メンタルヘルス

2020.12.18

メンタル不調社員の職場復帰までの5ステップ|メンタルヘルス

メンタルヘルスとは心の健康のことです。これまでは気持ちの不安や無力感を抱いても、「心が弱いからだ」「気合が足りない」と言われ、むしろ克服させるために無理を強いてくることもありましたが、近年では精神疾患という概念から“心の病”も体と同じように治療が必要だという考え方が広がりました。心の病は様々なストレスをきっかけとして発病することがあるので、ストレス要因の一つと考えられる職場においてもメンタルヘルス対策が推奨されています。メンタルヘルス不調は厚生労働省では次のように定義されています。

厚生労働省(2020)によると、職場において強い不安、ストレス等を感じている労働者は約6割に上っており、メンタルヘルス上の理由により連続1ケ月以上休業または退職した労働者は約0.4%と言われています。メンタルヘルス不調は誰にでも起こり得るものです。目に見えないからこそ休んだり、弱音を吐いたりしたときに、周囲からどんな風に思われるか、仕事で迷惑をかけないかと自分のことは二の次に考え、無理をしやすくなります。会社は、メンタルヘルスを守る予防的な取り組み(一次予防)、メンタルヘルス不調が発覚した際にそれを悪化させない早期発見のための取り組み(二次予防)、メンタルヘルス不調によりやむを得ず休職する人が復帰できるように支援する取り組み(三次予防)を定めて、適切に行うことが求められます。

事務所の規模が大きい(従業員が多い)ほど、メンタル不調になる人のその割合は大きいことが分かっています。メンタルヘルス不調の中で最も多い精神疾患が「気分障害(うつ病)」です。夢や目標があり努力してきた人や生活を養うために働いてきた人にとって、精神障害により休職を余儀なくされることは、非常にショックな出来事であり、不安が付きまといます。

厚生労働省の推奨により、メンタルヘルス対策として職場復帰支援のための5ステップが各会社で定められていますので、ご紹介します。

労働者から管理監督者に主治医による診断書(病気休業診断書)が提出されると休業が開始します。この時、労働者の一番の心配事は「仕事」です。「元の職場に復帰できるか」「復帰できなければリストラに合うかもしれない」「復帰できたとしても同じ仕事では再発するかもしれない」と、収入源と社会的立場を失うかもしれないと不安でいっぱいになります。このような不安を抱えていると、一日でも早く戻りたいと思い、考え込んだり、無理をしようとしたり、せっかくの休養が意味をなさなくなってしまいます。そのため、労働者が病気休業期間中に安心して療養に専念できるように、会社側から情報を提供してもらうことが大切です。

◎情報提供しておいてもらうとよい項目
・傷病手当金などの経済的な保障
・不安、悩みの相談先の紹介
・公的または民間の職場復帰支援サービス
・休業の最長(保障)期間等

休業中の労働者は事業者に対して職場復帰の意思を伝えると、事業者は労働者に対して主治医による職場復帰が可能という判断が記された診断書の提出を求めます。この時、診断書には就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を記入してもらうようにします。なぜなら、主治医による診断は日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められている業務遂行能力まで回復しているとは限らないからです。職場で求められている業務遂行能力に関する情報を事業者または労働者から正しく伝え、医師の視点から労働者の状態が回復しているか意見をもらうようにします。場合によっては、もう少し様子を見る必要があると判断されるかもしれませんし、初めから元の業務に戻るのではなく、初めは労働時間を短くしたり、軽い業務をしたりする中で経過を見ることもあるかもしれません。この時、労働者自身がどのようにしたいか意見を伝えておくといいでしょう。

復職するか最終的な決定の前段階として、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰が出来るかを適切に判断し、職場復帰を支援するための具体的なプランを企業側は作成します。具体的なプランの作成に当たっては、事業場内産業保健スタッフを中心に管理監督者、休業中の労働者が連携して進めます。

◎情報の収集と評価
職場復帰の可否については、必要な情報を収集し様々な視点から評価を行い総合的に判断することが大切です。情報の収集と評価内容は次の通りです。
(ア)労働者の職場復帰に対する意思の確認
(イ)産業医等による主治医からの意見収集
診断書の内容だけでは不十分な場合、産業医は労働者の同意を得た上で、必要な内容について主治医からの情報や意見を収集します。
(ウ)労働者の状態等の評価
治療状況及び病状の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する労働者の考え、家族からの情報を収集し、評価します。
(エ)職場環境等の評価
業務及び職場との適合性、作業管理や作業環境管理に関する評価、職場側による支援準備状況の評価をします。
(オ)その他
治療に関する問題点、本人の行動特性、家族の支援状況や職場復帰の阻害要因に関する情報を収集し、評価をします。

◎職場復帰支援プランの作成
(ア)職場復帰日
(イ)管理監督者による就業上の配慮
業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮を記載します。
(ウ)人事労務管理上の対応等
配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性を記載します。
(エ)産業医等による医学的知見からみた意見
安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見を記載します。
(オ)フォローアップ
就業制限等の見直しを行うタイミング、就業上の配慮や医学的観察が不要になる時期を記載します。
(カ)その他
労働者自身が責任を持つ事項、試し出勤制度の利用、事業場外資源の利用について記載します。

〈第3ステップ〉を踏まえて、事業者による最終的な職場復帰の決定を行います。

(ア)労働者の状態の最終確認
(イ)就業上の配慮等に関する意見書の作成
(ウ)事業者による最終的な職場復帰の決定
(エ)その他

企業側は産業医の意見書等に基づき、関係者間で内容を確認しつつ職場復帰を決定します。また、主治医へ就業上の配慮の内容について情報提供し、連携を図ることは、労働者自身だけでなく共に働く従業員が安心して、安全に働くために重要です。処遇の変更が行われる場合は、あらかじめ就業規則に定め、ルール化しておくと見落としが減ります。

復帰後も継続した関係者、主治医からのサポートを受け再発を予防する必要があります。

(ア)疾患の再発、新しい問題の発生等の有無の確認
(イ)勤務状況及び業務遂行能力の評価
(ウ)職場復帰支援プランの実施状況の確認
(エ)治療状況の確認
(オ)職場復帰支援プランの評価と見直し
(カ)職場環境等の改善
(キ)職場管理監督者、同僚等への配慮

職場復帰支援プランの進行状況については、企業側との面談の中で率直に伝えることが大切です。これをもとに、適切に進行されているかを判断します。労働者自身だけでなく、管理監督者とも企業側は意見を交換し、客観的に評価をしていきます。あくまで、職場復帰支援プランが適切であるかを判断するものです。労働者の評価ではないので、緊張せずに素直に伝えることが、無理なく働き続ける助けになります。必要があれば、管理監督者、産業保健スタッフ等が情報を交換し、家族とも連携を図ることがあります。職場復帰支援には周囲が連携し、支えることが重要です。

以上が職場復帰支援の大きな流れです。
休業中には、主治医と家族の支えの中で、本人も懸命に病気と闘いながら治療をしていきます。職場復帰では、主治医と家族だけでなく企業にいる産業保健スタッフや管理監督者、同僚の支えの中で、本人が少しずつ仕事に戻れるようにしていきます。これだけ多くの人が連携をしていきますので、信頼関係が非常に重要です。職場復帰支援のためだけでなく、このような会社の雰囲気作りが元々重要であるのかもしれません。

職場復帰支援に携わる管理監督者と産業保健スタッフについて説明します。

◎管理監督者
産業保健スタッフと協力しながら職場環境等の問題点を把握し、それらの改善を図ることで職場復帰支援における就業上の配慮を履行します。復帰後も連携を新柄、注意深く観察を行い、再発予防に努めます。

◎産業保健スタッフ
産業医、衛生管理者等を含めた、産業保健に係わるスタッフ全員の総称です。

産業医:事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言います。労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられています。

衛生管理者:①労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること ②労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること ③健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること ④労働災害防止の原因の調査および再発防止対策に関すること のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。

参考文献)厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構(2019)「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援プログラム」

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