メンタルヘルス

2021.04.27

大人の発達障害:基本的な考え方

  子供の言葉や心理の発達は、1歳半くらいから言葉を使えるようになり、4才では相手の気持ちを理解し簡単な集団的行動ができるようになります。ところが、3才になっても言葉が出ない、小学生になっても集団行動をとれないといった発達の遅れがある子供がいます。概ね小学校高学年くらいで平均的な発達に追いつくことが多いのですが、遅れたまま発達が止まってしまうケースがあり、これを発達障害といいます。

脳のどこの機能に発達の障害が出るかでいくつかタイプがあり、大きくなっても言葉を十分に話せない、集団行動がとれない、興味を持つものに偏りがある、などの場合を自閉症、軽症の場合をアスペルガー障害と呼びます。感情が抑えられない、落ち着いていられず勉強に集中できない場合は注意欠如・多動性障害(ADHD)と呼びます。

      

これらの発達障害は育て方が原因ではありません。生まれつきの遺伝子のレベルで決まっているもので、遺伝的な要素や高齢出産などの影響を受けると考えられています。

注意力を上げるなどの一部の症状を緩和させるような薬の治療がありますが、残念ながら完全に治すような治療方法はありません。

通常は学校生活での集団行動や勉強に支障が出るため、特別学級、医療機関、施設と関わりながら何らかの援助を受けることになります。学校を卒業後も、福祉の援助を受けながら障害者雇用や就労支援施設などで働くことができます。

しかし、小中学校でのひきこもりや非行によってきちんと発達障害を診断される機会がなかった子供もいます。

また、子供時代には発達障害とまでは診断されなくても、「変わった子」「天然」「マイペース」などと呼ばれ、大きな援助もなく普通高校まで卒業できる人たちもいます。中には大変優秀な成績で大学を卒業する人や、特殊な才能で早くから芸術、芸能、スポーツなどで活躍する人もいます。これらは正常と発達障害のグレーゾーンと呼ぶことができるでしょう。

こうした人たちが社会に出ると、場の空気を読めず、職場の組織に溶け込めません。結婚しても夫婦間でコミュニケーションをうまくとれなかったり、泣いている子供の気持ちが理解できずに子育てができなかったり、と改めて持っている障害が「生きづらさ」として表面に出てきます。すなわち社会と歯車が合わずに不適応してしまうのです。

大人の発達障害のあるある場面

20年くらい前から、こうした人たちの言動を理解し社会活動を援助するために「大人の発達障害」という考え方がうまれ、それを研究する専門家も誕生しました。しかし、発達障害を扱ってきたのは小児科領域、大人の精神疾患を扱っているのは精神科領域ですから、2つの領域に精通した専門家も少なく、現在でも検査や診断の基準はまだ明確ではありません。

ハリウッドセレブたちが自分の発達障害をカミングアウトしたことがありましたが、その影響が大きく、生きづらさを感じる人たちが「自分も発達障害ではないか?」と訴えて精神科を訪れることが急激に増えてきました。大学病院の大人の発達障害専門外来は受診まで半年待ちという状況です。

                 

それでは大人の発達障害の外来でやることはどのようなことでしょうか?

まずは診断ですが、診断を確定できる検査はなく、様々な検査がありますがどれも補助的なものです。WAIS(ウェイス)という知能検査が広く行わており、言語理解力、推理力、作業処理能力など、どのような能力に欠点があるのかを知ることができます。

医師が成育歴や学校や職場での様子を聞き取ることから最終的に診断されます。ただし、明確な診断基準がないために医師によって診断内容が違うことがあります。

発達障害の人は二次的に躁うつ病、うつ病、アルコール依存などを発症しやすいと言われています。診察の場で精神疾患が診断された場合はその治療が優先されます。

                   

大人の発達障害と診断された場合、積極的な治療はありません。不安や怒りを抑えるための対症療法として薬の治療もありますが、いま生きづらさを感じている状況を考察し、その対処法を指導することが中心となります。

例えば、対人関係に問題があるのに、営業や接客の仕事をしているとか、多くは本人の能力と環境の歯車が合っていないことに起因します。そこで本人を変えるのではなく、本人に合った職場などの環境を選ぶこと指導します。

普通の職場ではどこでも問題が起きてしまう場合は、障害に理解がある職場に就職する障害者雇用を考えます。最近は多くの企業が障害者雇用の枠を設けています。その前のステップとして就労支援施設を紹介してもらうことも可能です。

結婚して初めて、配偶者から障害を指摘される人もいます。夫婦で障害を理解して、障害のためにコミュニケーションがうまくいかないことを納得するだけでも関係が好転するきっかけになります。DVやアルコール依存の問題がある場合も多く、こうした場合は専門家に仲介に入ってもらいましょう。

発達障害の人は、念願の子供を授かったけれでも育て方が分からない、子供が怖い、ということがあります。障害のために子供の気持ちが理解できなかったり、子育てに束縛されることが大きな苦痛になるためです。

      

そのために、子供を虐待してしまう、子供を置いて遊びに行ってしまう、などのことが起こる危険性もあります。このような場合は、家族の理解や援助を促したり、福祉による子育て支援を受けることが必要になります。

以上、大人の発達障害について大まかに説明しました。大人の発達障害の人の生きづらさは、本人の自覚や周囲の援助などにより改善させていくことが可能です。

DV、虐待などの問題がある場合は早めに専門機関に相談してはどうでしょうか?

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