うつ病の10の種類

 一言でうつ病と言いますが、実際にはいくつかの種類があります。治療が短期間で終わる人、ずっと通院しなくてはならない人、入院が必要な人など、うつ病の人がみな同じ経過をたどるわけではありません。これはうつ病に種類があり、それぞれに症状や経過に違いがあるためです。

今回はうつ病の10の種類について詳しく解説していきます。

 

うつ病の10の種類

 

1. 定型うつ病・メランコリア型うつ病

うつ病に関する記録は遥か昔の2000年前からあります。何があっても心は晴れず、常に絶望感を抱えて、周りに迷惑をかけていると自分を責める状態です。早朝に目覚め、うつ気分は朝にひどく、食欲がなくなり体重が減るという特徴もあります。これがうつ病の基本的なタイプとして考えられ、現在では「定型うつ病」・「メランコリア型うつ病」と呼ばれています。責任感がつよく、生真面目で几帳面な性格の人がなりやすいというのも特徴です。

 

2. 非定型うつ病

以前からメランコリア型でないうつ病もあることが知られていましたが、定型でないので、「非定型うつ病」と呼んでいました。特徴としては、仕事などの嫌なことではうつになり、好きなことでは症状が軽くなります。睡眠時間は長くなり、食欲が増えて過食になる人もいます。周りからは甘えているとか怠けていると誤解されやすい状態です。2030才代の若い人に多く、性格の特徴はありません。

原因はよく分かっていませんが、非定型うつ病は30年くらい前から世界的に急激に増えました。そのために一時は「新型うつ病」と呼ばれた時期もありましたが、決して新型が現れたのではなく、これまで少なかったタイプが増えただけの現象です。その後も非定型うつ病は増え続け、現在ではメランコリア型と非定型では同じくらいになっています。

実は、非定型と診断されながら後からメランコリア型に変わるケースもあるので、メランコリア型と非定型では完全な区別がつけられないことがあります。

 

 

 

3. 慢性うつ病・持続性抑うつ症

慢性うつ病とは、軽いうつ状態が2年以上続くうつ病です。日常生活はふつうに送れているものの、「なんとなくずっと辛い」、「人生に希望が持てない」といった慢性的な気分の落ち込みが続きます。「いつも機嫌が悪い人」という意味で「気分変調症」という呼び方もあります。本人としても「性格の問題」と感じていることがあり、受診や治療が遅れる傾向があります。

うつ病は適切な治療を行えば、数カ月から1年くらいで良くなるのですが、治療をしても気分の悪い状態が改善されず、長く服薬する人もいます。これが2年以上続いている人も慢性うつ病と呼びます。

 

4. 精神病性うつ病

精神病性うつ病は、幻覚や妄想などの精神病の症状が加わるうつ病です。例えば、「自分は存在してはいけない人間だ」、「悪い噂を流されている」という極端な訴えがあります。抗うつ薬だけでなく、精神病の薬が必要であり、入院治療や通電治療が行われることもあります。難治性になりやすいタイプです。

 

5. 季節性うつ病

季節性うつ病は、季節の変化、特に秋から冬にかけて日照時間が減ることで症状が重くなるうつ病です。季節で脳内のセロトニンやメラトニンのバランスが崩れることが原因とされ、眠気や過食、ずっと寝込んでしまうことが症状です。春になると自然に回復することも多いため、見過ごされがちですが、毎年繰り返すことで生活の質に大きな影響を及ぼします。

 また、夏にだけうつ症状が現れる場合は夏季うつ病です。これは男性に多く、夏バテのような症状が現れます。

 

6. 月経前不快気分症・PSDD

 月経の1週間くらい前から体調を崩す女性がいますが、生活に大きな支障が出るくらいのうつ気分・不安感・頭痛が始まり、情緒不安定で怒りっぽくなる場合を「月経前不快気分症」、略して「PMDD」と呼びます。月経の周期が終わると症状は軽くなります。

毎月周期的に症状が出る女性のうつ病と考えたらよいでしょう。

 

 

 

7.  産後うつ病

子供を産んで「悲しくて涙が出る」というのは不思議に聞こえますが、出産後の女性の20%はうつ気分を経験します。ほとんどは自然に治るのですが、2週間以上たっても改善されない場合は「産後うつ病」です。ホルモンバランスの急激な変化、睡眠不足、子育ての不安などが原因と考えられています。

産まれた赤ちゃんをかわいいと思えず、「何で産んだのだろう」と後悔ばかりして、涙が止まりません。病状は長引くことが多く、早い段階での治療と家族の理解が必要な病気です。

 

 

. 子どものうつ病と重篤気分調節症

小学生くらいの子供にもうつ病があり、うつ病は大人に限った病気ではありません。子どもは感情をうまく表現できないことが多く、症状は「朝が起きられない」、「頭痛や腹痛」などの体調不調で現れます。「学校の成績が下がる」、「友人とのトラブル」といった行動の問題も起こるでしょう。親や先生からしたら、嫌なことから逃げたり、怠けたりしているだけのように見えるので、誤解しないように要注意です。親や先生が早めに気づいてあげることが、治療の鍵となります。

小学生から思春期にかけて、いつも不機嫌でイライラして、何かあるとすぐに怒る子供は、「重篤気分調節症」といううつ病が考えられます。家族や学校のクラスメートとの関係がうまく行かず、暴力をふるうなどの問題行動を起こすこともあります。「ぐれている」、「家庭環境が悪い」と思われやすいのですが、自分の感情をコントロールするのが難しいうつ病の一つです。

 

9. 高齢者うつ

人は年を重ねるに従い、健康問題、孤独感、喪失感、生活の質の低下などが起こり、それに伴いうつ病も起こりやすくなります。高齢者のうつ病は、「体が痛い」、「疲れやすい」、「食欲がない」といったような体の症状が多く見られるため、気分の落ち込みがあることに気づけないことが多いようです。覇気がなくなり、物忘れの症状もあるので認知症と間違えられやすい状態でもあります。

 

1. 医薬品誘発性抑うつ症

特定の薬の副作用で、気分の落ち込みや意欲の低下、不安感などが現れることがあります。これを医薬品誘発性抑うつ症と呼びます。特定の薬と言ってもすべての人に副作用が出るわけではありませんが、高血圧の薬、不整脈の薬、糖尿病の薬、ホルモン治療薬、ステロイド、抗ウイルス薬などからうつ症状が出ることが報告されています。

薬によって脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることが原因と考えられており、新しい薬を飲んでから気分が晴れないようならば、疑ってみることも必要です。薬を減量・中止することで改善しますが、自己判断は危険ですので、必ず、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。

 

 

 

最後に

 

以上、うつ病の10の種類について解説しました。

 

一言でうつ病と言っても、たくさんの種類があることを知っていただけたかと思います。

同じように、一言で風邪と言っても、原因によってコロナウイルス、インフルエンザなどのウイルスによる風邪、マイコプラズマなどの細菌による風邪など、たくさんの種類があるのと似ています。うつ病も種類によって治療や経過は異なるので、今回の動画が今後の治療や療養のヒントになることを願っています。