メンタルヘルス

2021年09月

2021.09.18

50名未満の会社もストレスチェックを導入しよう|費用を抑えるために

  2014年から50名以上の労働者を抱える事業所での、ストレスチェック実施が義務化されました。しかし、50名未満の事業所ではやらなくて良いのかというとそうではありません。50名未満の事業所でも努力義務として、ストレスチェックの実施を推奨されています。

 2019年度現在、ストレスチェック制度の実施が努力義務となっている労働者50名未満の事業所ではストレスチェックの実施率は12~56%との報告があります。

この数値をみると50名未満の事業所でのストレスチェック導入率は低いと言えます。

会社におけるメンタルヘルス対策が必須と言われている昨今、中小企業が日本の会社の9割以上を占めるということを考慮すると、より一層50名未満の事業所でのストレスチェックの導入率を上げることが今後の課題となっていきます。

では、50名未満の事業所でのストレスチェック導入率が低いのは何故なのでしょうか。そもそも義務化されていないからという理由もあげられるものの売上に関係のない費用を負担するほど中小企業には余裕がないという、費用面の問題も考えられます。

費用を抑えて、ストレスチェクを行うにはどうすれば良いのでしょうか。

【具体的な方法】

1.ストレスチェックについて

 ストレスチェックに関して、自社で実施することも可能ですが、実施者が必要になることや、手間を考えると外部に委託した方が良いと考えます。ストレスチェックの実施者としては、産業医、医師、研修を受けた公認心理師、看護師などを選任できますが、まずストレスチェックの実施のためだけにスポットで実施者を引き受けてくれる人を探すのは難しいです。

また、ストレスチェックのシステムに関しても、少し複雑であったり、アップデートを定期的に行うので自社で行うには手間がかかってしまいます。50名未満の事業所がストレスチェックを外部委託しても年1回であれば、数万円で済むので、そこまで負担でないと思います。

2.産業医について

 医師と嘱託産業医契約をすると医師にもよりますが、月額3~7万円ほどかかります。また、高ストレス者面談は1人あたり、2~3万円追加でかかることから、費用面で負担になります。

50名未満の事業所では産業保健センターで、産業医の面談が無料で利用できます。少し書類書きによる手間はかかりますが、無料で行えるというメリットがあるので、こちらを利用することをお勧めします。

3.ストレスチェックの課題点(メンタルヘルス対策・相談窓口について)

 ストレスチェックの課題として、高ストレス判定後、労働者が面談を受けにいくということがあげられています。高ストレス判定が出たとしても、会社側に開示しなくては、産業医面談を受けることができません。そのため、会社側に知られることなく、産業保健スタッフと面談を受けられる仕組みを導入することが求められています。

大企業であれば、自社でカウンセラーを雇用することができますが、中小企業がカウンセラーを雇用するのは現実的ではありません。そのために、相談窓口として外部委託することをお勧めします。費用感としては、月額2~4万円ほどで、メンタルヘルスやハラスメントに関すること全ての相談対応を一元化して委託することができます。

ストレスチェック、産業医面談だけでは、メンタルヘルス対策として十分とは言えないため、外部の機関に委託し、しっかりとしたメンタルヘルス対策を行うと良いでしょう。

まとめ

 50名未満の事業所でももちろんメンタルヘルス対策は必要です。会社として、費用面で負担になり過ぎないよう、うまく工夫しながら、メンタルヘルス対策をおこなっていきましょう。

【※参考文献 精神科 第36巻 第4号 「ストレスチェック制度に関する最近の話題」 (著 佐々木 那津、駒瀬 優、川上 憲人)】 

2021.09.16

うつ病の物忘れ

  

 2018年に「大恋愛」という人気ドラマがありました。主人公の30代の女医が若年性アルツハイマー病になるストーリーです。物忘れの症状が日常生活で少しずつ現れてくる様子がリアルに描かれており、中には「自分もアルツハイマー病ではないか」と疑い、物忘れ外来を受診した若い人が増えました。

 現在も物忘れ外来を受診する若い人が増えており、20代の人も稀ではありません。しかし、若い人の認知症が増えているわけではありません。実際の診断は認知症ではなく、うつ病やストレスであることが多いようです。また、ADHDの人は不注意から物忘れが多いのですが、仕事などのストレスで物忘れの症状が悪化していることもあるようです。

 うつ病やストレスに物忘れの症状があることはあまり知られていませんが、気分の落ち込みなどのうつ病の典型的な症状よりも物忘れが前面に出ていることがあります。年配の人のうつ病の場合、認知症との区別がとても難しい場合もあります。物忘れがうつ病の存在に気づくケースもあります。

 うつ病やストレスによる物忘れは次のような感じです。職場では、入力の間違いなどのケアレスミス、大切なアポイントを忘れてしまう、人の名前が出てこない、作業の手順を覚えられない、人の話が頭に残らずすぐに抜けていく、などがあります。

 家庭では、暗証番号を忘れた、財布を忘れた、料理の火を消し忘れた、同じものを買ってしまった、などを訴える人がいます。

 認知症の物忘れと違い、うつ病やストレスの物忘れは知能が低下しているわけではなく、脳全体の働きが弱って集中力の低下などが原因になって起きています。記憶が完全に抜けることはなく、よく考えれば思い出すことができます。

食事を食べたことは憶えているが、何を食べたか思い出せない、家族から言われて、ああそうだった!となるのはうつ病やストレスによる物忘れです。認知症の場合は、食べたこと自体をまるごと忘れてしまい、家族から言われても思い出すことができません。

 うつ病やストレスのある人は、物忘れが多いと「認知症ではないか!?」と心配になりますが、認知症の人は物忘れがそれほど執着しません。忘れても無関心でいることが多いのです、ですから一人で物忘れ外来に来る人の9割は認知症ではないとも言われています。認知症の人はそもそも物忘れを気にしてはいないので、自分から受診することはあまりなく、だいたい家族に連れられて病院を受診します。

 物忘れの原因は、認知症、うつ病、ストレスだけではありません。スマホやゲームのやり過ぎ、寝不足、お酒の飲み過ぎなども原因になります。稀に脳腫瘍や甲状腺の病気の場合もあります。

 また、アレルギーの薬、糖尿病の薬、睡眠薬などを飲んでいる場合、それらが物忘れを引き起こしていることもあります。うつ病の治療中の症状が良くなっているにも関わらず、物忘れが出てきた場合は、治療のために飲んでいる睡眠薬の影響があるかも知れません。

                 

 年齢とともに物忘れが出てくるのは自然な老化現象です。50代になって人の名前が出てこない、新しいことを覚えられない、となって焦ることはありません。しかし、急に物忘れが増えて仕事や勉強に支障が出るようになった場合は注意をしましょう。まずスマホやゲームを控える、睡眠時間をしっかりととる、お酒を控える、よく休みをとってみる、など生活を見直すことが必要です。これでも改善されない場合は、専門家に相談してみましょう。

2021.09.13

企業のメンタルヘルス対策とは?

  

 企業におけるメンタルヘルス対策はどのようなことが期待されているのでしょうか?メンタルヘルス対策への全国的な注目が増すなか、企業ではどういった対策が行われているのか、そもそもメンタルヘルス不調とはどういう状態のことを指すのでしょうか?

企業のメンタルヘルス対策の取り組みについて解説していきます。

            

メンタルヘルス不調とは

 メンタルヘルスとは簡単にいうなら「心の健康状態」を表します。

 厚生労働省によると、メンタルヘルス不調とは「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう」とされています。
(厚生労働省・労働者の心の健康の保持増進のための指針より)

メンタルヘルス不調は「心の健康がおびやかされ、体の健康にも悪影響を与えている状態」ということです。メンタル不調に陥ると不安感や深い悩み、気力が出ない、倦怠感などの症状が現れ、もっと悪化すると自殺につながるリスクもあります。

令和2年度の年間自殺者数は全国21,081人、そのうち被雇用者・勤め人は6742人とされており、自殺者の3割がどこかの企業に勤める人という結果でした。つまり自殺者を減少させるためには、企業によるメンタルヘルス対策への積極的な取り組みが求められているのです。

メンタルヘルス不調により生じるリスク

 メンタルヘルス不調によりリスクを生じるのは、労働者だけではありません。

企業にとっても、労働者がメンタルヘルス不調に陥ってしまうことで様々なリスクが生じるとされています。

(厚生労働省・こころの耳より)

1.職場の生産性の低下

 労働者の気力・活力の低下、判断力の鈍化によって、業務の処理能力が低下し、部署内の生産性低下に繋がります。また企業の長期休業者の約半数がメンタルヘルス不調によるとされており、企業に求められているのは早期の発見、早期の対処です。

メンタルヘルス不調は早期発見、対処出来るほど、早い回復が見込めるため、研修による企業全体での意識付けが重要です。

2.モチベーションの低下

 気力・活力の低下から労働意欲の低下につながります。研修を通して労働者自身にメンタルヘルスへの意識付けがされれば、早期に自ら上司や専門の窓口へ相談することで対処もできます。

3.仕事の事故・トラブルの発生

 メンタルヘルス不調は集中力の低下、不眠や倦怠感よる注意力の低下にもつながります。部署内でのトラブルが取引先にも損害を与えるリスクも孕んでいるため、労働環境の改善や業務内容の変更が必要になるでしょう。仕事での失敗は労働者自身にとっても、ショッキングな出来事なので職場全体でサポートする必要があります。

メンタルヘルス対策の「3つの段階」と「4つのケア」

 2015年のメンタルヘルス対策の義務化から厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」として、予防の「3つの段階」とメンタルヘルス対策の「4つのケア」を策定しました。

それぞれを紹介します。

3つの段階:一次予防(未然防止)、二次予防(早期発見)、三次予防(職場復帰支援)を、それぞれの段階に合わせてメンタルヘルス対策を行います。

4つのケア:セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4種類があります。それぞれケアを行う対象が異なるため、それぞれの違いを認識する必要があります。

予防の3つの段階

3つの予防の具体的な内容を見ていきましょう。

3つの段階

内容

一次予防【未然防止】

l  ストレスでメンタル不調を起こす前に予防しようとする段階。

l  労働者自身にメンタルヘルスへの知識を持ってもらい、ストレスへの対処を促す。

l  監督者側には労働環境の改善、対処法のアドバイスを行うことで労働者のメンタルヘルスへ配慮する職場環境改善と雰囲気作りを行う。

二次予防【早期発見】

l  メンタルヘルス不調を起こした労働者の早期発見、早期対応を行おうとする段階。

l  労働者が自発的に相談・対応することもあれば、専門家による治療が必要な段階で発見することもあるが、いずれも発見したら早期に適切な対応を行う。

l  労働者が相談しやすい職場環境、監督者側も労働者のメンタルヘルスへの配慮を行う。

三次予防【職場復帰支援】

l  メンタルヘルス不調により休職中の労働者が、職場復帰できるよう支援すると考える段階。

l  復職へ向けた精神面のサポート、体調に合わせた労働内容の変更、職場全体で治療への理解を進める段階。

l  三次予防の段階が不十分だと、再発や離職につながるため細やかな配慮が必要になる。

一次予防は、労働者・管理者を問わず、ストレスマネジメント研修や年1回以上のストレスチェックを行うことで、それぞれの立場に合わせたメンタルヘルスへの教育・意識付けを行う段階です。意識付けによりメンタルヘルスへの正しい認識を持ち、ハードルを下げることを目的にしています。

二次予防は、社内・社外でのカウンセラー等による相談窓口の開設、産業医と面談できる場の設定のほか、外部サービスとの連携を行う段階です。早期発見・対処するためには、メンタルヘルス不調に対応するための下地作りが必要となります。

三次予防は、精神科医との連携、外部EAPで職場復帰を支援し、再発を防止する段階です。職場全体で職場復帰への細やかな取り組みを行うことが、再発と離職を防止する1番の対策になります。

メンタルヘルス対策の4つのケア

4つのケアの内容をそれぞれを見ていきましょう。

4つのケア

内容

セルフケア

「自分の健康は自分で守る」という考えに基づいて、セルフケアを行うこと。

ラインによるケア

現場レベルの管理者が行うケア。職場環境の改善、相談などを行うこと。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医や心理スタッフ、人事・総務スタッフが行うケア。企業におけるメンタルヘルス対策の企画・立案を行う。

事業場外資源によるケア

社外の専門機関や専門家の支援を受けることによるケア。

セルフケアでは、年1回以上のストレスチェックで自らのメンタルヘルス状態に気付いてもらい、自ら予防対策をとってもらうことが目的です。

ラインによるケアでは、管理者にメンタルヘルス研修、労働環境の改善への意識を持ってもらい、現実に改善を目指すことが目的です。

事業場内産業保健スタッフによるケアでは、医師、保健師、衛生管理士などの専門スタッフによるカウンセリングや相談を通し、企業内のメンタルヘルス対策の拡充を目的にしています。

事業場外資源によるケアでは、外部EAPや専門家が介入することで、より高度な専門性を持ったスタッフによるケアで労働者へのメンタルヘルス不調に対処することを目的としています。

                  

まとめ

 2015年の法改正から、従業員50人以上の企業では年1回のストレスチェックや産業医の設置が義務化されました。今後もメンタルヘルス対策への意識は高まっていくことが予想されます。労働者のメンタルヘルス不調は企業の生産性にも直結する問題ですから、各企業のメンタルヘルス対策には今後も注目していく必要があるでしょう。

2021.09.11

磁気でうつ病が治るのは本当?|TMSについて

  うつ病の治療と言えば薬が中心です。しかし、2019年から磁気を使ったうつ病の治療が健康保険で受けられるようになりました。磁気とは磁石同士で引き合ったり、反発したりする見えない力です。磁気ネックレスなどですでに健康器具として利用されています。磁気によるうつ病治療は磁気刺激治療とか、TMSと呼ばれています。

 TMSとは、椅子に座って磁気を発生する装置を頭に当て、磁気の刺激を30分程度受けるという簡単なものです。麻酔は必要なく、痛みや大きな副作用はありません。ただし、週に5日間、6週間にわたり合計30回を受けなくては効果がありません。現在のところ大学病院などで入院して受けることができます。1回の治療費は4000円程度になりますので、入院費などを合計すると全部で20万円~50万円ほどかかります。

 高校の物理で電磁誘導というものを習いますが、TMSはこれを利用したものです。磁場を動かすとその中に電流が流れるという現象で、頭の周囲に磁場をつくり、脳のうつ病の原因部分に弱い電流を流します。これが刺激になってうつ病の原因部分が回復していくという治療です。

 メディアでは、簡単で副作用がない画期的な治療法と宣伝していますが本当でしょうか?

 現在TMSで健康保険が使えるのは、すべてのうつ病でなく、薬の治療に効果がなかった場合に限られています。これは、薬が効かない人へのTMSの効果は実証されましたが、うつ病の人すべてに最初から利用するには効果や安全性において完全に実証されていないからです。まずは効果が確実で安全性の高い薬の治療を行い、それで治らない場合の次のステップとしてTMSを利用するべきであるという考え方です。

 それでは、実際にTMSの効果はどのくらいでしょうか。ちなみにうつ病の薬の治療は6割~7割くらいの人に効果があります。TMSは、薬が効かなかった人の3割~4割程度の人に効果がありました。そのうちに数か月で元に戻ってしまう人もいて、最終的に治るというレベルまで到達する人は2割~3割程度であると言われています。

                      

 これを薬で治らない人の3分の1に効くのだから良いのではないか、という肯定的な医師もいれば、たったの3分の1にしか効き目がない、という悲観的に捉える医師もいます。どちらにしても治療効果を上げていくことが今後のTMSの課題となっています。

 TMSの機械は医療機器として場所をとらないため、最近では民間のクリニックでも取り入れているところが増えてきました。健康保険は使えず、自費での治療になりますが、通いで受けることができます。値段は施設によって異なりますが、合計で健康保険を使った入院とほぼ同じくらいに設定されているようです。

 民間のクリニックでは、薬を飲みたくないから、という理由だけでも治療を受けられるところもあるようです。先ほども言ったように、最初から行うことにはまだ十分な実証がされていません。大きな副作用はありませんが、治療が効かないことや、効果があっても数か月で元の状態にもどってしまい、結局薬の治療になったという人もいます。高い治療費が無駄になってしまうこともありますので、まず薬の治療を受けてから検討するのが良いでしょう。

2021.09.07

産業医の探し方 6選

 ひとつの事業所の労働者の数が49人⇒50人になると、必要になるのが嘱託産業医です。この嘱託産業医は1,2ヶ月に1回会社を訪問し、産業医業務を行うことになります。

事業所によっては医師との接点がなく、「どう探していいのかわからない」「周囲に医師はいない」、という声をよく耳にします。今回は産業医の探し方について解説していきます。

【50人の定義について】

 もし労働者の数が50人に達した場合は、14日以内に「〇〇という医師を嘱託産業医とした」といった文章を役所に提出する必要があります。そのため、50人が見えてきた段階で探し始めないと間に合いません。この50人というのは正社員だけではなく、アルバイト、契約社員、などの非正規職員も含んだ数になります。「正社員の数」と思っていると指導を受ける可能性があるので、気を付けましょう。

また、「一つの事業所」というのも、会社単位ではなく、会社の事業所単位で人数を数えます。たとえば45人の事業所を10ヶ所抱えている会社は、嘱託産業医は必要ありません。しかし、60人の事業所を2ヶ所抱えている会社はともに嘱託産業医が必要になります。

【産業医の探し方】

①地元の医師会から探す

(メリット)

 要望に合った医師を紹介してくれます。何科が良いか、経歴がどのくらいが良いかなど、幅広い要望に対応できます。産業医紹介の正式な機関のため、とりあえずは、医師会から探すのを検討してみると良いかもしれません。基本的には紹介料は無料であり、産業医を交代した場合でも、無料で紹介してくれます。

(デメリット)

 産業医との契約は直接契約となり、契約手続きが煩雑であったり、最終的な産業医契約は仲介会社をはさむよりも割高になる傾向があります。

②産業医紹介会社

(メリット)

 希望の産業医を紹介してくれ、紹介時に金額を紹介会社に支払うシステムです。産業医とは直接契約ですが、金額面やどのような産業医がよいかなどの希望にも応えてくれます。幅広い医師が登録していることもあるので、専属産業医を探している場合はおススメです。専属産業医の場合は、年収の20~30%分の金額を紹介会社に払うことになります。

(デメリット)

 その後のフォローがなく、産業医とうまく連携が取れない場合があります。また、産業医を交代したいときに、都度紹介料がとられます。

③産業医仲介会社

(メリット)

 産業医との契約は直接契約ではなく、仲介会社が間に入り、その仲介会社と契約します。営業などが仲介として入るため、産業医とのやり取りがスムーズであり、対応もしっかりしています。産業医を交代したいときでも、仲介会社がすぐに探してくれるため、安心です。また、ストレスチェックや相談窓口、メンタルヘルス対策などまとめて産業保健活動を行ってくれる点もメリットです。

(デメリット)

 仲介手数料が取られるため、産業医との直接契約よりも料金が高くなる傾向があります。

④健診機関を通して紹介してもらう

(メリット)

 健康診断と産業医の選任を合わせてできるのがメリットです。契約は医師との直接契約ですが、医療機関と契約しているような感覚のためサポート体制もしっかりしています。また、産業医との繋がりが強くなるため、金額面などで多少サービスしてくれるところもあります。

(デメリット)

 対応していないところもあるので、かかりつけの健診機関に尋ねてみましょう。

⑤ウェブサイトで地元の開業医から探す

(メリット)

 産業医によっては割安な場合もあります。会社から近い場所の産業医を探せば、すぐに対応してくれるなどメリットもあります。ホームページを見れば、どのような医師かということもわかるため、自分の会社に合う産業医を見つけやすい傾向にあります。

(デメリット)

 産業医を交代したいときに、再度ウェブサイトから探さなくはならないので、手間がかかります。また、基本的に通常業務が忙しいので、細かく連携が取れないこともあります。

⑥労働衛生コンサルタント事務所

(メリット)

 労働安全衛生法に基づく労働衛生コンサルタント試験に合格し、厚生労働省の名簿に登録を受けた労働衛生の専門家たちが運営する事務所です。労働衛生に関するスペシャリスト達の集団のため、職場改善指導や労働衛生に関する幅広い指導をしてくれます。

(デメリット)

 事務所にもよりますが、今回ご紹介した中で、一番金額が高いです。費用を抑えたい企業にはおすすめできません。

まとめ

 労働者数が50人を超えてから14日間に届出が必要となります。50人を超えてから、「さぁどうしよう」と考え始めても、産業医が見つからないことがあります。50人が見えてきた段階で先に探しておくのが賢明でしょう。

自社は産業医にどういった業務を期待するのか、事業所として用意できる予算はどのくらいであるか、嘱託産業医の給与の相場はいくらぐらいであるのか、そういったことを考えながら産業医を探していくと、事業所に合った良い産業医とマッチングすることが可能となるでしょう。

 

2021.09.04

子供の代表的な心の病気7つ

  コロナ禍で家庭内での子供の虐待やネグレクトが増えていると聞きます。虐待やネグレクトは子供の心に大きな傷を与えて、心の病気になることがあります。しかし、このような特殊な環境でなくても子供に心の病気が起こる場合があります。

 例えば、勉強のストレス、学校のいじめ、両親の離婚、家族の病気や事故、両親がけんかばかりしている、家庭内にルールが多くそれに外れることが許されない、こうした日常的なストレスが子供を心の病気にしてしまうことがあります。

親が「これくらいのことは一人で乗り越えられるはずだ」と思うような出来事でも、子供にとってはすでに大きな心の傷になっていることがあります。子供は大人よりも敏感であり、大人の視点からは大したことがないと見えることが、子供にとって我慢ができない大事件であることがあります。

 それではどのような心の病気があるのか、子供に多く見られる心の病気を具体的に紹介します。

【7つの代表的な子供の心の病気】

心身症

 子供は言葉で表現することが未熟な分、心の中で起きていることを口で訴えることができません。子供の心の病気は体の症状や普段と違う言動で表に現れやすいのが特徴です。心の辛さが体の症状として出ることを心身症と呼びます。

例えば、学校へ行こうとするとお腹や頭が痛くなる、というのがよく見られる症状です。痛みは頭や腹に限らず、体のあちこちの痛みを訴えることもあり、微熱が伴う場合もあります。他にも、下痢、吐き気、めまい、立ちくらみ、などの自律神経の症状から、疲れやすく体調が悪いといった体全体の不調で現れることもあります。

 小児科や内科で実際に体に異常がないかを診てもらい、特に問題がない場合は心身症の可能性があります。「小児科で何でもないと言われたから、ずる休みだ」というのは間違いで、子供自身は苦痛を感じています。心身症を診ている小児科や小児精神科を受診しましょう。

うつ病

 うつ病というと気分が落ち込み元気がなくなるというイメージがありますが、子供のうつ病はこれに限りません。睡眠リズムがおかしくなり、学校へ行く時間になっても朝起きられない、という症状から気づかれることが多いようです。他にも、機嫌が悪くすぐに怒る、ゲームにのめり込む、疲れやすい、食欲がなくなる、自傷行為など普段と違う言動として現れます。

 心身症と同様に小児科で体に異常がないかを診てもらい、特に異常がない場合は、小児精神科を受診しましょう。

チック

 激しいまばたき、首をふる、肩をすくめる、しかめ面、など急に体が勝手に動いてしまう症状をチックと言います。自分の意志と関係なく突然筋肉が動いてしまいます。「やめなさい」と注意しても、子供は意識してやっているわけではないので、効果がありません。ストレスの原因を解消して様子を見てあげると比較的自然治癒しやすい病気です。

強迫症

 強迫症とは、汚れや事故が起きることが不安で何度も確認をする病気です。長い時間手を洗い続ける、忘れ物や身だしなみのチェックを続ける、鍵を何度も開け閉めしてしまっていることを確認する、電気やガスが消えているか何度も確認する、などが見られます。

社交不安症

 社交不安症は、以前は対人恐怖と呼ばれていました。極端に人見知りであったり、臆病で人前に出ることを怖がるものです。小中学生のひきこもりの大きな原因にもなります。

 強迫症と社交不安症はともに不安の病気であり、生活上の不安の原因を取り除いてあげることが必要ですが、脳の機能の問題もあり薬の治療が効果的です。

摂食障害

 食事は心の健康のバロメーターでもあります。体重の急激な変動はうつ病であったり、小中学生の女児の場合は摂食障害の可能性もあります。痩せているアイドルにあこがれたり、美容を意識し過ぎて拒食や過食嘔吐になっていることがあります。お腹がへっているのに食べようとしない、過食をしてトイレで吐いているなど、食べ方がおかしい場合は注意が必要です。

自傷行為

 ストレスを我慢していると、爪かみ、髪の毛を抜く、リストカット、など自分を傷つけることがあります。逃げ場のない気持ちを自分の体を傷つけることで解消していると考えられています。

 子供の心の病気を7つあげましたが、背景に発達の遅れがあり、学校の集団生活についていけなくなっているために症状が出ていることもあります。

【大切なことは】

 ともかく子供の異変に早く気づく、そして何がストレスなのか気づいてあげることが大切です。子供は心の中で起きていることを言葉で表現できないだけではありません。訴えたいことがあっても親に理解してもらえないと思っているので、あきらめて言わない場合もあります。子供の言動に異変があったならば、まず頭ごなしに否定しないで話せる環境をつくりましょう。

 子供が心の病気になったら、まず学校や習い事は休ませるなど無理をさせずに家でゆっくりさせることが基本です。しかし、親として勉強に遅れてしまうことが不安で、長期に学校を休ませたくないというのが本音でしょう。小中学校の時に社会から脱線してしまうと、今後も一生まともな職業につけないのではないか、世間に置いて行かれるのではないか、と不安になります。

 しかし、いまの日本は社会へ出るまでに色々なルートがあります。有名な学校を出たから将来が約束されるわけではありません。フリースクール、チャレンジ校、高卒認定などの様々な教育のルートがあり、この間に勉強以外で才能を伸ばす人もいます。大きな企業では障害者の雇用が進んでおり、万が一社会に出る場面で病気が治っていなくても障害を持ちながら働くこともできます。

 将来のことを心配しすぎて、今の子供の気持ちの逃げ場をなくしてしまい、家庭内暴力やひきこもりにまで追い込まないようにしましょう。

 子供の心の病気で小児科を受診される方が多いですが、メンタル系が不得意な小児科医もいます。心の病気に詳しい小児科か小児精神科医を受診することをお勧めします。また、子供にはあまり薬を飲ませたくないと思う方もいますが、慢性化しないためにも早めに薬の治療を行い、辛い症状を改善してあげることが必要です。

2021.09.01

心の病気はカウンセリングで治せるの?

  

 精神科の治療と言えばカウンセリングを思い出す人が多いのではないでしょうか?映画やドラマでは、精神科医が難しい顔をして話を聞いているシーンをよく見かけます。これは昔の精神分析のイメージのようです。しかし最近の精神科の治療は内科などと同じように薬の処方が中心です。

 心の病気なのに飲み薬で治療することを不思議に思う人もいるようですが、実際に治療の効果、期間、費用などを突き詰めていった結果、薬の治療が中心になっています。乱暴な言い方ですが薬の治療はコスパが高いのです。

1950年代に精神科の薬が発見されるまで、精神科の治療は困難を極め、効果の不明な治療も多く行われていました。1960年頃から精神科の薬は実用化されて、大きな成果が出ました。さらに2000年前後から新しい世代の精神科の薬が開発され、多くの精神疾患が治療可能になりました。

こうした流れで精神科の治療は薬が中心になって行きました。精神科医の行うカウンセリングを精神療法と呼びますが、それは病気での原因を理解してもらい、薬の効果を確実にするための心理教育的な側面がつよくなっています。

【カウンセリング】

 それではカウンセリングはどうでしょうか?病気治療の目的で行われるカウンセリングのことを心理療法と呼びます。心理療法には認知行動療法、精神分析、クライアント中心療法、ブリーフセラピー、森田療法などたくさんの種類があります。2000年くらいから、「エビデンスに基づく医療」という考えが精神科に持ち込まれました。

それまで効果が曖昧でも慣習として行われていた治療をきちんと検証して、本当に効果がある治療だけを行うべきであるという考え方です。これによって心理療法の効果も検証されるようになりました。

【プラセボ効果】

 食用の白い粉末を「うつ病の薬です」と嘘をついて、うつ病の患者さんに飲んでもらったところ、なんと30%の人がうつ病が治ったという研究があります。このような暗示の効果をプラセボ効果と言います。心の病気はこのプラセボ効果が非常に大きいのです。

偉い先生に診てもらっている、特別な薬を処方してもらった、こんなことでも治療の効果があるのです。しかし、プラセボ効果はすべての人に効くものではありません。病院で行う実際の治療は確実でなくてはならず、プラセボよりも効果があることが必要です。

【カウンセリングは治療に効果があるの?】

 治療に効果があるかを検証するためには、無作為化比較試験というものを通じてプラセボよりも効果があるかを判定します。まず、調べたい病気の人のグループを無作為に同じ人数で2つに分けます。

片方のグループには検証したい治療を行い、もう片方のグループには治療の薬と偽って偽薬を飲んでもらいます。この2つのグループでどれだけの人が治ったかを比較することで、検証したい治療がプラセボよりも効果があることが証明されます。

 さまざまな心理療法が実際に病気を治すことができるのか、無作為比較試験を使って調査が行われました。その結果、認知行動療法が、うつ病、強迫症、社会不安症、パニック症、PTSD、過食症に効果が認められました。特に軽症の場合には薬とほぼ同じくらいの治癒率が確認されています。また、認知行動療法の一つであるソーシャルスキル・トレーニングが統合失調症に効果がありました。

 このように、心理療法の中でも認知行動療法は大変有力な治癒方法であることが証明されています。

 現在のところ、精神分析、ブリーフセラピー、クライアント中心療法では病気治療の効果は認められていません。そもそもこれらのカウンセリングは、人格の成長や悩みの解決を目的としています。カウンセリングで人生探求をしながら、その過程で病気が改善していくことはありますが、それは必ず起こることではありません。病気の症状を改善させるための手段ではないのです。

 うつ病の治療に月に1回通院して毎晩1粒を飲むだけの薬の治療と、毎週1時間の認知行動療法を通うとなるとどちらを選びますか?費用は薬だけなら月に3000円程度、認知行動療法なら月に20000円以上もかかります。同じ効果があるのならば、コスパの高い薬の治療を選ぶのが普通でしょう。心の病気にはまず薬の治療、それであまり改善されない、もしくは薬が効かないならばカウンセリングの治療を利用するという選択が一番良いでしょう。

 現在のところ、認知行動療法は医師か医師の補助のもとで看護師が行う場合のみに健康保険がつかえます。時間や手間がかかるため、医師が実践している医療機関はほとんどありません。2018年に公認心理師というカウンセラーの国家資格が誕生し、認知行動療法を実践できる公認心理師も増えています。まだ保険の適応はありませんが、今後は公認心理師による認知行動療法の広がりが期待できるでしょう。

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