メンタルヘルス

2022年03月

2022.03.23

うつ病の間違った知識

 「風邪の予防にビタミンCが効く」というのは私たちの常識になっています。寒い季節になると、ビタミンC入りのドリンク剤を飲む人も多いですし、ビタミンCがたくさん含まれたミカンも人気です。

 ビタミンCが風邪の予防になるというのは、1970年にノーベル賞学者が書いた論文から世界中に広まりました。その後もビタミンCと風邪の研究は続けられましたが、効くというデータもあれば、効かないというデータも出てきました。そこで2012年にすべての研究データを総合的に解析する試みがありました。

 すると驚いたことに、ビタミンCには風邪予防の効果が認められないという結果がでたのです。およそ半世紀にわたり、私たちは間違った知識に振り回されてきたのです。

 医学の知識は、時代と共に変わるものがあります。うつ病もそれに漏れません。ここではうつ病に関して、すでに世の中に広まっているけれども、実は間違っている情報を4つ紹介しましょう。

  

うつ病の間違った知識

1. うつ病は心の風邪

 「うつ病は心の風邪」というのは、2000年前後にSSRIという新しい抗うつ薬が販売されるにあたり使われたキャッチコピーです。それまでの抗うつ薬と違って、ほとんど副作用がない画期的な薬でした。

 「心の風邪に、副作用を気にせず気軽に飲める薬」という薬品メーカーの狙いがこのキャッチコピーにあったのです。当時のテレビコマーシャルでも流れて、たくさんの日本人に記憶されることになりました。

 

 日本には、精神科に通うのは「恥ずかしいこと」という風潮がありましたが、この宣伝効果により、精神科へ通う敷居が低くなりました。うつ病で受診する患者さんが増え、社会的にも自殺者が減るという画期的な効果をもたらしました。

 現在では、駅前にも精神科クリニックがたくさんできるようになり、精神科に通うことが不思議でない時代になりましたが、半世紀前には想像もつかなかったことです。

 確かに、うつ病は風邪のように誰でもなる病気です。しかし、風邪のようにすぐには治りません。心の風邪という認識で、1、2週間くらい仕事を休めば治るだろうという誤解も広まってしまいました。しかし実際は、画期的なSSRIという薬ができても、10年以上も治療が必要な人がたくさんいます。うつ病は心の風邪ではありません。

2. 新型うつ病は現代社会のひずみから生まれた

 

 「新型うつ病」という言葉は医学用語ではなく、メディアによる造語です。40年くらい前まで、うつ病は今ほど多い病気ではなく、主に真面目、几帳面、規則を重んじ、他人に気を遣い過ぎる人がなる病気でした。このような性格をメランコリー親和型と呼びました。そして、メランコリー親和型の人がなる場合を定型うつ病、そうでない場合を非定型うつ病と呼んでいました。

 正確な理由は不明ですが、高度情報化社会に移行するに従い、うつ病にかかる人が世界的に増えるようになりました。うつ病はメランコリー親和型の人だけがなるのでなく、誰もがなる病気になったのです。

 うつ病の発症と性格は大きな意味をもたなくなり、定型よりも非定型が増えるようになります。この増えてきた非定型うつ病のことをメディアが「新型うつ病」と名付けました。

 まるで社会のひずみから新型のうつ病が誕生したように報道されましたが、そうではなく、うつ病が誰でもなる病気になり、非定型うつ病が増えたことなのです。

3. うつ病は性格が原因

 うつ病の発症は、メランコリー親和型という性格が基盤になっていると考えられていましたが、今では誰もがなりうる病気と考えられています。

 いくつかの性格的な傾向がストレスを受けやすく、うつ病になりやすくなるのは事実です。特に、完全主義はストレスを対処する上で柔軟性に欠けてしまうため、うつ病を発症しやすくなります。しかし、性格だけでうつ病になるわけではありません。

 うつ病は、性格とストレスなどの心理的な問題、脳の働きなどの生物的な問題、人間関係や経済などの社会的な問題、信仰や死生観などのスピリチュアルな問題が総合的に絡み合って発病します。

 うつ病は性格だけが原因でなるものではありません。ましてや心が弱いからなるものでもありません。

4. うつ病は遺伝する

 うつ病になる遺伝子は見つかっていません。完全主義などのストレスを受けやすい性格は遺伝することがありますが、うつ病は遺伝しません。うつ病の人と結婚しても、うつ病の子どもが生まれると心配する必要はありません。

 また、うつ病の薬を飲んでいても、妊娠する子どもに悪い影響が出ることはほとんどありません。薬の子どもへの影響よりも、高齢出産、喫煙、飲酒の影響の方がはるかに高いと言われています。

2022.03.19

パニック発作が起こりやすい場面

 パニック発作は、突然襲ってくる不安と動悸・呼吸困難の発作です。ピークは10分以内に来て、少しずつおさまっていきます。命に支障はありませんが、重症の場合は死ぬほどの恐怖を感じます。

     

 脳には、偏桃体(へんとうたい)という、危険を感じとる警報器に当たる部分があります。長くストレスを受ける状態が続くと、脳が緊張状態をとけなくなってしまい、偏桃体が異常な反応をするようになります。

些細な刺激で警報を鳴らすようになり、自律神経系を通じてパニック発作が出るようになります。このような脳の緊張状態には、セロトニンという神経伝達物質の分泌が関わっています。

 今回は、パニック発作が出やすい場面を紹介します。パニック発作が続く場合は、パニック障害の可能性があります。慢性化すると発作が出る場面を避けるようになり、生活に大きな支障が出てくるようになります。

さらに、うつ病に移行することもあります。特効薬としてセロトニンの分泌を促すSSRIという薬があるので、早めに精神科を受診しましょう。

  

パニック発作が起こりやすい7つの場面

1.乗り物

 パニック発作が最も出やすい場所は満員電車などの乗り物です。時間調整や事故でドアが閉まったまま長時間停車した場合、特急、飛行機などのすぐに降りられない状況が、発作のスイッチになります。ジェットコースターなどの遊園地のアトラクションや電車を待つ駅の行列で起きる人もいます。タクシーなどの自動車は、すぐに降りられるので比較的大丈夫なのですが、長いトンネルで起こる人もいます。

 発作がでる不安から乗り物に乗られなくなる人もいます。このように発作が出ることを予期して不安になることを、予期不安と呼びます。

2.混んでいる店

 客でごった返しているデパート、スーパーも発作が出やすい場所です。レジの列に並んでいても起きることがあります。せっかくの楽しい買い物が、一転して辛い出来事に変ってしまいます。予期不安から買い物にいけなくなる場合があります。

3.緊張する場面

 試験、試合、発表、会議の緊張から発作が出ます。人生の大事なイベントが台無しになってしまうことがあります。スポーツ選手が試合中に発作を起こして、引退に追い詰められることもあります。舞台に立てなくなって引退した有名な歌手もいます。

4.眠れない時

 脳の緊張状態が続くと、寝つきが悪くなり、眠りが浅くて早朝に目覚めやすくなります。翌日に大事な仕事があるとよけいに緊張して眠れなくなり、不安になります。また、早朝に目覚めて、その後も眠れなくても不安になります。こうした不安がスイッチになり発作が出ます。

5.カフェイン、お酒などの刺激物

 コーヒーなどのカフェインの含まれているものや、お酒の飲み過ぎで発作がでることがあります。どちらも脳に刺激を与えることで発作の原因になります。

 お酒は少量ならば不安を抑える力があるのですが、量が増えてくると逆に発作が出やすい状態になります。発作を抑えるためにお酒を飲む人がいますが、どんどん量が増えるようになり、それが発作を誘発する原因にもなるという悪循環に陥ってしまいます。

 なかなか治らなかったパニック障害が、カフェインやお酒をやめたことで改善に向かうこともあります。

                                        

6.体調の変化

 食べ過ぎなどの満腹感や胸やけが発作のスイッチになることがあります。過激な運動をして呼吸や血圧に変化が起きた時、ケガなどの痛みでも同様なことが起こりいます。どれも脳が体調の変化を危険信号と判断して、発作のスイッチが入ってしまうのです。

7.リラックスしている時

 家でのんびりリラックスや入浴している時に、フッと発作のことを思い出し、それが引き金になって発作が起きてしまうことがあります。精神交互作用といって、人は発作を意識しないように努力すると、よけいに発作が頭から離れなくなります。そのために不安がつよくなり、発作のスイッチが入ってしまうのです。

                

最後に

 パニック障害の治療の初めは、発作が出やすい場面を避けることが必要です。治療する中で、薬を飲んでいれば発作が出ない自身がついてきます。それから少しずつ苦手な乗り物に乗ってみるなど、生活を広げて行きましょう。

ただし、最初は電車ならば各駅から初めて、自信がついたら特急に、という感じで少しずつチャレンジしましょう。成功が自信をさらにつよめてくれます。ただし、しばらく乗り物に乗っていなかったのに、突然飛行機に乗ってみるというような無茶は禁物です。

2022.03.04

統合失調症はいつ治るの?

  統合失調症は、心の中に自分のものでない考えや感情が出入りして、それに振り回されてしまう病気です。まるで心を包んでいる壁がなくなったかのように、他人の思いが飛び込んできたり、自分の思いが他人に伝わってしまいます。

⇒「統合失調症はどんな病気?


 当事者としては、自分の心の壁が壊れているとは気づかず、周囲の何かが勝手に自分の中に侵入してくるのだと感じてしまいます。ですから、自分が病気になったとはなかなか気づけません。

統合失調症になる原因 

 症状は心に起きていますが、統合失調症は脳の働きの病気です。神経伝達物質の分泌の異常が起きて、脳全体が尋常でない覚醒状態になったと考えられています。


 生まれつきの遺伝的な要素がベースにあり、そこに心配事、孤独、虐待やいじめ、過労などのストレスが引き金となって発症します。脳の働きの問題ですから、カウンセリングなどの心理療法は効きにくく、抗精神病薬で脳の異常な覚醒状態を抑えることが治療になります。

統合失調症の治療方法

 抗精神病薬は、神経伝達物質に働きかけて、脳の覚醒状態を改善させます。代表的な物にリスパダール、セロクエル、エビリファイ、ジプレキサなどがあります。発病してすぐに服用すれば、1カ月くらいで脳の活動は正常に戻ります。

 しかし、自分で病気に気付くことができないために、治療を受けるまでに何年と時間が経っていることの方が多いようです。発病から受診までの期間が長いほど、長い期間服用しないと良くなりません。

 

 一度良くなって、薬の治療をやめられても、脳の過敏な状態はその後もかなり長期に続きます。過敏なために再び何かのストレスが引き金になって再発してしまいます。

 例えば、花粉症などのアレルギー反応は、体が記憶してしまうものなので、その後もアレルギーの原因物質に触れるたびに反応が出てしまいます。統合失調症もこれに似ているのです。

 再発を予防するためには、症状が良くなっても薬を飲み続けることが大切です。ストレスで再び覚醒のスイッチが入らないように薬で脳の過敏さを抑えるのです。最低で2年間、1度再発している場合は5年以上服用を続けます。ただし、これは目安であって、発症から受診するまでの期間が長かった場合は、服薬期間はさらに長くなります。

統合失調症は再発が多い

 統計によると、最初の2年間の服薬で良くなって、その後は治療しないで済む人は全体の20%にすぎません。残りの80%の人は再発してしまい、10年、20年、30年と長く薬を飲み続ける人がたくさんいます。脳の過剰な状態は、一度記憶されてしまうと、ほぼ生涯にわたって続いてしまう可能性もあるのです。

抗精神病薬の長期服用について

 抗精神病薬は、長期に服用しても健康を害するものではありません。ただし、体重が増えることがあるので、それによる糖尿病や高脂血症には注意が必要です。食事と運動を意識して生活しましょう。

 

 また、薬がホルモンに働きかけることもあり、女性は生理不順になる場合もあります。薬による不都合にはすべて対処方法があるので、主治医とよく相談しましょう。

再発の原因

 再発で一番多いのは、薬を飲むのを自分の判断でやめてしまうことです。これを自己断薬と呼んでいます。理由は様々で、毎月の通院がめんどうになる人もいれば、体重が増えるのが嫌でやめてしまう人もいます。中には、「いつまでも薬に頼ってないで働きなさい」という家族や友人の言葉でやめてしまう人もいます。

 色々な理由はありますが、背景に共通してあるのが病気であることへの劣等感です。精神科に通院して薬を飲むことを「人生の負け組」と思ってしまうのです。

 最後に

 統合失調症は「怠け病」ではありません。努力が足りないなどの気持ちの問題ではなく、脳の働きの問題なのです。運悪くこのような病気になってしまいましたが、薬を飲んで症状を抑えて生活することができるならば、それで治ったと考えても良いのではないでしょうか。

 薬を飲まない頃の昔の自分に戻る必要はありません。薬を飲みながら、新しい価値観を持ち生きていきましょう。病気のハンディを背負いながらも生きていくことはとても立派なことです。健康で何をやってもうまくいく人よりも、人生を何倍も頑張って生きています。

2022.03.02

うつ病の最低限知っておくべき知識

 

 うつ病は、世界で3億人がかかっていると言われ、WHOは2030年までに最も重要な病気になると警告を発しています。敵を倒すにはまず敵を知ることが大切です。

 今回は、うつ病で最低限知っておくべき知識を6つにまとめました。

うつ病で知っておくべき6つの知識

1.うつ病は生きるエネルギーが枯れた状態

 うつ病を簡単に言うと、生きるエネルギーが枯れてしまった状態です。土日や連休に短期間休んだだけでは改善されないので、単なる疲労とは違います。

 具体的な症状は、気持ちの落ち込み、不安感、意欲の低下などがあります。身体の症状が多いのも特徴です。頭痛、肩こり、腰痛、胃腸障害、動悸、息苦しさなどの身体の症状が目立つ場合もあります。

 うつ病は血液検査やCT、MRIなどの検査では異常がでません。質問形式の心理検査がありますが、病院での診断は医師が問診で行います。

2.ストレスや過労などが引き金で起きるが、原因は脳の働きの低下

 うつ病になるきっかけは様々です。職場の人間関係や学校のいじめなどの心理的なこと、働きすぎのような物理的なこと、出産や更年期などの生物的なことなど、引き金はたくさんあります。

 これらによって脳神経のセロトニンという神経伝達物質の分泌が低下して、脳の機能が低下することで発病します。うつ病の正体は脳の働きが低下していることです。決して「怠けている」「頑張っていない」といった気持ちの問題ではありません。

3. 効果が認められているのは薬と休養

 うつ病の治療は、脳のセロトニン分泌を正常化させることです。そのために睡眠薬や安定剤で睡眠や食欲を回復させて、自然にセロトニン分泌が回復するのを後押しします。

 それでも回復できない場合は直接セロトニン分泌を促す抗うつ薬を使います。薬の力で脳の状態を正常化させることにより、自然の力による回復を後押しして、最終的には薬なしでも正常なセロトニンの分泌ができるように導きます。

 

 うつ病の治療で確実な効果が認められているのは、服薬と休養です。また、休養中は夜更かしをしないで規則正しい生活をしましょう。少しずつ回復してくるので、家事から始めて、やって楽しめることを中心にチャレンジしてみましょう。軽い運動もお勧めです。

 

 認知療法などのカウンセリング、磁気治療、サプリメントなども効果があると言われていますが、効果は人によって差があるので、補助的なものと考えてください。

 良くなってからも、1年間が最も再発しやすいので、しばらく無理は禁物です。

4. 抗うつ薬を10年以上服薬する人もたくさんいる

 抗うつ薬を飲むと70%の人が回復し、2カ月から1年くらいで本来の生活に戻ることができます。ただし、引き金となった元の仕事や学業に戻ると、ほぼ半分の人は再発してしまいます。

 無理をしないと生きていけない時代です。うつ病が完全に治るまでのんびりできるような経済的に余裕のある人はいません。そのために薬を長期間にわたり飲む必要性があります。

 うつ病の30%くらいの人が、抗うつ薬を10年以上服用します。抗うつ薬は血圧の薬などと同じように長期に飲めるものです。世に出てすでに70年たちますが、長期服用で大きな問題が出たことはありません。

 良くなれば薬は自然にやめられるものなので、自分の都合でやめようとしない方が良いでしょう。難しい手術やリハビリをしないでも、数粒の薬を飲むだけで問題が解決するならばそれで良しと考えましょう。

 薬を飲まないで元気だった昔に戻る必要はありません。健康でなんでもできる人生よりも、ハンディを背負っても頑張っている方が立派な人生だと思います。新しい価値観で生きていきましょう。

 女性の場合、最近の抗うつ薬は胎児への影響がほとんどなく、服用しながら子どもを作ることができます。むしろ服用をやめて、うつ状態のまま妊娠する方が胎児に悪い影響を与えます。ただし、母乳に薬が混じるので、赤ちゃんに母乳は飲ませない方が良いこともあります。

5. 難治性の場合は、双極性障害の可能性がある

 抗うつ薬を飲んでも良くならず、むしろ変に気分が高揚して、その後にさらに辛いうつ状態がくる人がいます。これは双極性障害の可能性があります。

 主治医は抗うつ薬から気分安定薬に変更して処方してくれますが、残念ながら双極性障害はなかなか良くならない病気です。

 また、難治性のうつ病に心理的な影響が関わっている場合もあります。孤独、お金の心配、将来の心配、家族が治療に協力してくれない、などがうつ病の回復を遅らせてしまいます。

6. 公的な援助を利用する

 うつ病は、中等度以上になると、これまでやってきた仕事ができなくなります。そこで問題になるのがお金のことです。お金の心配をできるだけ減らせるように、うつ病には公的な支援があります。

 主治医に診断書を書いてもらい役所に提出すると、自立支援医療が利用できます。これにより治療費が1/3になります。同時に障害手帳を作成すると、公的な乗り物や施設の割引、公営住宅の優先入居、スマホ基本料金の割引、障害者雇用の申請、税金の控除などを受けられます。

 また、休職中は健康保険を通じて給料の2/3の傷病手当金を受け取ることが出来ます。休職が続く限り、1年半にわたって受け取ることができます。さらに長期に回復しない場合は、障害雇用や障害年金を利用することもできます。

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