メンタルヘルス

2021.03.31

「全集中の呼吸」で不安をコントロール|メンタルヘルス

  1970年代、ベトナム戦争から帰還したアメリカ兵士たちの多くが精神疾患を患いました。寝ている時も食べている時も、24時間いつ攻撃されるかわからない、このような生死に関わるような過度の緊張状態の連続が兵士の体を蝕んだのです。

 戦場とまでは言えなくても、仕事や心配事が多くて、朝から晩まで気を張っている私たちの状況も似ています。休日に自宅で予定を入れずにゆっくり過ごしているようでも、頭の隅には仕事のやり残しなどの心配事が残っており、体の緊張が抜けないことはありませんか。これは心身に悪い影響を与えます。

                                                   

                                                                                               

心身の状態には、緊張状態と緊張が緩和されたリラックス状態の2つのモードがあります。そしてこの緊張と緩和のバランスがとれた生活が大切なのです。

朝から夕方までは仕事で緊張状態(昼食や休憩を入れて、たまにリラックス)、仕事を終えてから夕食や入浴でリラックス、そして床につく、こうした緊張と緩和の一日のバランスとリズムが、心身を整え、精神の安定をつくります。

         

気を張る時間が長い私たちの生活では、力を抜く時間をできるだけ多く手に入れることが必要です。ところが、自分で「緊張するな」「リラックスしろ」と意識しても、心と体もそううまく言うことを聞いてくれません。

精神交互作用といって、ある考えから意識をそらそうとすればするほど、逆にそこに意識が集中してしまいます。緊張をほぐそうとして、よけい体に力が入ってしまう結果になるのです。

子供のころ、試験や試合の前に緊張がとれない時に、「深呼吸して落ち着いて」と言われた経験はありませんか?気になることが頭から離れない時、呼吸に集中すれば、意識が心配事から離れてくれるのです。

         

さらに、腹式呼吸という呼吸法には、自律神経に作用して、身体をリラックス状態にしてくれる効果があります。リラックスした身体の状態は脳にフィードバックされ、気持ちも穏やかになります。
このように、日常の緊張を緩和するために複式呼吸がとても有効なのです。

肺は膜に包まれ、さらに助骨、背骨、横隔膜でつくられた胸郭と呼ばれる空洞に入っています。

呼吸とは、自律神経の命令により胸郭のサイズが大きくなったり、小さくなったりすることにより、それに合わせて中の肺が拡張と収縮を繰り返して空気を出し入れすることです。これが、私たちが無意識でしている胸式呼吸です。

呼吸にはもう一つのやり方があります。胸郭の下は横隔膜という筋肉でできており、その下は内臓がつまっている腹です。腹筋をつかってこの腹に力を入れたり、抜いたりすることにより、横隔膜を上下させ、自分の意志で呼吸をすることができます。これが複式呼吸です。

【それでは、腹式呼吸を実践してみましょう。】

1.仰向けに横になり大の字になります。楽な姿勢で椅子に座るのでも大丈夫です。


2.
肩の力を抜きます。普段から肩に力が入る癖のある人は、意識して方の力を抜くと、肩がカクンと下がる感じがするはずです。


3.
口を閉じて、鼻で呼吸します。


4.
腹筋を使って腹を膨らませます。カエルが腹を膨らますイメージです。腹を膨らませながら、「1,2,3」とゆっくり数を数え、鼻からゆっくり空気を吸い込みます。この時、腹筋の力で鼻から空気が入ってくる感覚をつかんでください。


5.
肺がいっぱいになったら、一瞬息を止めます。                   


6.今度は腹筋の力を抜き、「1,2,3,4,5」とゆっくり数を数え、鼻から空気を出します。腹筋の力を抜くことで鼻から空気を出す感覚をつかんでください。

以上を5分間繰り返しましょう。これを1セットとします。
大切なポイントは、肩の力を抜いて鼻で呼吸をすること、腹筋をつかって肺から空気を出し入れする感覚です。

     

時間をみつけて1セットずつ、1日何セットも練習してみましょう。やり過ぎておかしくなることはありません。家でテレビを見ている時、風呂に入っている時、さらには、乗り物に乗っている時、レストランの待ち時間、などいつもならスマホをいじるような時間などに腹式呼吸を練習してみましょう。徐々にうまくできるようになります。

そして、意識しなくても自然にできるようになったら身に付いたことになります。

腹式呼吸は、雑念があって集中できない時、不安や焦りがつよい時、過呼吸になりそうな時、頭の中で考えがグルグル回って眠れない、といった時に大変役立ちます。

「何とかなる」「心配ない」「神様がついている」など、安心できる言葉を念じながら腹式呼吸をやってみましょう。いつのまにか雑念が消え、不安が解消され、眠りについていることを経験できるでしょう。

まとめ

「鬼滅の刃」でも「全集中の呼吸」と言って、呼吸法がとても大切な役割を果たしていましたね。主人公たちは、全集中の呼吸法を日常的につかえるように鍛錬しました。それにより超人的な能力を発揮して鬼と戦います。


残念ながら、腹式呼吸で超人的になることはできませんが、腹式呼吸という技を身につければ、心配事や不安をコントロールすることができます。そして、ストレス社会との闘いに負けないようにしましょう。

「著 精神科医 高橋 倫宗」

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