気持ちになっている方も多いと思います。また、外出や集まりが制限され、会食や談話の機会がなくなり、孤独感を持っている方も多いのではないでしょうか。
孤独な時間が続くなかで、「自分はみんなに迷惑をかけている」「自分には価値がない」と思い込んでしまう人もいます。死にたくなるくらいつらい思いがあれば、ぜひ誰かに相談してください。「死にたい」と思っている人でも必ずどこかに「でも生きたい」と思っていることが調査で解っています。「死にたいくらいつらいが、このつらさが和らぐのであれば、本当は生きたい」と思っているのです。

※引用文献【待合室に置く「診療研究」現代医療のキーワード2020~2021 「診療研究」563号 「虐待や自殺のない社会へ 相談、通報をためらわないで」 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 精神科医 竹内 真弓】

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