メンタルヘルス

2021.11.17

強迫症とそれに関連する病気

    コロナ予防で常に手洗い消毒をしなくてはなりません。しかし相手は見えないウイルスです。どれだけ洗ったウイルスがいなくなるのか見当がつきません。普通なら適当なところで切り上げて、次のことをするために洗面所を離れますが、それができない人がいます。ウイルスがいつまでも手についているように思えて、手を洗うのを止められないのです。


納得がいくまで数十分も手を洗い続けます。そのために信じられないくらいの水道代がかかります。周りで見かねた人がストップをかけようものなら不安で何も考えられなくなります。

                

             

万が一手を洗わないで食事をしたら、後からコロナが心配で夜も眠られず、PCR検査を受けるまで気が済みません。このように潔癖症の度が過ぎて、仕事や日常生活ができなくなる病気があります。これを強迫神経症とか強迫性障害、最近では強迫症と呼んでいます。

 ここでは強迫症とそれに関連する病気について説明します。

  

【強迫症】

 強迫症とは、自分でも気にしない方が良いと思いつつも、不安にとらわれて、それを払いのけるために確認を続けてしまうものです。とらわれてしまう不安な思いを強迫観念と呼びます。

    

症状がつよいと強迫観念が妄想のようになります。例えば、ウイルス、細菌、発がん物質などが手からとれない不安で、手を洗い続ける。泥棒に入られる不安から、何度も戸締りを確認する。火事になる不安から、火の消し忘れを何度も確認する、などが典型的なものです。

 また、確認行為には心の中で行う呪文のような場合もあります。コンビニに入ると自分が万引きをするのではないかという強迫観念にとらわれ、それを打ち消すために「とっていない」というような呪文を何度も唱える、といった感じです。まるで儀式のように延々と続ける場合もあります。

 次に紹介する病気も強迫症に似たものです。

【その他の病気】

1.醜形恐怖(しゅうけいきょうふ)

 体のどこかが醜いという不安がとれない病気です。顔のある部分が気になり、何度も美容整形を繰り返します。自分の筋肉量が気になり、筋トレを繰り返す人もいます。背が低いことを気にし過ぎて、ホルモン治療を繰り返す人もいます。

             

               

2.心気症(しんきしょう)

 ちょっとした体調の変化を癌ではないか、心臓病ではないか、という不安がとれず、何度も病院で検査を受ける病気です。医師からは異常がない、と言われても納得ができません。もしかすると誤診かも知れないと、別の病院で同じ検査をします。これをドクターショッピングと呼んでいます。

3.ためこみ症

 ごみが貴重なものに思えて捨てられず、拾い集める病気です。テレビのニュースで潰れそうなゴミ屋敷が紹介されることがありますが、床が抜けても、自分が寝るスペースがなくなってもゴミを捨てられません。家主が一見普通の人のようですが、集めたごみを見ながら「全部大事なものだ」と言い張ります。これはためこみ症という病気なのです。

           

4.抜毛症、皮膚むしり症

 イライラや不安から髪の毛を抜いたり、顔や腕の皮膚をかきむしる病気です。自傷行為に分類されることもあります。

5.アルコールや薬物の依存症

 強迫症の人はアルコールや薬物の依存症になりやすい傾向があります。アルコールや薬で気分が良くなったことが頭から離れなくなり、それが悪いことであると分かっていても止められなくなってしまいます。

            

【神経症とかノイローゼという言葉は使わなくなった】

 ところで、これらの病気に対して神経症とかノイローゼという名前の方が馴染みある人が多いと思います。しかし、精神医学において、神経症やノイローゼという言葉は20年くらい前から使われなくなっています。

 神経症とは幼児期の心の葛藤が症状となって現れるものと考えられ、20世紀初めにフロイトによって名付けられたものです。精神分析治療により、無意識に隠れてしまった心の葛藤を処理することによって治っていくと考えられました。

            

 しかし、神経症の症状は動物にも観察され、抗うつ薬で改善されることも分かり、神経症は脳神経の働きの異常と考えられようになりました。これによって神経症は公式な病名からは消えてしまいました。現在の精神医学において、強迫症の原因は、脳のセロトニン分泌の低下と考えられており、うつ病に近い病気と考えられています。そのためうつ病と強迫症が合併することが大変多くあります。

【軽症の強迫症の治療法】

 軽症の強迫症の場合は、森田療法、認知行動療法、マインドフルネスなどの心理療法に効果があります。どれも心に浮かぶ不安に巻き込まれず、それを客観的に捉えて、気にしなくするテクニックです。これらの治療の方法は、仏教の「あるがまま」という人生観にヒントを得ています。

【重症の強迫症の治療法】

 日常生活に支障がでるほどの症状ならば、薬物治療を受ける方が良いでしょう。治療には、脳のセロトニンを増やすレクサプロやジェイゾロフトなどのSSRIが使われています。強迫観念が妄想と区別がつけられないような重症の場合は抗精神病薬も処方されることがあります。

                            

【子供でも多い強迫症】

強迫症は、子供に多く、発達障害でも見られます。手洗いをずっと続ける子供を叱ったり、力づくで無理にやめさせても逆効果です。まず子供の不安の原因を取り除いてあげることが先決です。コロナや汚れを必要以上に心配しているならば、そんなに怖いものではないことを教えてあげましょう。あまり重症の場合は子供でも薬の治療が必要になります。

 今回は強迫症とそれに関連する病気について説明しました。薬で治療が可能な病気ですので、自分だけで抱え込まずに早めに精神科に相談してみてください。

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