メンタルヘルス
2021.10.30
メンタルヘルス対策にエンゲージメントが重要な理由
メンタルヘルス対策にはエンゲージメントが重要と最近は注目されています。エンゲージメントを測る指標やエンゲージメントを高める方法が研究され、多くの企業で取り入れられています。
エンゲージメントを高めることで、ストレスが軽減され、離職率が低下するのに加え、生産性も向上すると言われているのです。ではエンゲージメントとはどのようなことを言うのでしょうか、なぜエンゲージメントが高いとメンタルヘルス対策になるのでしょうか。
よく使われる「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」の違いは何なのか。本記事ではメンタルヘルスとエンゲージメントの繋がりを解説し、エンゲージメントを高める方法を紹介します。
エンゲージメントとは何か?
エンゲージメントとはビジネスの世界では「愛着心」や「愛社精神」と言われます。もっと言うなら「会社の理念に共感し、ともに成長する関係」のことです。似ている言葉には「従業員満足度」がありますが、従業員満足度は従業員個人が会社からの福利厚生や待遇面に満足することであり、あくまで個人の満足度のことでしかありません。
従業員エンゲージメントは従業員の会社への貢献意欲であり、会社と共に成長することを目指す関係を指しています。そのため、従業員満足度は生産性とあまり関わりませんが、従業員エンゲージメントは会社の生産性に大きく関わるのです。
会社にとって従業員エンゲージメントは生産性向上のために重要なポイントなので、多くの企業でエンゲージメントを測り、高めるために日々施策を行っているのです。
最近の研究ではワーク・エンゲージメントと生活満足度、パフォーマンスには相関がみられ、従業員エンゲージメントを高めることは業績に大きく貢献することがわかっています。また令和元年発表の厚生労働省の「労働経済白書」でも、従業員の働きがいや意欲の低下はストレスや疲労感を強め、健康へ悪影響を与えることが指摘されています。エンゲージメントの向上は従業員の生産性だけでなく、メンタルヘルス対策にも大きく貢献しているのです。
メンタルヘルスとエンゲージメントの繋がり
エンゲージメントが従業員の意欲と生産性に関係することは述べましたが、メンタルヘルスにはどのように関わるのでしょうか。
エンゲージメントの国際的な調査結果によると、日本のエンゲージメント指数は世界139か国の中で132位と先進国の中でもかなり低い順位になています。
日本人に自殺が多いとされるのはメンタルヘルスと関係があり、エンゲージメントの低さがメンタルヘルスに影響していると考えるべきです。
経済省の発表ではエンゲージメントの高い会社では離職率は8%低下し、仕事に対してポジティブな感情を抱きやすく、睡眠の質も良好という結果が出ています。逆にエンゲージメントの低い場合に起こりうるのが「燃え尽き症候群(バーン・アウト)」です。
バーンアウトを聞いたことがある人も多いと思います。仕事が辛くなり、心身共に無気力の状態になってしまうことです。バーンアウトになると無気力だけでなく、疲れ、欠勤の他、うつ状態になってしまうこともある危険な状態です。
またエンゲージメントの高さはストレスの感じにくさにも関係してきます。エンゲージメントの高い状態とは、仕事への興味・関心が強い状態です。興味のあることに取り組む時間は過ぎるのが早く、集中力も高まります。エンゲージメントの低さはストレスとバーンアウトに関係が深いため、従業員のエンゲージメントを高めることがメンタルヘルス対策にも重要となるのです。
仕事へのストレスに関してはストレスチェックでも把握できるので、従業員のストレスと変化には柔軟に対応できるような配慮をしましょう。
従業員のエンゲージメントを高めるには
エンゲージメントを高める前に、まずは従業員のエンゲージメントを知ることが肝心です。エンゲージメントを測る指標には3種類あります。
1.エンゲージメント総合指標
2.エンゲージメントレベル指標
3.エンゲージメントドライバー指標
それぞれについて解説すると、「エンゲージメント総合指標」は会社への満足度や会社を他の人にも勧めたいか、といった質問に答えることで測ることができます。
次に「エンゲージメントレベル指標」は仕事への熱意や没頭、活力などで測る指標です。そして「エンゲージメントドライバー指標」は人間関係や職場環境など組織の状態、職務難易度、個人の能力などを指標として測定します。
従業員のエンゲージメントを把握したら、次はエンゲージメントを高める施策が重要です。従業員のエンゲージメントを高めるには次の施策が有効です。
・従業員の価値観を把握する
・マネジメント層を教育する
・タレントマネジメントを活用する
・従業員にオーナーシップを持たせる
・リーダーシップを推奨する
まず1つ目に従業員の価値観は、従業員それぞれの異なる価値観を知り、従業員それぞれが働きやすい環境を整えるために必要です。仕事を一番に考える人もいれば、余暇を大事にしたい人もいるため、それぞれの価値観を把握、尊重することがエンゲージメントを高める効果に繋がります。
2つ目のマネジメント層の教育は、上司を教育し職場環境や部下との人間関係を調整するうえで大切です。コーチングやマネジメントの研修を行い、上司が適切なマネジメントを学ぶことで効果が期待できます。
3つ目のタレントマネジメントは人材の適材適所な配置のことです。個々の能力や特徴、価値観や生きがいを把握し、従業員の才能・資質を最大限発揮できる場を用意することで効果が期待できます。
4つ目の従業員のオーナーシップとは、従業員が単に言われたことをやるだけでなく、自発的にやる気になってもらうことです。つまり従業員それぞれが管理者のようにある程度の権限を持ち、仕事の情報共有、従業員間のコミュニケーションを積極的に測ることでモチベーションを上げる方法です。仕事への責任とやりがいを持たせるために、オーナーシップは重要な施策になります。
最後にリーダーシップの推奨です。仕事はチームで動くことが多く、リーダーシップのある人材は円滑な人間関係と作業効率の向上に貢献します。リーダーシップは単純な業務能力だけでなく、人を率いるカリスマ性などの目に見えない部分もあるため、適切な選抜が必要です。
正しくリーダーシップを発揮できる人材を配置できれば、職場全体のエンゲージメントを高める結果に繋がります。
まとめ
メンタルヘルス対策にエンゲージメントが重要である理由とエンゲージメント高める施策について紹介しました。従業員満足度とはまた異なるエンゲージメントですが、メンタルヘルスだけでなく業務効率にも大きく貢献する要素です。
エンゲージメントの低い職場では、業務効率が低下するだけでなく、従業員のモチベーションが下がり、最悪の場合バーンアウトにも繋がります。ストレスチェックによる従業員のストレスだけでなく、エンゲージメントを把握することも大事にしてください。