建設会社の離職を減らす方法

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「採用できたと思ったら、すぐ辞めてしまった」「若手が全然集まらない」──建設会社の経営者・人事担当者にとって、人材確保は今や経営の最重要課題のひとつです。

ただし、建設業の人材問題を語るうえで、まず正直に向き合わなければならない現実があります。下請け構造による利益の圧迫、材料費・エネルギーコストの高騰、3K(きつい・汚い・危険)イメージによる若手離れ──これらは一朝一夕に解決できる問題ではありません。甘い対策ではどうにもならない、構造的な難しさがあります。





それでも、できることはあります。ITAIの活用でコストを削減し、SNSを駆使した採用戦略で若手へのリーチを強化し、職場環境・メンタルヘルス・コミュニケーションの改善によって「入った人を辞めさせない」仕組みをつくる。1人採用することがどれだけ難しいか、だからこそその1人に長く働き続けてもらうことが、今の建設業において何より大切なのです。

本記事では、建設業が抱える構造的な課題を正面から認めながら、現実的にできる離職対策を体系的に解説します。

 


 

目次

1. 建設業の離職率の現状と構造的な課題

1-1. 数字で見る建設業の離職実態

厚生労働省の令和3年雇用動向調査によると、建設業全体の離職率は9.3%で全産業平均(12.9%)を下回っています。一見低く見えますが、これはそもそも業界への新規入職者自体が少なく、分母が増えないためです。問題の本質は若手の早期離職にあります。

 

区分

建設業

全産業平均

高卒・就職後3年以内の離職率

42.7%

35.9%

大卒・就職後3年以内の離職率

28.0%

31.2%

29歳以下の就業者割合

12%

16%

55歳以上の就業者割合

37%

30%

出典:厚生労働省 雇用動向調査・学歴別就職後3年以内離職率の推移、日本建設業連合会「建設業ハンドブック2024」、国土交通省報告(全産業の年齢割合は同資料グラフより推計)

1-2. 建設業特有の「変えにくい構造」を直視する

建設業の人材問題の難しさは、個社の努力だけでは解決しにくい構造的な要因が重なっている点にあります。

  • 下請け構造による利益の圧迫:元請け・下請け・孫請けの多層構造により、末端の現場会社ほど利益が薄くなりやすく、賃上げの原資が限られます
  • 材料費・燃料費の高騰:資材や重機の稼働コストが上昇し続けており、現場の収益を直撃しています
  • 若手のイメージ問題:「3K」「体育会系」というマイナスイメージが根強く、特にオフィスワーク志向の若者層が建設業を選びにくい構造が続いています
  • 工期の不規則性:天候による工程変更、納期プレッシャーは業界の宿命とも言えます

 

【重要な認識】これらの問題を「まずすべて解決してから」動き出すのではなく、今すぐできることから始めます。

IT・AI活用、採用戦略の見直し、職場環境改善、メンタルヘルス対策──これらを組み合わせて

1人でも多く、1日でも長く働き続けてもらう」環境をつくることが、今の建設業に求められています。

 

1-3. AIの普及が現場賃金を底上げする可能性

明るい見通しもあります。AI・ロボティクスの普及により、建設現場の生産性は今後大幅に向上する見込みがあります。ドローンによる測量、AIを活用した工程管理・品質検査、建設ロボットによる作業補助などが実用化されることで、人間がやるべき仕事の付加価値は高まり、賃金水準の上昇につながると見られています。

ITAIを早期に導入し、コスト削減と生産性向上を実現した会社が利益を確保し、その利益を社員の待遇改善に回すというサイクルを作ることが、これからの建設会社の競争優位につながります。

 

2. 建設会社から人が離れる主な原因

長時間労働・休日の少なさ

建設業の年間総実労働時間はかつて全産業平均より年間300時間以上多い状況が続いてきました。天候による休日出勤の発生、工期の逼迫による残業常態化が、若手の消耗と離職の大きな引き金になっています。

賃金水準とキャリアの不透明さ

「体はきつい、でも賃金がそれに見合わない」という不満は入職直後の若手に特に強く現れます。昇進・昇格の基準が曖昧で、将来のキャリアが描けない職場からは人が離れます。

採用時のミスマッチ

求人票と実態のギャップが大きいほど早期離職のリスクは上がります。「聞いていた話と違う」という入社後の失望が、3か月以内の離職につながるケースが多く見られます。

職場の人間関係・世代間ギャップ

55歳以上が約36%を占める建設業では、若手と上の世代との価値観のズレが起きやすい環境にあります。悩みを相談できる相手がいない孤立感や、評価されない閉塞感が離職を招きます。

メンタルヘルス不調

長時間労働、高いプレッシャー、孤立した現場環境が重なると、うつ病適応障害・燃え尽き症候群のリスクが高まります。メンタル不調が深刻化する前に支援が受けられないと、休職から離職へとつながります。

 

3. 1人採用の重み」──定着こそが最大の採用戦略

建設業で1名の中途採用を実現するために必要なコストは、求人広告費・紹介手数料・面接対応工数などを含めると、平均80150万円程度かかるとも言われています。さらに、採用後のOJT・研修・現場慣れまでの期間を含めると、「戦力として機能するまで」に数百万円の投資が発生します。

その社員が23年で辞めてしまったとしたら──また同じコストをかけて採用し直すサイクルが繰り返されます。建設業において今、採用は極めて難しい。だからこそ、「採用した1人をどれだけ長く働き続けてもらえるか」が、採用活動そのものよりも重要な経営課題です。

【メッセージ】

離職率を1%下げることは、新たに1名採用することよりもはるかに低コストで達成できます。

定着支援は「福祉」ではなく、「経営投資」です。

 

4. ITAIの活用でコスト削減と業務改善を実現する

構造的な利益圧迫に対して建設会社が取れる現実的な一手が、ITAIの活用によるコスト削減と生産性向上です。業務効率が上がれば残業が減り、人件費の無駄が減り、利益が残る。その利益を待遇改善に回す好循環を生み出すことができます。

4-1. 施工管理のデジタル化

施工管理アプリの導入:現場の進捗・安全管理・図面共有をスマートフォンで一元化。事務所と現場の往復移動を削減し、管理業務の残業を大幅に減らせます。「週次報告を手書きで作っていた時間が半分以下になった」という声も多く聞かれます。

BIM/CIM(建設情報モデリング):3Dモデルを活用した設計・施工管理により、手戻りや変更工事のコストを削減。工期の短縮にも直結します。

ドローン測量・AI点検:測量・検査作業を大幅に効率化。従来なら数日かかっていた測量が半日以下で完了するケースもあります。人員コストと時間を同時に削減できます。

4-2. バックオフィスのIT

勤怠・工数管理システム:残業時間の「見える化」により、長時間労働の問題箇所を早期に特定。労働基準法・36協定への対応にも不可欠です。

電子帳票・クラウド共有:紙の書類・FAXによる情報共有をデジタル化することで、事務作業の負担を軽減。若手社員が「なんでこんなアナログなの?」と感じる不満の解消にもつながります。

AIによる原価管理・利益予測:AIツールを活用した原価計算・利益シミュレーションにより、案件ごとの採算を精緻に把握。利益の出る仕事に集中する経営判断を後押しします。

4-3. IT化が賃金向上につながる仕組み

ITAIによって生産性が1020%向上すれば、同じ売上でも人員あたりの利益が増えます。その余力を社員の給与・賞与に反映させることで、「頑張れば報われる」という実感が生まれ、定着率の向上につながります。建設業においてIT投資は「コスト」ではなく「賃金原資を生む仕組み」として位置づけることが重要です。

 

5. SNS・デジタル採用で若手へのリーチを強化する

「若手が建設業を選ばない」という課題に対して、求人広告だけに頼る採用戦略は限界があります。今の20代・30代はInstagramTikTokYouTubeX(旧Twitter)で情報収集し、企業の「リアル」を見て就職先を判断します。

5-1. SNSを活用した採用ブランディング

InstagramTikTok現場の「格好いい」姿、完成した構造物の達成感、社員の笑顔を発信。「建設の仕事ってこういう仕事なんだ」というリアルなイメージを伝えることで、3K偏見を払拭できます。「現場系TikToker」として数万フォロワーを集めた建設会社の事例もあります。

YouTube現場見学動画・社員インタビュー・一日の仕事の流れを動画で発信。採用候補者が「入社後のイメージ」を持てるようになり、ミスマッチによる早期離職の防止にもつながります。

X(旧Twitter)・LinkedIn経営者・現場監督個人が発信することで、会社の「人間味」が伝わります。社長が現場から日常をつぶやくアカウントで若手からの問い合わせが増えた事例もあります。

5-2. 採用ミスマッチを防ぐリアルな情報開示

SNSでの発信は「きれいな部分だけ」を見せるためのものではありません。仕事の大変さや責任の重さも正直に伝えることで、「こういう仕事だとわかって入社した」という納得感を持って入社してくれる人材が集まります。それが早期離職の防止に直結します。

  • ・現場見学会・インターンシップの実施
  • ・面接での「きつい場面」も含めたリアルな仕事説明
  • ・入社前に先輩社員と話せる機会の設置

 

6. パワハラ基準の正しい理解と職場コミュニケーション

建設業の職場環境改善を語るうえで、「パワハラ」の問題は避けて通れません。しかし、建設現場における「大声・強い口調」をすべてパワハラと混同することは正確ではなく、その区別を社員全員が理解することが重要です。

6-1. 建設現場のパワハラ基準はオフィスとは異なる

建設現場では、生命の危険がある場面で即座に大きな声を出して制止する、緊急の工程変更を強い口調で指示するといった行動が安全管理上必要になることがあります。これは「業務上の必要性・合理性がある指示」であり、法的なパワーハラスメントの定義には該当しません。

厚生労働省のパワハラ定義は「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、就業環境を害すること」です。「業務上の必要性・相当性」があれば、強い口調や大声がただちにパワハラにはなりません。

 

区分

具体例

パワハラ該当

業務上必要な強い指示

危険な場面での大声による制止・警告

× 非該当

業務上必要な強い指示

工期の遅れに対する強い催促(合理的な範囲)

× 非該当

パワハラに該当する行為

人格否定・侮辱的な言葉(「バカ」「使えない」など)

○ 該当

パワハラに該当する行為

業務と無関係な叱責・無視・仲間外れ

○ 該当

パワハラに該当する行為

ミスを繰り返し責め続ける・改善の機会を与えない

○ 該当

 

6-2. 社員全員がパワハラ基準を知ることの重要性

「どこまでが指導でどこからがパワハラか」を管理職・現場監督・若手社員の全員が正確に理解していないと、二つの問題が起きます。

若手が「これってパワハラでは?」と過剰反応して離職する:本来は業務上必要な指導であっても、パワハラの基準を知らない若手社員が誤解して「この会社はブラックだ」と感じてしまうケースがあります。

管理職が「これは言えない」と指導を萎縮させる:逆に、パワハラを恐れるあまり必要な指導ができなくなり、現場のミス・事故リスクが高まることもあります。

定期的なパワハラ研修・基準の社内共有により、「言うべきことは言える、でも人格攻撃はしない」という文化を育てることが、建設会社の健全な職場運営に不可欠です。

6-3. 現場コミュニケーションが離職を防ぐ

建設現場はきつい仕事だからこそ、社員が一丸となって取り組む連帯感が生まれたときに、離職率は大きく下がります。「この仲間となら頑張れる」という感覚は、給料や労働時間と同じくらい、人が職場にとどまる理由になります。

朝礼・KY活動での声がけ:安全確認の場を、チームの連帯感を高めるコミュニケーションの場として活用する。

1~2ヶ月に1回の1on1面談:上司が部下の悩みを早期に把握する。「誰かに話せる」という安心感が職場への信頼につながります。

社内イベント・交流の場:バーベキュー・運動会・食事会など、仕事外での交流が「仲間意識」を育てます。特に現場間の異動が多い建設業では、社内横断のつながりが孤立防止になります。

感謝・承認の文化:「ありがとう」「よくやってくれた」を言葉にする習慣が、若手の承認欲求を満たし、モチベーション維持につながります。





 

7. メンタルヘルス対策・EAPの導入

7-1. 建設業でメンタル離職が起きやすい理由

長時間労働・プレッシャー・孤立・世代間ストレスが重なる建設現場は、メンタルヘルス不調が発生しやすい環境です。メンタル不調は早期に気づかれず、ある日突然「もう限界です」と退職届が出るというパターンが多く見られます。

厚生労働省の調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.2%ですが、「年1回ストレスチェックを行うだけ」という形骸化した取り組みがほとんどです。データを活かした実質的な対策を行っている企業はごく一部にとどまっています。

7-2. 4つのメンタルヘルスケアの体制

 

ケアの種類

主な担い手

建設業での実践ポイント

①セルフケア

従業員本人

ストレスへの気づき方、相談行動の促進

②ラインケア

管理職・現場監督

部下の変化への気づき、声がけ、相談対応

③産業保健スタッフによるケア

産業医・保健師

面談、健康相談、職場改善の助言

④外部資源によるケア

EAP・外部機関

外部相談窓口、カウンセリング、医療連携

 

7-3. EAP(従業員支援プログラム)の活用

EAPEmployee Assistance Program:従業員支援プログラム)は、従業員のメンタルヘルスを組織的に守るための外部支援プログラムです。従来のEAPが「困ったときに従業員が自ら相談する」受け身の仕組みであるのに対し、近年注目されているのが管理職・人事担当者と連携し、専門家が能動的に関与する「攻めのメンタルヘルス」アプローチです。

問題が深刻化してから対処するのではなく、ストレスチェックや日常の変化の兆候をもとに、管理職・人事担当者・外部専門家が連携して早期に介入する体制が、建設業のような高ストレス環境では特に有効です。建設業の多くを占める従業員50人未満の中小事業者でも、外部サービスを活用することで専任スタッフを抱えることなくこの仕組みを構築できます。

  • 管理職・人事担当者と連携し、問題を抱えた社員に専門家が積極的に関与する能動的な支援体制
  • 「職場の人には言えない」悩みを外部専門家に相談できる守秘義務の保証
  • 高ストレス者の早期発見と産業医・医療機関へのスムーズな橋渡し
  • 管理職へのラインケア研修・パワハラ防止研修の提供

 

7-4. ストレスチェックを「形骸化」させない

2028年にはすべての企業規模でのストレスチェック義務化が見込まれています。今のうちから年1回の実施にとどまらず、集団分析による職場単位のストレス要因の特定・管理職へのフィードバック・具体的な職場改善につなげる運用体制を整えておくことが重要です。

【ポイント】精神科クリニックと連携しているEAP事業者は、メンタル不調が重症化した際の

医療機関連携がスムーズです。建設業のように身体的・精神的負荷が高い職種では、

医療機関バックアップのあるEAPが離職防止効果をより高めます。

 

 

8. 導入事例:実際に離職率改善に成功した建設会社

ここでは、メンタルヘルス対策・職場コミュニケーション改善・パワハラ研修などに取り組み、離職率改善を実現した建設会社の事例を2つ紹介します。

事例① EAP・ストレスチェック・ラインケア研修の三本柱で、メンタル離職を大幅削減(建設会社・社員80名)

【背景・課題】

年に4~5名がメンタル不調による休職・退職を繰り返し、現場の人員計画が立てられない状況が続いていた。

退職者の半数以上が「誰にも相談できなかった」と面談で語っており、社内に相談できる仕組みが

まったく存在していないことが根本課題と判明。管理職も「どう声をかければいいかわからない」

という声が多く、部下の異変に気づけないまま問題が深刻化するパターンが繰り返されていた。

 

【取り組み:外部相談窓口(EAP)の導入】

ミーデンのメンタルヘルス対策を導入。「社員が自ら相談を申し出るのを待つ」受け身の体制から脱却し、管理職・人事担当者が窓口となって専門家につなぐ能動的な支援体制を構築した。「気になる社員がいたらまず人事に相談し、専門家が管理職と連携して早期介入する」という仕組みをルール化した。

 

【取り組み:ストレスチェックの集団分析活用】

1回のストレスチェックを「義務をこなすだけ」の運用から、現場単位の集団分析を実施する。運用に切り替え。ストレスが高い現場・部署を特定し、分析結果を現場監督にフィードバック。高ストレス現場では工程の見直しや人員の補充を経営判断として実施した。

 

【取り組み:管理職へのラインケア研修】

全管理職・現場監督を対象に、「部下のメンタル不調のサインに気づく」「適切に声をかける」「相談を受けたときの対応」を学ぶラインケア研修を年2回実施。「指導と配慮の両立」をテーマにした具体的なロールプレイを取り入れた内容とした。

 

【結果】

取り組み開始から2年で、離職者が大幅に減少。ストレスチェックの集団分析も全国平均と同等の数値となり、高ストレス職場から脱却した。

安心感が職場全体の雰囲気を変えたと経営者は語る。また、パワハラ理解から現場の人達のコミュニケーションにも違いが出た。

「相談できる会社」という評判が社内外に広まり、採用面接での訴求ポイントにもなっている。

 

事例パワハラ研修・1on1面談・サーベイ導入で、「人間関係」を理由とした離職が激減(建設会社・社員45名)

【背景・課題】

退職者へのヒアリングを実施したところ、離職理由の1位が「上司との関係」、2位が「職場の雰囲気」であることが判明。一方で管理職側は「厳しく指導しているだけ」という認識を持っており、「どこからがパワハラなのか」という基準が会社全体で共有されていなかった。若手が「上司の口調が恐い」と感じて黙って辞めるケースと、管理職が「パワハラの定義」を認識していないケースが起きており、離職が多い職場であった。

 

【取り組み:パワハラ基準の社内研修】

全管理職・若手社員を対象に、パワハラの法的定義と建設現場特有の文脈を踏まえた。研修を実施。「危険な場面での大声による制止はパワハラではない」「人格否定・侮辱はいかなる状況でも許されない」という具体的な線引きを、現場の事例を使って共有した。管理職からは「何をしていいか、してはいけないかがやっとわかった」という声が相次いだ。

 

【取り組み:月1回の1on1面談制度の導入】

全現場監督が担当の若手社員と月11530分の1on1面談を実施する制度を導入。「業務の進捗確認」ではなく「本人の状態・悩みを聞く場」と明確に位置づけ、面談シートを用いて記録・フォローアップの仕組みを整えた。

 

【取り組み:パルスサーベイ(簡易従業員意識調査)の定期実施】

半年に1回のサーベイを全社員に実施し、職場の状態をリアルタイムで可視化。ストレス原因を特定する。職場改善を管理職・人事担当者が早期に取り組む。「年1回のストレスチェックだけでは見えなかったストレス原因が把握できるようになった」と担当者は語る。

 

【結果】

取り組み開始後3年後の1年以内離職率が56%→17%に半減。

「上司に相談できる」という設問への肯定回答率がサーベイ開始時から1年で28ポイント上昇。

管理職からも「部下との関係が変わった」「指導しやすくなった」という声が増え、職場全体のコミュニケーションの質が改善した。

 

 

9. まとめ:優先順位のつけ方

建設業の離職問題には、変えられないこととすぐに動けることが混在しています。最後に、取り組みの優先順位を整理します。

短期(今すぐ取り組む)

  • 退職者ヒアリングによる「なぜ辞めるか」の実態把握
  • 外部相談窓口(EAP)・ストレスチェックの導入
  • 管理職へのラインケア研修・パワハラ基準の共有
  • 施工管理アプリ・勤怠管理システムの導入検討

 

中期(312か月で整備する)

  • 週休2日制・残業管理の仕組みづくり
  • SNS採用(InstagramYouTube)の発信開始
  • 賃金テーブルの整備・キャリアパスの明確化
  • 1on1面談制度の全社導入

 

長期(文化として根づかせる)

  • ITAIの継続的な活用でコスト削減賃金向上のサイクルを実現
  • 「相談できる・仲間がいる・認められる」職場文化の定着
  • 健康経営優良法人認定の取得による採用ブランドの強化
  • 多様な人材(女性・シニア・外国人)が活躍できる環境整備

 

【最後に】

下請け構造、材料費高騰、3Kイメージ──建設業が抱える課題は重く、すぐには変えられません。

しかし、「採用した1人に長く働き続けてもらうこと」は、今この瞬間から動き出せる取り組みです。

IT・AIを活用し、SNSで若手へのリーチを強化し、職場コミュニケーションとメンタルヘルスを整える。

この複合的な取り組みが、厳しい建設業界で人材を守り、会社を守ることにつながります。




 

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【参考資料】

・厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果」

・厚生労働省「建設労働者を取り巻く状況について」

・国土交通省「最近の建設業を巡る状況について【報告】(202110月)」

・厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

・建設業労働災害防止協会「建設業におけるメンタルヘルス対策」