メンタルヘルス

2021.11.05

HSPと心の病気

 最近、「HSP」という言葉をよく聞きませんか?ハイリー・センシティブ・パーソンの略で、周囲のできごとへの感受性がきわめて高い人を指します。

これは人のパーソナリティの特徴の一つをとらえた心理学の言葉であり、病気の名前ではありません。「HSPで困っています」と訴えて精神科を受診しても、よく知らない精神科医もたくさんいます。

       

 そもそもHSPとはどのようなことでしょうか?

  

【HSPとは?】

 同じ状況でも人によって感じ方が違います。例えば、ホラー映画を見て何とも感じない人もいれば、怖くてその晩は眠れない人もいます。上司に仕事を褒められて、当たり前のように感じる人もいれば、とてもテンションが上がる人もいます。このように周囲のできごとに鈍感な人から敏感な人までいますが、それをパーソナリティの特徴の一つとして考えることができます。

そして、その感受性のきわめて高いグループをHSPと呼びます。HSPの人は、相手の言葉やしぐさ、さらに物理的な光・音・臭いなどの刺激に敏感で影響を受けやすく、ものごとを深く考える傾向があります。これによってストレスをためて、日常生活に生きづらさを感じやすいと言われています。

          

【日本で大流行のHSP】

 HSPの話題は日本で大流行です。ネット記事や出版物も山ほどあります。HSPで困っている人の日常生活の対処法だけでなく、仕事選び、恋愛関係などのアドバイスまで多岐に渡ります。自己啓発本のような内容や占いに近いものもあります。これだけ流行しているのはなぜでしょうか。その理由として、日本人は民族的にHSPの傾向があるために共感する人が多いからと考えられています。

 そもそも日本人は周囲のできごとに繊細で、他人の目をつよく意識する傾向があります。日本人を観察したアメリカ人は、「恥の文化」と呼びました。

日本人は他人の目が気になり、恥をかかないことに大きな意識を注ぎます。アメリカ人はキリスト教の影響から神の目を気にするので、それほど他人の目を気にしません。HSPは日本人の民族的特徴をとてもよく表現しているのです。それでたくさんの日本人がHSPという考え方に共感しているのです。

【HSPと心の病気】

 HSPと心の病気の関係はどのように考えたら良いのでしょうか。自閉症やアスペルガー障害などの発達障害には感覚過敏という症状があります。音・光・臭いなどの物理的な刺激に敏感に反応してしまうものです。自閉症の人がちょっとした物音でパニックを起こしてしまう映画のシーンが記憶にある人もいるでしょう。

                

これは、脳に入ってくる刺激の情報を制御する能力に欠けているためと考えられています。感覚過敏はHSPとほぼ同じ現象を表したものです。ただし、感覚過敏は生理学的に観察される症状として、HSPは心理学的なパーソナリティの特徴として、同じ現象を違う物差しで測っているので比べることはできません。

 お母さんが「息子がHSPでちょっとした物音でパニックを起こします」と病院に来られることがあります。間違ってはいませんが、正確には感覚過敏でしょう。こういうケースは発達障害の疑いがあります。

【社交不安症とHSP】

 社交不安症という病気は、相手の視線を意識し過ぎて、変に思われていないかと悩んでしまう病気です。重症になると人前に出ることが苦痛になり、子供のひきこもりの大きな原因になっています。以前は対人恐怖と呼ばれていました。他人の視線に敏感であったり、「変に思われている」と考え過ぎてしまうことはHSPと非常に似ています。

社交不安症の人は、ネットにある質問票を答えていくと必ずHSPと診断されてしまうでしょう。SSRIという抗うつ薬が効きやすいので、精神科を受診して治療を受けることをお勧めします。

                

【うつ病とHSP】

 また、うつ病では脳の機能が低下することで、感覚過敏が起きることがあります。光・音・臭いなどの刺激に意識が奪われて、集中ができなくなります。

例えば、テレビの画面に出てくる色々なものが気になってドラマの内容が理解できない、隣や上の階の人の生活音が気になる、道路の車の音が気に障る、音楽がうるさくて聞きたくない、といったものです。よく「うつ病からHSPになった」と訴える方もいますが、これも正確には感覚過敏でしょう。

まとめ

 HSPはネットに掲載されている質問票に答えるだけで簡単に自己診断できてしまいます。これはあくまでもパーソナリティの特徴の一つです。しかし、HSPと思われても、発達障害、社交不安症、うつ病などの精神疾患の可能性があります。こうした病気である場合は、治療や社会的な援助が受けられることがありますので、自分だけで抱え込まずに精神科に相談してみてください。

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