メンタルヘルス

2021年08月

2021.08.28

EAP(従業員支援プログラム)とは

 

 EAP(従業員支援プログラム)とはどのようなものでしょうか?日本でも注目されているEAPというメンタルヘルス対策は、どういった特徴があるのでしょうか?

EAPには内部EAPと外部EAPがありますが、その違いやメリット、デメリットについても解説していきます。

【EAP(従業員支援プログラム)とは】

 EAPは厚生労働省が推進するメンタルヘルス対策の「4つのケア」の1つである、「事業場外資源によるケア」に当てはまるものです。EAPは専門資格や知識を持った専門家を擁する専門機関が、従業員の悩みを相談する窓口となって企業のメンタルヘルスに対応するプログラムです。

EAPを導入する目的はメンタルヘルス対策が一次的ですが、最終的にメンタル不調の予防や従業員のモチベーション低下を防ぎ、企業の生産性を向上することにあります。専門機関のスタッフは主に有資格の専門家で、産業医や精神科医、臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、社会保険労務士、キャリアコンサルタントなど多職種で連携してメンタルヘルス対策にあたっています。

⇒「産業医とは? 普通のお医者さんとの違い

⇒「産業医と精神科

【EAPの歴史】

1950年代のアメリカでは、第二次世界大戦やベトナム戦争などで心的外傷を負った帰還兵士たちのサポート、経済不況、リストラなど社会混乱が起きていました。それに伴い、薬物依存、アルコール依存、うつ病などに陥る人々が増加しました。また、企業内でも精神疾患を発病する者が増え、社会全体の生産力も低下し、ますます経済力が落ちる一方だったのです。

このような状況の中、メンタルヘルス対策「従業員支援プログラム」がアメリカで広まることとなりました。

1980年代では、レーガン大統領によって、各企業が労働者のメンタルヘルスケアに積極的に取り組むべきとされ、医療制度改革を実施されました。

EAPは、各労働者のメンタルヘルスを保つことで一人ひとりの生産性の維持・向上を図ることは元より、それにより各企業の業績や社会全体の生産力の維持・向上を目指すことを念頭に歴史的な制度化が行われ、アメリカではほとんどの企業で導入されることになりました。

現在、アメリカでは企業の77%がEAPを導入しているとの報告があります。

【メンタルヘルス対策の義務化】

 日本でも2000年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」が示され、EAPが注目され始めました。また、2015年12月から労働安全衛生法の改正により、従業員数が50人以上の企業には年に1回のストレスチェック実施が義務化され、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が増しました。

これまで見落とされてきた従業員の生産性を低下させる要因への関心が集まり、その結果、個々の従業員が最大限の生産性を発揮するために、環境を整えEAPによるメンタルヘルスの向上を目指す企業が増えてきたのです。

⇒「産業医制度とメンタルヘルス対策

【EAPを企業が注目する理由】

 なぜ企業がメンタルヘルスに注目するようになったのかという理由は、厚生労働省が発表した「平成30年労働安全衛生調査」の結果によるものです。

この調査は全国の事業所を対象に「事業所が行っている安全衛生管理、労働災害防止活動及び安全衛生教育の実施状況等の実態並びにそこで働く労働者の仕事や職業生活における不安やストレス、受動喫煙等の実態について把握し労働安全衛生行政を推進するための基礎資料とする」という目的のもと行われています。

平成30年の調査結果で「現在の自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっている」と答えた労働者の割合は58.0%にも登りました。つまり約6割の労働者は仕事に対して何らかの原因で強いストレスを感じており、それが原因でメンタル不調へ陥り、仕事へのパフォーマンスの低下にもつながるという結果を示したのです。

こうした調査結果も影響し、多くの企業でEAPへの注目度が高まることになりました。

【EAPの内容】

 EAPは総合的なメンタルヘルス対策であり、一次予防であるメンタルヘルス不調への気付きと予防、二次予防であるメンタルヘルス不調の早期発見と対応、三次予防である従業員の職場復帰支援と再発防止まで全て含んでいます。

一次予防から三次予防までの対策は以下のようなものです。

一次予防

・管理職及び従業員へのメンタルヘルス教育

・ストレスチェックの実施

・モニタリングやフォロー

二次予防

・専門家によるカウンセリング

・人事担当者、管理職へのトレーニング

・医療機関への受診を勧奨

三次予防

・従業員の職場復帰支援

・メンタルヘルス不調の再発防止

【一次予防の具体的な対策】

 一次予防はメンタルヘルス不調への予防の段階です。従業員自身で行うセルフケアだけでなく、管理職へのメンタルヘルス教育を行います。従業員が自身のメンタルヘルスに関心を持つことで、ストレスへの対処方法を学び、将来的なメンタルヘルス不調を予防する効果があります。

また管理職への教育は、職場環境を改善する上で重要です。職場のストレス要因の把握と社員のストレス管理には、管理職の理解が必須だからです。

職場環境で言うなら、仕事を行う環境(室温、明るさ、騒音等)、業務量や残業時間、人間関係などもストレス要因となります。一次予防の段階ではこうしたストレス要因になりうるものを把握し、改善していくことが求められます。

【二次予防の具体的な対策】

 二次予防では、予防段階よりも一歩踏み込み、ストレスによるうつ病や統合失調症、適応障害といった精神疾患を引き起こさないように対策を行います。一般にメンタルヘルスへの不調は、行動や言動から変化が現れます。そしてその変化に気付くのは職場の管理職や仲間であることが多いです。

⇒「うつ病・うつ状態・適応障害・自律神経失調症の違い

一次予防の段階でメンタルヘルス教育が適切に行われていれば、二次予防の対応もスムーズに行われやすいのですが、普段から教育されていないと対応が遅れてしまいます。

二次予防では職場の管理職や人事担当者へのトレーニングにより、メンタル不調を訴える従業員への対応方法を学んでいきます。会社全体のレベルでみると、カウンセラーによる従業員のカウンセリングを行うことも効果的です。

また精神疾患の可能性がある場合、迅速な医療機関受診へ繋げるための窓口としてもEAPは有効です。EAPでは有資格の専門家がカウンセリングを行うので、医療機関との連携もスムーズに進めやすいといった特徴があります。

【三次予防の具体的な対策】

 三次予防では実際にメンタルヘルス不調で受診・治療した従業員に、休職中から精神的なフォローや復帰に向けた勤務体制の変更やリハビリ、再発防止への対策を行います。

精神疾患は身体的な不調に比べると回復に時間がかかりやすく、元の状態に近いところまで改善するには半年~数年かかることもあります。EAPでは長期的な視点で従業員が働き続けられるように、復帰後の受け入れ体制を整備することも対策の一つです。

復帰は医師の判断に従って業務量や勤務場所を変更し、本人が無理をしないように対応することも必要です。短時間勤務や時間にゆとりのある仕事から始め、メンタルヘルスの状態に合わせた柔軟な対応が求められます。

⇒「社員が休職した場合の対応|会社ですべきこと、すべきでないこと

⇒「復職後の手順を解説|再発を予防するために

【内部EAPと外部EAP】

 EAPが一次予防から三次予防に対応するメンタルヘルス対策ですが、EAPも会社内に産業医等の専門家を置く内部EAPと外部のサービスに委託する外部EAPという2種類に分けられています。それぞれに特徴があり、メリット・デメリットもあるので解説します。

【内部EAPの特徴とメリット・デメリット】

 内部EAPは産業医や、保健師、看護師、衛生管理士などの有資格者を、企業で雇用または契約して社内のメンタルヘルス対策に当たってもらう方法です。自社で専門スタッフを指定できるため、社内のニーズに合わせた人物を選定でき、必要な時に従業員がすぐに利用できるという特徴があります。

大企業では内部EAPを導入している企業もあり、社内のメンタルヘルス対策の中心を担っています。

■内部EAPのメリットとデメリット

(メリット)

1.企業で専門家を指定できるため、社内の状況や社風、文化を理解している

2.従業員の相談を社内で受け付けるため、対応への移行がスムーズに進みやすい

3.従業員が困った時にすぐ利用できる。

(デメリット)

1.企業が専門家を雇用するまたは契約するため、費用が高くなることが多い

2.社内の専門家であるため、従業員へのプライバシーへの配慮に不安が残り、相談しにくいことがある

内部EAPには専門家が常駐するため、いつでも従業員が相談できるというメリットもある反面、コスト面や従業員の相談しづらさという面がデメリットとして挙げられます。

従業員の「他人に知られたくない」という心情に配慮し、社内でもひと目につきにくい場所に相談室を設けるか、社外に専用の部屋を設けるなどの対応を行うことも必要です。

コスト面でいうなら産業医の場合、常駐では年間1000万円以上必要になることもあるため、大企業でもなければ常勤の産業医を配置するのは難しいです。中小企業の場合は、嘱託医という形なら、比較的安いコストで月に1~2回程度巡回してもらうこともできますが、メンタルヘルス対策としては不十分でしょう。

【外部EAPの特徴とメリット・デメリット】

 外部EAPはEAPサービスを行っている専門機関にメンタルヘルス対策を委託する方法です。外部EAPサービスと契約することで、内部EAPへの対応を行ってくれる場合もあります。

外部EAPは従業員が利用したい時に電話・メール・対面での相談を、社外のカウンセリング室で行います。

■外部EAPのメリットとデメリット

(メリット)

1.企業が外部機関であるため、従業員が気軽に相談しやすい

2.企業で契約して専門家を雇用するのに比べて、コストが少なく済む

3.従業員の相談内容や事情によっては、専門の医師に取り次ぐフォロー体制が整っている

4.幅広く専門家が在籍している

(デメリット)

1.外部機関であるため、社内への報告と連携にズレが生じやすい

2.外部のカウンセリング室を利用するため、従業員によっては通うのが難しいことがある(オンライン対応を行える機関であれば問題ない)

外部EAPの強みは内部EAPに比べると、フォロー体制がしっかりしていることや、メンタルヘルスに関するスペシャリストがそろっており、連携がしかりしていること、相談者が特定されないこと、などがあげられます。コスト面でも自社で雇用するよりもはるかに安く抑えられます。

外部機関のデメリットは、社内の機関ではないために企業への報告とその後の連携にラグが生じやすい点があります。

【外部EAP導入時のポイント】

 現在、企業で外部EAPが導入されることが増えてきています。そこで外部EAPを導入する際に押さえておきたいポイントをまとめました。

・医師、保健師、心理士等の医療専門家が相談業務を担当していること

・メンタルヘルス不調がある場合、専門の医師や医療機関に取り次ぐ、体制があること

・対面相談だけでなく、メール、電話、オンライン対応を行っていること

・人事担当者としっかりと連携がとれること

・元気な人には邪魔にならないサービスであるか

こうしたポイントを重視して外部EAPサービスを選ぶことで、従業員のメンタルヘルス対策として十分に機能することが期待できます。専門性の高さはもちろんのこと、医療機関と提携しているか、人事担当者と密に連絡を取ることができるかも重視すると良いポイントです。

また、「元気な人には邪魔にならないサービス」という点は実は非常に重要です。会社全体で毎週のようにメンタルヘルス研修を実施してしまうとか、月に1回ストレスチェックを実施してしまうなどは、逆に仕事の生産性を下げてしまいます。

まとめ

 2015年のメンタルヘルス対策の義務化以降、従業員へのメンタルヘルスと企業の生産性の関係性は注目度が増しています。EAPはすぐに企業の生産性向上という目に見える成果に繋がりにくいものの、中長期の視点で見た時には従業員のモチベーション低下防止や社内コミュニケーションの円滑化に役立ちます。

メンタル不調が増えている現在、EAPの社会的な注目度や重要性は今後も増していくでしょう。

2021.08.27

休職中の自宅リハビリに何をやろうか迷っている方へ

  メンタル不調で「休務・加療を要する」の診断書が出たら、しばらくは療養のために自宅で処方薬をきちんと服薬して過ごしましたね。身体が重くて動かないとか、なかなか眠れない、気分が落ち込む、意欲がない、という状態が服薬で改善してきたら、次のステップに入ります。その時期になると主治医から「復職に備えて自宅でのリハビリをやってはどうか」とアドバイスされることが多いようです。

 効果的なリハビリ】

1.「朝15分から30分散歩をする」

朝起きてから1時間以内に15~30分の散歩をするだけで、覚醒、気分、意欲と関連した脳内物質のセロトニン(幸せホルモン)が活性化します。そして、体内時計がリセットされ、「副交感神経」(リラックスモード)から「交感神経」(活動モード)に切り替わります。セロトニンが活性化すると、清々しい気分となり、意欲がアップすることが期待できます。

ダブル効果として、夜の睡眠にも良い影響があります。セロトニンを材料に夕方から睡眠物質のメラトニンが作られるので、朝の散歩をすることで、夜の睡眠が深まるという2つの効果が期待できるのです。

天候が悪い時には、部屋の中でテレビ体操をしてみましょう。

2.「図書館で過ごす」

始めは短時間、徐々に時間を延ばして、興味が持てる本を読む、これは、人の中で過ごすことの練習、椅子に座って姿勢を保つ練習、活字を読む練習になります。

3.「通勤訓練」

出勤していた時間に、自宅の最寄駅まで行くことから始めます。慣れてきたら、通勤電車に乗ってみましょう。復職間近になったら、職場の最寄駅まで行って、心身の状態をモニタリングしてみましょう。

ここまではコロナ以前の自宅リハビリの定番でしたが、ウィズコロナの状況での自宅リハビリは3の「通勤訓練」を除いてもいいかもしれません。リモートワークが多い会社の場合には、通勤がないこともあります。また体調が十分でない時に、わざわざ混雑した電車に乗ることはリスクが大きいかもしれません。

リモートワークを視野に入れた自宅リハビリは、前述の「朝の散歩」に加えて、

・興味がある講座をZOOMで受けてみる。(集中力の確認と回復)

・興味がある本を1枚のA4にまとめてみる。

・仕事に関係がありそうな本やウェブサイトを見て、要約する。

等が試してみる価値はありそうです。

 そして、会社内や会社が契約した外部カウンセラーが外部にいる場合には、カウンセリングを受けることも良い方法です。不安があったり、孤独感がある場合には、カウンセラーに話しを聴いてもらうことで人とのつながっている安心感を得ることや、自分の考えを整理することも期待できます。

そして、カウンセラーが復職後の職場について不安を解消する調整役になる場合もあります。

1人で復職まで道のりをあることは不安がありますが、主治医、社内外のカウンセラーを利用してサポートを受けながら、回復していきましょう。

2021.08.27

対人恐怖と社交不安症

  

 最近あまり聞かなくなりましたが、対人恐怖という病気を知っていますか?

【あがり症】

 この病名ができた1930年から1970年代までは、対人恐怖は日本の精神疾患の代表とも言えるくらい大変多い病気でした。「あがり症」とも呼ばれ、自分の容姿、におい、表情などが他人を不快にさせてしまい、変に思われ嫌われてしまうと不安になるものです。

例えば人前で汗をかきすぎて変に思われている、腋の臭いが迷惑をかけているなど、そのことが気になって人前に立つたびに極度に緊張して何もできなくなったり、ついには対人関係を避けるようになるものです。

【日本だけのもの?】

 日本人は「恥の文化」というものを持っており、この病気の背景になっていると言われています。「恥の文化」とは、日本人を観察したアメリカ人が指摘したもので、日本人が自分を律する基準は他人の目であると言います。

自分が他人からどう思われているかが、日本人の行動の基準となっており、恥をかかないことに大きな意識を向けているのが日本人の生き方であると言うのです。

アメリカ人はキリスト教文化から神という絶対的な道徳の基準を持っているので、日本人ほどに他人の目を気にしません。対人恐怖が日本特有の病気であると「Taijin-Kyoufu-sho」とそのままの名前で海外に紹介されていた時期もありました。しかし、今ではこの名前を知らない人の方が多いようです。

【実は世界でもある病気】

 実はこのような人前で緊張し過ぎてしまう病気は日本だけでなく欧米にもあることが分かり、世界的には1980年に社会恐怖という病名ができました。ほぼ同じ意味であるという理由で、対人恐怖の名前は社会恐怖に吸収されてしまいました。それで対人恐怖という名前をあまり聞かなくなったのです。

【病名の変更が多い病気】

 さらに社会恐怖という病名も、1994年には社会不安障害という病名に変更され、2008年には社交不安障害、2013年に社交不安症と変更されました。研究の蓄積や社会的な影響を考慮することでこのようなことが起こるのですが、ひとつの病気でこんなに名前が変わることも珍しいことです。

【社交不安症とは】

 社交不安症とは、人前に出たり、人から注目を受けることが不安になり、対人関係を避けるようになる病気です。人前に出ることはだれしも緊張することです。しかし、社交不安症ではそれが度を越しており日常生活に支障が出るものです。現在日本では100万人が患っていると言われ、大変多い病気です。

 人前で失敗した経験をきっかけに小中学校で発症することが多いと言われています。学校の発表で手が震えてみんなに笑われた、それから人前に立つとまた手が震えて変に思われないか、恥をかくのではないか、と異常な緊張感を感じるようになってしまいます。

それがエスカレートして、一対一の場でも緊張するようになり、人との関係を避けるようになります。社交不安症は、小中学生のひきこもりの大きな原因にもなっています。

 大人になってお酒を飲むという機会があると、それで不安が解消されるので、人に会う前や仕事の前にお酒を飲んでしまうということもあります。それでお酒の量がどんどん増えてアルコール依存症になる人もいます。

【社交不安症とHSP】

 最近メディアに取り上げられ大変話題になっているHSPという言葉があります。内向的で相手の気持ちに敏感な性格を言いますが、これは病名でもなく医学用語でもありません。最近、「自分はHSP」と言って精神科を受診する方がいます。こうした方達の中には社交不安症も含まれているようです。

【治療方法】

 恥の文化にもあるように社交不安症に心理的な要因もありますが、脳神経の問題も大きいと言われています。実際に一部の脳機能に変化が起きているという研究結果があります。

社交不安症の治療は、レクサプロなどに代表されるSSRIという薬が大変効果があります。軽症の場合は抗不安薬で治療も可能です。辛いのをがまんして、勉強や仕事に支障が出たり、アルコール依存症やひきこもりにならないためにも早めに医療機関に相談しましょう。

【カウンセリング治療】

 カウンセリング治療としては認知行動療法に効果があります。薬の治療と併用することでさらに効果が上がります。社交不安症の人は、緊張を払いのけようとして、よけい緊張してしまうこと、他人の目を気にしながら実は自分の内面や体の反応に注意が向き過ぎていること、などの認知のゆがみがあります。それらをカウンセリングで修正する治療です。

【最後に】

 コロナ禍でマスクとオンラインの生活となり、社交不安症の人にとっては過ごしやすい社会になったと言われています。今後社会のオンライン化が進んでいくとさらに生きやすい社会になるでしょう。あがりやすい性格ととらえて、それとうまく付き合いながら、自分の才能を伸ばすことが可能になるかも知れません。しかし、現在の生活に支障が出ているならば早めに医療機関を受診しましょう。

2021.08.21

休職中に受けられる補償4選

  心の病気で休職した場合、職場では病欠扱いで給与は出ません。病気の辛さだけでなく、お金が入ってこないことや医療費の心配まで重なることになります。できればお金の心配をしないで療養に専念したいものです。うつ病などの心の病気で仕事ができなくなった場合、何か補償があるのでしょうか?今回は4つをご紹介します。

1.傷病手当金

 病気で休職した場合、職場で入っている社会保険から補償が出ます。これを傷病手当金と言います。休職中に給与の2/3が支払われ、復職するまでの最大1年6か月に渡り受け取れることができます。

ただし、社会保険の加入期間が1年以下の場合は若干の減額があります。手続きは職場の総務課などが窓口となり、毎月必要書類と医師の診断書を合わせて提出する必要があります。

 受給の権利がある1年6か月以内でしたら、この間に万が一職場を退職した場合でも、次に仕事に就くまでは傷病手当金は受け取ることができます。ただし、手続きは自分で社会保険組合に提出しなくてはなりません。

2.自立支援医療

 これは精神科に通院する医療費の自己負担分の2/3を都道府県が負担してくれる制度です。例えば、窓口で請求される金額が1500円ならば、実際に支払うのは500円で済むようになります。

診断書代などの自費診療分には使えません。抗うつ薬でも新薬が処方されると値段が高いために、医療費と薬代で1回5000円程度かかることもあります。治療が長期にかかる場合は利用することをお勧めします。

 申請は住民票のある地域の保険センターが窓口になっており、申請書と共に健康保険証と通院先の診断書を提出します。世帯での所得が高い場合は受けられない場合もありますのでご注意ください。提出した日から有効になりますが、初診には使えません。

3.障害者手帳

 障害を証明する手帳で、税金減額や公的な施設や乗り物が無料で利用できます。障害者枠で就労する場合にも必要です。通院が6か月以上に長引いた場合に申請できます。申請窓口は自立支援医療と同じで、いっしょに申請することも可能です。

 大手企業には障害者雇用が義務化されているため、障害者の就労枠が多くあります。給与は低くなりますが、残業がないなどの障害を考慮した業務内容になっています。病気のために通常の職場で働く自信がない場合に利用できます。企業によっては、病状が安定した場合に障害枠から通常の雇用に異動できるところもあります。

4.障害年金

 休職中の補償という今回の内容と主旨が変わってしまいますが、万が一病気が慢性化してしまい長期に仕事に就くことが難しくなった場合には障害者年金の受給が可能です。

本来65才から受給する年金を働けなくなった時点で繰り上げて受給するものです。受給できる金額は厚生年金と国民年金、障害等級によって変わります。例えば、厚生年金に加入していて障害2級になると月額10万円程度を受給できます。

 申請する条件として、発病時までに年金を2/3以上納めていること、病状が固定して1年半が経過していることが必要です。申請先は初診時に加入していたのが国民年金の場合は役所の年金課、厚生年金の場合は社会保険事務所になります。

2021.08.18

統合失調症はどんな病気?

 

 ビューティフルマインド

 2001年のアカデミー賞を受賞したビューティフル・マインドという映画をご存知ですか?ゲーム理論によりノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの自伝的な映画です。映画はナッシュ博士の視点で描かれていますが、映画の中盤でそれらがすべて幻覚であったと分かり、見ている私たちはビックリします。ナッシュ博士は統合失調症という病気だったのです。

最近は軽症の人が増えている

 統合失調症というと怖い病気のイメージを持たれる方も多いかと思います。幻覚や妄想の病気であり、進行すると無関心、無気力になってしまう深刻な病気のイメージがあるかも知れません。しかし、統合失調症でも軽症から重症まであり、軽症の人は普通に社会で活躍しています。特に最近は軽症の人が増えている傾向があります。

統合失調症とは?

 統合失調症の統合とは、心の中の思いや感情などを統合することです。この能力が低下した状態を統合失調症と呼んでいます。すなわち、心の中に自分でない声や思いが出入りして、心の中で起きていることを自分自身でまとめられない状態を統合失調症と呼ぶのです。

宗教家、霊能者、統合失調症の違い

 統合失調症の幻覚は、何かが見える幻視よりも聞こえてくる幻聴の方が多くあります。聖書にはイエス・キリストやモーセは神の声を聞いたと書かれており、霊能者は死者と交流できると言います。このような宗教家、霊能者と統合失調症のどこが違うのでしょうか?

 統合失調症の場合は、聞こえてくる思いや声と現実の区別がつかなくなり、それに巻き込まれて自分でコントロールがつかなくなります。ついには生活にも支障が出てくるようになります。

幻聴の内容

 幻聴の内容は人それぞれです。悩んでいると突然声が聞こえる場合もあれば、朝から晩までずっと話しかけられてしまう人もいます。内容は、何気ない話もあれば、死んだ母親が懐かしい声で語りかけてくれたり、困っている時にアドバイスをくれる声など、その人にとってうれしい幻聴もあります。

最も多い幻聴は、その人が気にしていることを悪く言ってくる幻聴です。例えば何かに失敗すると「お前は必要のない人間だ」、自分の容姿を気にしていると「きもい」と言ったような声です。このような悪口が一日中聞こえてくると大変苦しくなり、自殺を考えるなど深刻な状況に追いやられることがあります。

 また幻聴を現実の声と勘違いして、自分の秘密が誰かに知られているのではないか、という疑いをもつことがあります。そこから誰かに見張られている、盗聴器を仕掛けられている、心が読み取られている、という被害妄想になることがあります。

統合失調症が発症する原因

 統合失調症を発症する原因は、育て方よりも生まれつきの要素がつよいと言われています。それを調べるために統合失調症の双子の研究があります。双子は同じ環境で育てられますが、一卵性の双子は遺伝子が同じ、二卵性の双子は遺伝子の半分が同じという違いがあります。

そこで双子の一方が統合失調症になった時、もう一方がどのくらいの割合で統合失調症になったかを調査したところ、一卵性の場合は3割程度、二卵性の場合は1割程度でした。ここから統計学的に遺伝と環境の影響を導き出したところ、遺伝の影響は7割程度、環境の影響が3割程度という数値が出てきました。育て方よりも生まれつきの影響が倍以上あるのです。

原因は正確には分かっていない

 統合失調症の原因はまだ十分に分かっていません。しかし、幻覚を理解するためのいくつかのモデルがあります。一つは、1950~60年代に盛んに行われた感覚遮断の実験です。感覚遮断とは、五感への刺激をできるだけ少なくさせることです。

例えば、アイソレーションタンクというものがありますが、音と光を遮断したタンクに体温と同じ高濃度の塩水を入れて、そこに浮かんでジッとしているのです。こうした感覚遮断を行うと、半分くらいの人は何らかの幻覚を見たり聞いたりするようになります。

 統合失調症の幻覚も、孤独な生活から現実の刺激が少なることで起こると推測できるでしょう。実際に、内向的で対人関係の苦手な人、アスペルガー障害の人が統合失調症になりやすい傾向があります。

もう一つのモデル

 もう一つ幻覚を理解するモデルとして、アンフェタミンなどの覚醒剤が脳に与える変化があります。覚醒剤は、脳内のドパミン分泌を活性化して脳を覚醒状態にさせ、人によっては幻覚が起こります。

覚醒剤の影響は一時的ですが、同じような現象が統合失調症の脳の中で起きていると考えることが可能です。統合失調症とは、何かが引き金になり脳内のドパミン分泌が活性化してしまい、脳が覚醒状態になったまま正常に戻らないでいるというのが脳科学的な一つの見解です。

覚醒剤と精神薬

 覚醒剤で統合失調症と似ている状態ができるなら、逆に作用する薬を使えば、統合失調症を治せるのではないか、ということが考えられます。実際にクロルプロマジンという最初の抗精神病薬が1952年に発見されました。その後たくさんの種類の抗精神病薬が開発されました。これらは単に幻覚をなくすだけなく、意欲や気分を高める効果もあり、統合失調症の治療に利用されています。

統合失調症とカウンセリング

 統合失調症は心の病気ですが抗精神病薬がよく効く病気です。まず薬の治療が最優先されます。むしろ心を深く探求するようなカウンセリングは心を不安定にさせ、病状を悪くしてしまう危険性もあります。薬の治療といっしょに行うならば、対人関係を改善させるソーシャルスキル・トレーニング(SST)が向いています。

 統合失調症の治療についてまた別の機会説明いたします。

2021.08.16

うつ病・うつ状態・適応障害・自律神経失調症の違い

  最近、有名スポーツ選手や女優がストレスで休養する時に、病名をメディアで発表して話題になりました。ある人は、うつ病であったり、適応障害であったり、またはうつ状態や自律神経失調症という病名も発表されています。どれもストレスにより不安やうつ気分になる病気ですがどこが違うのでしょうか?

【うつ状態と自律神経失調症は正式な病名ではない?】

 実は、この中でうつ状態、自律神経失調症は正式な病名ではありません。以前は、うつ病と診断書に書くと職場などで偏見の目で見られたため、精神科医は患者さんを守るために診断書にうつ病と書かない習慣がありました。そこでうつ病の代わりにうつ状態とか自律神経失調症という名称が使われました。

 うつ状態とは、一過性の状態で病気とまでは診断できないというニュアンスで使います。自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れることから起こる様々な症状を総称したものです。倦怠感、胃腸障害、動悸、息切れ、頭痛などがあります。これらは軽症うつ病の時の身体症状として起こることが多く、また身体の病気のイメージができるために、うつ病の代わりにこの名称が使われることがあります。

【うつ病と適応障害】 

 この中で正式な病名はうつ病と適応障害です。適応障害とは、1980年代から出てきた比較的新しい病名です。仕事などの日常のストレスから不安やうつ気分などになる状態を言います。診断するためには、原因であるストレスの存在が必要で、ストレスを感じてから3ヶ月以内に症状が出ていること、またそのストレスがなくなると6か月以内に症状がなくなることが必要です。

 基本的に精神科の診断は症状から決めています。適応障害に関しては例外的に病気の原因が診断の基準になっています。例えば、会社の人間関係に悩みうつ症状がある患者さんはうつ病の診断ができる上に、ストレスの原因が明らかであると適応障害も診断できてしまう矛盾が生じてしまいます。そこで、適応障害とともに他の病名も診断できる場合はそちらを優先してつけることになっています。

 2004年に皇后雅子陛下が休養をとられた際に適応障害と発表されました。これを機に適応障害がメディアで話題になり、日本でも広く知られるようになりました。うつ病よりも適応障害の方が軽いイメージがあるようで、さきほどの理由により診断書にはうつ病と書かずに適応障害と書く傾向があるようです。

【適応障害とPTSD】 

適応障害と混同しやすい病名としてPTSD(心的外傷後ストレス障害)があります。戦争、災害、事故、犯罪等で命の危険に脅かされる出来事を体験したり、目撃したりすることにより起こる精神障害です。恐怖の場面をフラッシュバックする、似たような状況を逃避する、情緒不安定などの症状が現れます。

症状が1か月以内の場合はASD(急性ストレス障害)と呼ばれ、PTSDと診断するためには症状が1か月以上続くことが必要です。適応障害とPTSDはともにストレスが原因で起こる精神障害ですが、適応障害は日常のストレスが原因であり、PTSDはトラウマ(心的外傷体験)が原因である違いがあります。

 PTSDは児童虐待やベトナム戦争の帰還兵に多く見られたことから広まった病名です。日本では1995年の阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件がきっかけで世間に知られるようになりました。日本語で心的外傷後ストレス障害と訳されていますが、そのままPTSDの名前で定着しました。これと同時にトラウマという言葉も広がりました。

 その後PTSDという言葉が独り歩きして、有名芸能人が夫にどなられてPTSDになったとか、職場で上司に恫喝されてPTSDになったと拡大解釈された診断書が提出されるようになりました。これは被害大きく見せて訴訟で有利になるように使われて問題になりました。これらは正しくは適応障害でしょう。現在では、PTSDの使用が悪用されないように厳密に診断されるようになっています。

まとめ

 精神科の病名には分かりにくいものが多いようです。病名のつけ方が社会の偏見や訴訟への影響を考えて、担当する医師によって違うことがありました。現在も混乱は続いているようですが、最近では精神科の敷居も低くなり、正確な診断が伝えられる傾向があります。

2021.08.13

ストレスチェック 高ストレスだった どうしたらよい?

  ストレスチェックで高ストレス判定が出て、ビックリしている方も多いと思います。しかし、産業医面談は会社開示をする必要もあるため、そのまま放っておいて何もしない方もいるようです。

今回は、高ストレス判定が出た際にどうしたらよいか、そのメリットとデメリットについて解説していきます。

ストレスチェックで高ストレス判定が出た際の選択肢として、次の3つがあります。

1.産業医面談

2.社外窓口に相談する

3.精神科を受診する

1.産業医面談

【メリット】

 一般的に高ストレス者判定通知書には産業医面談をうけるよう記載されています。基本的には、産業医面談を受けることを推奨します。産業医面談はストレスチェックの結果から病気の有無や働き方について助言をくれます。また職場状況に問題があった場合には、会社側にその旨を伝えてくれます。

【デメリット】

 産業医面談を受けるには、自分が高ストレス者であることを会社側に開示する必要があります。高ストレス者であることを開示することで減給や、解雇、部署異動、人事評価が下げられることは法律違反ですので、ありませんが、自分が高ストレスであるということを会社側に知られてしまうということを嫌い、産業医面談を受けない人が多いようです。

⇒「産業医面談って意味ないの?

⇒「ストレスチェックの面談を受けない人が多い?

2.社外窓口

【メリット】

 基本的に匿名性が守られるため、産業医面談と違って、会社側に相談したことが知られることはありません。また精神科で治療をうける方がよいかや、働き方についてアドバイスをしてくれます。職場状況に問題がある場合は、同意のもと人事担当者に改善を図るよう伝えてくれます。

【デメリット】

 社外窓口を設置している職場は限られており、設置していない職場の方が多いのが現状です。しかし、近年のメンタルヘルス問題から社外窓口を設置する企業が今後増えていくでしょう。

3.精神科を受診する

【メリット】

 会社側に開示する必要もなく、またその場で精神疾患があると診断された場合は治療も受けられます。

【デメリット】

 当然ですが、職場改善のアドバイスを人事担当者に伝えることはしません。高ストレスが職場環境によるものであった場合、職場自体を改善いない場合、ストレス負担が解消されない可能性があります。

【注意すべきこと】

 ストレスチェックの結果を見る際に、是非注意してみて欲しい箇所があります。ストレスチェックは全部で57項目の質問でできています。これらの質問は大きく分けて

1.ストレスの要因に関する項目(17問)

2.心身のストレス反応に関する項目(29問)

3.周囲のサポートに関する項目(9問)

4.満足度についての項目(2問)

の4つに分かれています。

 この中で、特に注意してみる必要があるのは、2の心身のストレス反応に関する項目です。点数が少ないほど、何らかのストレスによる影響がでている可能性があります。したがって、2の心身のストレス反応が低い場合は必ず、専門家に診てもらうようにしてください。

⇒「ストレスチェックの見方|受検を有意義にするために

【まとめ】

 まだまだ歴史の浅いストレスチェック制度ですが、自分が高ストレス判定が出た場合は、必ず専門家にチェックしてもらいましょう。放置してしまうのは良くありません。仮にそこで精神疾患は発症していないと判断されれば、安心もできるはずです。

(その他ブログ)

⇒「ストレスチェックって意味あるの?

⇒「産業医と精神科医

⇒「産業医制度とメンタルヘルス対策|適切なメンタルヘルス対策を行うために

2021.08.11

復職後の手順を解説|再発を予防するために

  うつ病で休職し、復職後の再発率はとても高く、また休職に戻ってしまうケースが多くあります。再発を予防するためには、職場の対応が重要なポイントになります。復職後、会社としてどのように社員をケアしていけば良いかをご説明します。

【復職判定の段階】

 会社が産業医と契約している場合は、産業医に復職判定を任せますが、一般的には産業医がいない会社の方が多いかと思います。産業医がいない場合、必ず主治医の意見書を確認し、本人と話し合いをした上で判断するようにしましょう。

基本的には、主治医の意見が中心になりますが、どうしても職場が繁忙期であったり、復職してしまうと好ましくない状況下では、本人にそれを伝え、主治医から意見をきくことにしましょう。現在の職場状況なども考慮した上で、判断することも必要です。

また、復職のペースなどの今後の働き方についても、主治医の意見を土台にあらかじめ決めておくことが必要です。

【復職後】

 うつ病では、復職して1年間くらいが最も再発が多いと言われています。次のような3段階に分けて少しずつ仕事量を増やしていくことが良いでしょう。その際は、必ず産業医もしくは主治医に相談して許可を受けるようにします。ここで紹介する期間はあくまでも目安です。人によってはこれよりも長くかかる場合もありますので、臨機応変に対応しましょう。

1.適応期

 復職直後からは適応期です。だいたい3ヶ月くらいが目安でしょう。この時期は出勤するだけで十分と見てあげてください。なによりも出社する習慣を取り戻すことが目標の期間です。

 職場によっては、午前中だけの勤務、週3日だけの勤務など軽い勤務状況から始めることが多いようです。もちろん残業はよくありません。

 本人が仕事に穴を開けてしまった焦りから、それを取り戻そうと必死になって働こうとする場合もあります。それは良くないので、職場側がブレーキをかけてあげて、仕事に余裕あるペースを保てるように管理してあげましょう。

2.回復期

 適応期が終わり、出社に慣れてくる時期です。だいだい3ヶ月から半年くらいが目安です。休職前に近い程度の仕事をこなせるようになっていますが、無理は禁物です。残業も好ましくありません。

 うつ病の再発は良くなってから1年間が最も多いと言われています。引き続き管理者はケアを怠らないようにしましょう。

3.安定期

 適応期と回復期を経て、ほぼ休職前の業務をこなせるようになる時期で、ある程度の残業も可能になっていきます。復職して半年以降が目安です。

 しかし、ここで休職前の業務量に戻すと再発の恐れがあります。業務を増やす場合は必ず産業医や主治医に相談しましょう。

 ただし、本人がキャリアップを望んでいるのにも関わらず、窓際族のように扱ってしまい仕事を増やさないことも問題があります。本人とよく話し合いながら、任せる仕事量を増やすことが必要でしょう。少しずつ他の社員と同じように接していくことが大切です。

【注意すべきこと】

 ・周りの社員に対しての伝え方

 復職で戻ってきた際に、周りの人はとても気を遣ってしまいます。できるだけいつも通りに接して大丈夫であることを伝えましょう。また、周りの社員も混乱しないように病状のどこまでを伝えて、どこまでを伝えないかを本人と相談することはとても大切です。

 直属の上司は、ある程度気を遣い、業務態度の変化のチェックを怠らないようにしてください。再発を防ぐためには、周りで気を遣ってあげることが大切ですが、気を遣い過ぎるのは、逆に居心地が悪くなります。こうしたバランスは大変重要です。

・優遇し過ぎるのはNG

 復職者に無理をさせないことは大切ですが、優遇し過ぎるのはNGです。例えば、出勤したい時に出勤する、帰りたい時に帰ってもよいなど、就業規則にないような条件を本人が言ってきた場合は、許可するのは避けましょう。

ある程度臨機応変に対応するものの、復職したからには、他の社員と同じような規則で働いてもらうことが大切です。例外過ぎる待遇だと他の社員が不満も感じてしまいます。

・家族に勝手に連絡しない

 職場状況からでは本人の状態を全て把握することはできません。しかし、心配だからといって、本人の許可なく連絡することはしないようにしてください。ただし、職場で「死にたい」などと口をし、希死念慮がある場合はこの限りではありません。

まとめ

 復職後の再発率はとても高く、再発予防のために会社側の対応はとても大切です。社員ごとの復職対応というよりも、誰に対しても一貫した対応をとれるようあらかじめマニュアル化しましょう。休職者を出さない職場を目指すことが大切ですが、いざという時に対応できるように社内で話し合いの場を設けることが必要です。

⇒「社員が休職した場合の対応|会社ですべきこと、すべきでないこと

※参考文献「うつヌケのお得意技ベストセレクション(周囲の人ができるうつ病対策会社編) 発行 株式会社晋遊舎」

2021.08.07

精神科・心療内科・カウンセリングの違い

  

【どこに相談したらいいの?】

 メンタルヘルス問題を相談しようと病院を検索してみると、精神科、心療内科、神経科、神経内科、メンタルヘルス科と色々出てきます。はたしてどこに相談したらよいのでしょう。

 結論から言うと、心の病気を診療するところは精神科です。メンタルヘルスの問題は基本的に精神科が担当しています。正式な名称は精神神経科で、精神科を神経科と呼ぶこともあり、これらは同じ意味です。

 神経内科は脳神経の病気を診る内科です。脳梗塞、パーキンソン病、アルツハイマー病などを診療し、心の病気は診察しません。

【精神科と心療内科】

 精神科とよく間違えてしまうのが心療内科です。心療内科とは、ストレスが関連する体の病気を診療する内科の一つです。簡単に言うとストレスによる体調不良で通うところです。

 実は、心療内科とは、50年前に日本で誕生した日本だけにある診療科です。体の病気を心の面からも治療する「全人的医療」というものを行っています。心理的影響が大きい気管支喘息、胃潰瘍などの心身症の治療が出発でしたが、身体症状がある精神疾患も診療の対象になりました。癌の緩和ケア、軽症の摂食障害、うつ病などがこれに当たります。そのため精神科と心療内科で重なる部分があります。

 心療内科の名前が社会に知られるようになったのは、1996年から病院の看板に表記する許可が下りたことがきっかけでした。翌年には、「心療内科医・涼子」というドラマが話題を呼びました。架空の大学病院の心療内科を舞台に、破天荒な女医が心の病気を治療するストーリーでした。

この頃から精神科と心療内科が混同されるようになりました。心療内科は軽症の精神疾患を診るソフト精神科、精神科は精神病を治療するところのイメージで定着するようになったのです。

精神科の敷居を下げるために

 本当のところを言いますと、心療内科の専門医をもっている医師は日本全国に300人程度しかいなく非常に少ないのです。病院で心療内科と書いてあっても実は精神科医が心療内科を名乗っていることが多いのです。精神科には「薬漬け」、「鉄格子」という暗いイメージがあり、メンタルヘルスを相談したいけれども精神科には通いづらい、でも心療内科なら敷居が低くなると言われています。そこで心療内科と書いて患者さんが通いやすくしているのです。

 中には内科医がメンタルヘルスのことを勉強して心療内科を担当している病院もありますが、専門性のことを考えるとあまり好ましいことではありません。

なぜ混同されてしまったのか?

 精神科と心療内科が混同されている背景には、諸外国に比べて日本の専門医制度があいまいであったことも理由にあります。医師が自分の専門を名乗るのに、国で統一されたルールがなく自由なところがあったのです。ようやく2018年から、日本でも統一した専門医制度が始まりました。今はこの制度のもとで医師が専門を名乗ることが原則になっています。精神科や内科であるのに心療内科を名乗るということは専門医制度に反することになります。

 最近では、精神科の暗いイメージを払拭するため、メンタルヘルス科という名称が出てきました。これからは、精神科や心療内科の代わりに、メンタルヘルス科と名乗る病院が増えてくるでしょう。

【精神科とカウンセリングの違い】

 ところでメンタルヘルスを相談する時に、精神科医とカウンセラーはどこが違うのでしょうか?

 基本的に精神科医は心の病気を治すのが仕事で、カウンセラーは心の悩みの相談を受けるのが仕事です。精神科医の治療は健康保険が使えますが、カウンセラーの相談は医療行為ではないので使えません。

 しかし、心の悩みと病気は境界がないので、精神科医とカウンセラーの仕事にも完全には境界線を引けません。特に最近では、カウンセラーが認知行動療法などので心の病気の治療を担当することがあります。

 2017年に公認心理師というカウンセラーの国家資格が誕生しました。それまでカウンセラーの資格が明確でなかったため、医療分野では十分な活動ができませんでした。今後は、カウンセラーが医療分野でも大きく活躍していくことになるでしょう。

2021.08.06

社員が休職した場合の対応|会社ですべきこと、すべきでないこと

  WHOが発表した世界5大疾患の中に、精神疾患が入るなど、精神疾患は、我々の身近な病気になりました。精神疾患の中で、最も多いのが、うつ病と言われており、どの会社でもうつ病者が出る可能性があります。職場の過重労働問題、ハラスメント、人間関係などの自社による問題だけでなく、元々うつ病を患っていた経験があり、それが再発してしまうケースもあります。

どちらにせよ、全ての会社で、休職者が出た際にどのように対応するべきかのマニュアル整備をしておくことが求められています。今回は、休職者が出際に、会社は何をすればよいか、そして何をしてはいけないかを解説します。

 

【休職期間中の対応】

 よくある勘違いとして、休職期間中に、頻繁に休職者に連絡を取ろうとする会社があります。毎日メールをしたり、週に1回の面談をセッティングをしたりします。しかし、これは大きな間違いです。休職期間中は、できるだけ仕事や、職場の人と離してあげることが必要です。頻繁に連絡をとるとそれが負担となり、余計具合を悪化させる可能性があります。また、心配だからと言って、本人の許可なしに家族に確認をとることもいけません。

あらかじめ日程を決めて、本人と連絡を取る日程を決め、それ以外は連絡を取るのを避けるようにします。ただし、本人も休職期間は大変孤独を感じやすくなります。何かあった際には、自由に相談できることや、社内にカウンセラーがいる場合は利用できること、社外に相談窓口がある場合は、そこでカウンセリングを行えるなどの案内をしておくことは大切です。しかし、強制は禁物で本人の自由意志に任せましょう。

 

【職場の見直し】

 社員が休職してしまった場合、何が問題だったのか状態が落ち着いたのを確認してから、話し合いの場を設けるようにしてください。社内責任である場合は、二度と同じようなことが起こらないように職場改善を実施する必要があります。休職者が復職してきても、職場が改善されていなかった場合、また同じことの繰り返しになります。何がいけなかったのか、しっかり話し合うことで、再発防止だけでなく、第二、第三の休職者を出すことを防ぐことができます。

【他の社員にも気を遣う】

 突然休職者が出た場合、休職した人の分のしわ寄せが他の人にいきます。会社側はその点もきちんと考慮した上で対応しましょう。他の社員にあれもこれも全て状況を話してしまうことがありますが、それは避けましょう。休職する前に、本人と話し合い、周りの人にどのように伝えるかを決めておく必要があります。

【復職したときのサポート体制の整備】

 復職してきても、今まで通り働けるようになるまで時間がかかります。どのようにサポートしていくのか復職プログラムの形で決めておくことが必要です。基本的に直属の上司がケアをしていくことになりますが、仮にその上司がメンタル不調を発生させる原因であった場合、部署を変える、担当上司を変えるなどを考慮しましょう。

【復職が決定したら】

 復職が決定したら、今後どのように働いていくか本人と話し合いの場を設けます。産業医がいる場合は産業医の意見を聞き、いない場合は主治医の意見書を参考に、今後の働き方について話し合いましょう。あらかじめ職場決めておいた選択肢の中から、部署異動させるか、元の部署に戻るか、担当上司を変えるかなど、ある程度本人の意向をくみ取るようにしてあげると良いでしょう。

また、職場に戻る際にどのように他の社員に伝えるかも本人と再度話し合いましょう。先走って、本人の許可なく他の人に色々話してしますと、本人も戻りづらくなってしまいます。どこまでを伝えて良くて、どこまでを伝えないかをあらかじめ確認してください。

まとめ

 うつ病の再発率は非常に高く60%と言われています。また、復職したとしても再発により、再度休職や退職する可能性があります。休職者に対する対応を間違えてしまうと問題に発展しかねません。適切な対応を心がけましょう。

⇒「復職後の手順を解説|再発を予防するために

⇒「中小企業における職場復帰までのプラン(産業医がいないケース)

⇒「産業医制度とメンタルヘルス対策~適切なメンタルヘルス対策を行うために~

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