目次
健康経営優良法人とは?制度の概要
健康経営優良法人とは、従業員の健康管理を経営的な視点でとらえ、戦略的に健康増進施策を実践している企業・法人を顕彰する国の認定制度です。経済産業省が推進し、日本健康会議が認定主体となって2016年(平成28年)度から運用されています。
「地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を『見える化』することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的とした顕彰制度」(経済産業省より)
企業が従業員の健康づくりに投資することを「コスト」ではなく「投資(ヘルスインベストメント)」とみなし、生産性向上・離職率低下・企業ブランド向上など経営的なリターンを得る考え方が「健康経営」の本質です。健康経営優良法人は、この取り組みを第三者が客観的に評価する仕組みとして機能しています。
2025年3月10日に発表された「健康経営優良法人2025」(第9回)では、大規模法人部門に3,400法人、中小規模法人部門に19,796法人が認定され、前年(大規模2,988法人・中小16,733法人)から両部門ともに大幅な増加を記録しました。制度開始以来、申請数・認定数は一貫して右肩上がりで増え続けています。
SECTION 02なぜ今「健康経営」が注目されるのか
少子高齢化・労働力不足が深刻化する日本社会において、従業員一人ひとりの健康と生産性を高めることは、企業の競争力に直結する経営課題となっています。また、近年はESG投資の文脈でも「S(社会)」の観点から従業員の健康・安全への取り組みが評価されるようになり、健康経営は投資家・金融機関からも注目を集めています。
こうした背景から、政府は健康経営を「日本経済社会を支える基盤」と位置づけ、認定制度を通じた普及促進に取り組んでいます。
SECTION 03大規模法人部門と中小規模法人部門の違い
健康経営優良法人認定制度は、企業の規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つの部門が設けられています。どちらの部門に該当するかは、従業員数または資本金・出資金額の基準によって判定されます。
| 区分 | 大規模法人部門 | 中小規模法人部門 |
|---|---|---|
| 対象企業規模 | 中小企業基本法に定める中小企業の範囲を超える法人 | 中小企業基本法に定める中小企業に該当する法人 |
| 申請方式 | 健康経営度調査票への回答 | 健康経営優良法人認定申請書の提出 |
| 前提条件 | 特になし(健康経営度調査への回答) | 保険者が実施する「健康宣言事業」への参加 |
| 上位称号 | ホワイト500(上位500法人) | ブライト500(上位500法人) ネクストブライト1000(501〜1,500位) |
| 申請料(2025年) | 88,000円(税込) | 部門・規模による(要確認) |
| 2025年認定数 | 3,400法人 | 19,796法人 |
中小規模法人部門では、申請前に加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合連合会・国保組合等)が実施する「健康宣言事業」へ参加していることが前提条件となる点に注意が必要です。
SECTION 04ホワイト500・ブライト500・ネクストブライト1000とは
健康経営優良法人の中でも特に優れた取り組みを評価・表彰するため、各部門に「上位称号」が設けられています。
健康経営銘柄との違い
「健康経営銘柄」は、経済産業省と東京証券取引所が共同で上場企業を対象に選定するもので、健康経営優良法人認定とは別の顕彰制度です。2025年度には53社が健康経営銘柄に選定されました。健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定企業の中から、さらに優れた取り組みをしている上場企業が投資家向けに紹介される仕組みで、ESG・SRI投資の文脈でも注目度が高まっています。
健康経営優良法人2025では、中小規模法人部門においてブライト500とその他認定法人の間に「ネクストブライト1000」(501〜1,500位)が新たに設けられました。より多くの中小企業が段階的に高いレベルを目指せる仕組みとなっています。
SECTION 05認定基準・評価項目(5つの大項目)
健康経営優良法人の認定基準は、大規模・中小規模ともに共通の5つの大項目で構成されています。ただし、各項目の評価指標や必須要件は部門によって異なり、また毎年の審査で見直しが行われます。
2025年の主な変更ポイント
近年の審査では「制度・施策実行」(どんな施策を実施したか)の配点比率が下がり、代わりに「経営理念・方針(健康経営の戦略・発信・普及)」と「評価・改善(取組の効果検証)」の比重が高まっています。単に施策を列挙するだけでなく、経営の関与と成果の可視化・開示が問われる時代になっています。
2025年度(健康経営優良法人2025)の主な変更点としては、大規模法人部門においてPHR(Personal Health Record=個人の健診情報・ライフログ等)活用や非正社員への健康施策、仕事と介護の両立支援に関する設問が追加・強化されました。中小規模法人部門では小規模法人特例の試験的導入もあり、従業員が少ない法人でも参入しやすくなっています。
SECTION 06申請方法とスケジュール
健康経営優良法人の申請は、経済産業省補助事業者が運営するポータルサイト「ACTION!健康経営」を通じて行います。部門によって手続きが異なるため、それぞれのフローを確認しましょう。
大規模法人部門の申請フロー
「ACTION!健康経営」でIDを取得
初回申請の場合は、申請期間前にIDを取得する必要があります。
健康経営度調査票のダウンロードと回答
ポータルサイトから調査票をダウンロードし、自社の取り組み状況を記載してアップロードします。
認定申請料の支払い
申請後の11月頃に請求書が送付されます。大規模法人部門は88,000円(税込)。
フィードバックシート(速報版)の受領
12月頃に速報版のフィードバックシートが届き、自社の評価順位や偏差値が確認できます。
内定・正式認定の発表
翌年2月に内定、3月に正式発表。認定法人はロゴマークを使用できるようになります。
中小規模法人部門の申請フロー
保険者の「健康宣言事業」へ参加
加入している協会けんぽ・健康保険組合等が実施する健康宣言事業への参加が必須の前提条件です。
「ACTION!健康経営」で申請書をダウンロード・提出
認定申請書に取り組み状況を記載し、ポータルサイトへアップロードします。
審査・結果通知
申請後に審査が進められ、翌年3月頃に結果発表。ブライト500・ネクストブライト1000に選ばれた法人にはフィードバックシートが送付されます。
| 時期 | 大規模法人部門 | 中小規模法人部門 |
|---|---|---|
| 8〜10月 | 健康経営度調査の回答・申請 | 認定申請書の提出 |
| 11月 | 認定申請料の請求・支払い | 認定申請料の請求・支払い |
| 12月 | フィードバックシート(速報版)送付 | — |
| 翌年2月 | 内定通知 | 内定通知 |
| 翌年3月 | 正式認定・発表・ロゴ使用可 | 正式認定・発表・ロゴ使用可 |
健康経営優良法人2026の大規模法人部門申請は2025年8月18日〜10月10日に受付が行われました。中小規模法人部門も同時期に受付が実施されています。次の申請機会(健康経営優良法人2027)に向けて、今から体制を整えておくことが重要です。
SECTION 07認定されるメリット
健康経営優良法人に認定されることで、企業は多岐にわたるメリットを享受できます。主な効果は以下の通りです。
SECTION 08認定取得のポイントと注意点
「認定取得」を目的にしない
最も重要な注意点として、健康経営優良法人の認定は「自社の健康経営が適切に進められているかを示す指標」であり、認定取得自体が最終目標になってはならない点があります。健康経営に正しく取り組んでいれば、認定は自ずとついてくる結果として捉えるべきです。認定のためだけに形式的に施策を実施するようでは、従業員への実質的なメリットもなく、長期的な継続も難しくなります。
経営トップのコミットメントが不可欠
近年の評価項目の見直しでは、経営層の関与度に関する配点が高まっています。社長・役員が健康経営の方針を明示し、社内外に積極的に発信していることが求められます。担当部署(人事・総務)だけが動くのではなく、トップダウンで推進する体制の構築が高スコアにつながります。
PDCAサイクルと成果の可視化
「施策を実施したかどうか」だけでなく、「施策の効果を測定・検証・改善しているか」が問われるようになっています。健康診断の結果、ストレスチェックのデータ、プレゼンティーズムの指標など、定量データを活用したPDCAが評価のポイントです。
保険者との連携(コラボヘルス)を活用する
健保組合・協会けんぽ等の保険者との連携(コラボヘルス)は、特に中小規模法人部門で前提条件にもなる重要な要素です。保険者が持つ健診データや保健指導のリソースを積極的に活用することで、コストを抑えつつ取り組みを充実させることができます。
SECTION 09よくある質問(FAQ)
SECTION 10まとめ
健康経営優良法人認定制度は、従業員の健康を経営戦略として位置づける企業を国が認定・顕彰する仕組みです。2025年には大規模・中小規模を合わせて約2.3万法人が認定されており、毎年認定数は増加し続けています。
この記事のポイントまとめ
- 健康経営優良法人は、経済産業省推進・日本健康会議認定の顕彰制度(2016年開始)
- 「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2部門があり、規模で分類される
- 大規模の上位500社はホワイト500、中小の上位500社はブライト500の称号が付与される
- 2025年度から中小部門に「ネクストブライト1000」(501〜1,500位)が新設
- 認定基準は「経営理念・組織体制・施策実行・評価改善・法令遵守」の5項目
- 近年は「経営トップの関与」と「成果の可視化・効果検証」の比重が増している
- 申請は毎年8〜10月が期間で、翌年3月に認定発表
- 採用力強化・ESG評価・金融インセンティブなど多様なメリットあり
- 認定取得を「目的」にせず、真の健康経営を推進した結果として位置づけることが大切
健康経営優良法人の認定取得は、企業にとって対外的な信頼性向上にとどまらず、社内の健康文化醸成・離職率低下・生産性向上という実質的な経営改善効果をもたらします。まだ取り組みを始めていない企業は、まず保険者の健康宣言事業への参加や、社内の健康推進体制の整備から着手することをお勧めします。
最新の認定要件・申請書類については、経済産業省補助事業者が運営する公式ポータルサイト「ACTION!健康経営(https://kenko-keiei.jp/)」で随時更新される情報を確認してください。
