ストレスチェックの個人結果の見方を徹底解説~プロフィール表の読み方から高ストレス者の判定基準まで~

公開日: | 最終更新日:

📋 この記事でわかること

・ ストレスチェックの57項目が何を測っているか(4領域の構造)

・ 個人結果のレーダーチャート・棒グラフの正しい読み方

・「高ストレス者」の判定基準(2パターン)

・ 自分の結果をセルフケアと職場改善にどう活かすか

 

【動画解説はこちらから】

 

 

1. ストレスチェックとは?制度の目的を正しく理解しよう

毎年受けているストレスチェック。「なんとなく回答して、コメントだけ読んで終わり」という方は少なくありません。しかし、個人結果の「プロフィール表」を正しく読み解くと、自分のストレス状態が格段によく見えてきます。

 

ストレスチェックは、労働安全衛生法に基づき、従業員50人以上の事業場では毎年1回の実施が義務づけられている制度です(201512月施行)。

また、2028年からは全ての会社で義務化されます

 

1-1. ストレスチェックの3つの目的

  1. メンタルヘルス不調の一次予防(未然防止)
  2. 労働者が自分のストレス状態に気づき、セルフケアを促す
  3. 集団分析を通じた職場環境の改善

 

問題が起きてから対処する「二次予防」ではなく、不調になる前に気づいて手を打つ「一次予防」が本来の目的です。

 

【実例】事業場からのご案内(個人結果 1ページ目)

高ストレス者に該当しない場合の案内文例。「心身の健康面において特に問題はみられませんでした」と表示されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1-2. 職業性ストレス簡易調査票(57項目版)とは

厚生労働省が推奨する標準的な調査票は「職業性ストレス簡易調査票(57項目版)」です。回答時間は約10分。「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の4段階で評価します。

 

この57問は大きく4つの領域に分かれており、それぞれが異なる観点からストレスを測定しています。次章でその構造を詳しく解説します。

 

2. 57項目の4領域構成を図解で理解する

ストレスチェックの57項目は、以下の4つの領域(AD)で構成されています。

 

【図表157項目の4領域構成

領域A

領域B

領域C

領域D

仕事のストレス要因

心身のストレス反応

周囲のサポート

満足度

17問 / 9尺度

29問 / 6尺度最重要

9問 / 3尺度

2問(参考のみ)

 

特に重要なのは「領域B:心身のストレス反応」です。高ストレス者の判定において最も中心的な役割を担います。領域Dの「満足度」は判定計算には使用されず、参考情報として確認する項目です。

 

2-1. 領域A「仕事のストレス要因」(17問・9尺度)

仕事そのものがどれだけストレスになっているかを測る領域です。9つの尺度で構成されています。

 

  • 仕事の量的負担:仕事量が多すぎないか
  • 仕事の質的負担:難しい・複雑な仕事が多いか
  • 身体的負担:体を使う仕事の多さ
  • コントロール:自分のペースや裁量で仕事ができるか
  • 技術の活用:スキルや知識が活かせているか
  • 対人関係:職場内の人間関係のストレス
  • 職場環境:騒音・照明・温度など作業環境
  • 仕事の適性度:仕事が自分に合っているか
  • 働きがい:やりがいを感じられるか

 

2-2. 領域B「心身のストレス反応」(29問・6尺度)

ストレスによって、すでに心や体に何らかの影響が出ていないかを測る最重要領域です。6つの尺度が含まれており、それぞれ出現するタイミングが異なります。

 

【図表2】領域B6尺度とストレス重症度の関係

尺度

内容

出現タイミング

活気

元気・やる気があるか

軽度のストレスで低下

イライラ感

職場でのイライラや怒り

中等度から出現

疲労感

体・精神の疲れ

中等度から出現

不安感

将来への不安・緊張

重度から出現

抑うつ感

気分の落ち込み・無力感

最重症で出現要注意

身体愁訴

頭痛・肩こり・不眠など

各段階で出現

 

厚生労働省のマニュアルによると、「活気の低下」は比較的ストレスが低い段階でも現れやすく、深刻になるにつれて「疲労感」「イライラ感」「不安感」「抑うつ感」の順に現れるとされています。

 

⚠️ 重要:「不安感」や「抑うつ感」が高い場合は、特に早期の専門家への相談が必要なサインです。

 

2-3. 領域C「周囲のサポート」(9問・3尺度)

上司・同僚・家族・友人など、周囲からどれだけサポートを受けられているかを測ります。

 

  • 上司からのサポート
  • 同僚からのサポート
  • 配偶者・家族・友人からのサポート

 

周囲のサポートは、仕事のストレスを和らげる「緩衝材(バッファー)」の役割を果たします。領域Aのストレスが高くても、領域Cのサポートが充実していれば、心身への悪影響を抑えることができます。逆に、ハラスメントや孤立がある場合にはこの数値が低くなり、職場全体のストレスをさらに悪化させます。

 

3. プロフィール表(棒グラフ)の読み方

ストレスチェックの個人結果には「あなたのストレスプロフィール」と題した棒グラフが含まれています。各尺度ごとに5段階で評価点が示されます。

 

【実例】あなたのストレスプロフィール(棒グラフ形式)

各尺度の評価点を棒グラフで示した実際の個人結果例。領域A合計30点、領域B合計27点、領域C合計16点、総合計73点。

 

3-1. 棒グラフの正しい見方

棒グラフ形式では、各尺度の(評価点)の位置が5段階(低い/少ない〜高い/多い)で示されます。重要なのは「影のかかった枠(網かけ部分)にがついているか」という点です。

 

  • 網かけ部分(右端・左端)にがある:ストレス状態が良くない(ストレスが高く:注意が必要)

 

ただし「印のついた逆転項目」(コントロール、技術の活用、適性度、働きがい、活気、上司・同僚・家族サポート、満足度)は、が右側(高い/多い)ほど良い状態です。

 

3-2. 上記サンプル結果の解読例

上の実例を見ると、この方の結果は以下のように読み取れます。

 

  • 領域A(仕事のストレス要因):心理的負担(量・質)がやや低め。仕事のコントロール度はやや高めで良好
  • 領域B(心身のストレス反応):活気は普通。イライラ感・不安感・抑うつ感・身体愁訴は「低い」側にあり良好な状態
  • 領域C(周囲のサポート):上司からのサポートはやや高く充実。同僚・家族からのサポートも良好

 

総合計73点は、比較的ストレスが少なく心身も安定した状態を示しています(点数が高いほど良い状態)。

 

4. レーダーチャートの読み方

個人結果には、3つのレーダーチャートが並んで表示される場合があります。それぞれ「ストレスの原因と考えられる因子(領域A)」「ストレスによって起こる心身の反応(領域B)」「ストレス反応に影響を与える他の因子(領域C)」を表します。

 

【実例】あなたのストレスプロフィール(レーダーチャート)

3つの領域をレーダーチャートで可視化した実際の個人結果例。印がある項目は逆転項目で、外側に広がるほど良い状態を示す。

 

 

4-1. レーダーチャートで注目すべきポイント

レーダーチャートで直感に反する重要なルールがあります。「輪が外側に広がるほど良い状態」です。これは評価点が高いほどストレスが低いという計算方式によるものです。

 

  • 輪が大きい(外側に広がる):ストレスが少ない・健康的な状態
  • 輪が小さい(内側に縮まる):ストレスが高い・注意が必要な状態

 

上の実例では、領域A(青)は中程度の大きさ、領域B(赤)は一部の項目(不安感方向)が内側に入っています。領域C(緑)は比較的外側に広がっており、サポートが充実していることがわかります。

 

4-2. 3つのチャートを組み合わせて読む

  • 領域Aが小さく・領域Bが小さい仕事がきつく、心身への影響が出始めている
  • 領域Aが大きく・領域Bが小さい仕事は楽だが何らかの別の要因でストレスを感じている可能性
  • 領域Aが小さくても・領域Cが大きい仕事はきついが周囲のサポートで心身への影響が緩和されている

 

3つのチャートを総合的に読むことで、自分のストレスの「原因」「現状」「緩衝材」が一目でわかります。

 

5. 高ストレス者の判定基準を徹底解説

ここがストレスチェックの結果を読み解く上でもっとも重要なポイントです。「高ストレス者」には2つの判定パターンがあります。

 

【図表3】高ストレス者判定の2パターン(素点換算法)

判定

条件

具体的数値(素点換算法)

対応の目安

🔴 レッドカード

領域Bのみ

領域B評価点合計が12点以下(平均2点以下)

産業医と早急に面談。休職も視野に

🟡 イエローカード

領域B + 領域A+C

領域B評価点合計が17点以下、かつ領域A+C合計が26点以下

産業医面談の積極的申し込みを推奨

 

5-1. パターンレッドカード(すでに心身に不調が出ている)

素点換算法での基準:領域B「心身のストレス反応」の6尺度の評価点合計が12点以下(平均2点以下)

 

評価点は155段階で、ストレスが高いほど点数が低くなります。合計12点以下というのは、すでにうつ病・適応障害・自律神経失調症など、ストレスによる疾患を発症している可能性が高い状態です。

 

🔴 この段階では、仕事を減らす・休職なども含めた対応を、産業医と相談しながら早急に検討してください。自己判断での対処は危険な場合があります。

 

5-2. パターンイエローカード(今後不調になるリスクが高い)

素点換算法での基準:領域B評価点合計が17点以下、かつ領域A「仕事のストレス要因」と領域C「周囲のサポート」の評価点合計が26点以下

 

これは「まだ心身への影響はギリギリ出ていないが、仕事量も多く周囲の支えも乏しい状況が続いている」状態です。このまま放置すると、近い将来メンタル不調になるリスクが非常に高いため、高ストレス者として産業医面談の対象となります。

 

6. 高ストレス者になったらどうする?

高ストレス者と判定された場合でも、それは「病気の診断」ではありません。「専門家のサポートが必要なサイン」です。

 

6-1. 産業医面談を積極的に活用する

  • 面談内容は産業医の守秘義務により保護されます
  • 高ストレスの結果だけを理由とした不利益な扱いは法律(労働安全衛生法)で禁止されています
  • 面談後は必要に応じて就業上の配慮(業務軽減・配置転換など)が検討されます

【別記事】

産業医面談とは? 

産業医面談は意味がない?

 

 

6-2. 外部相談窓口の活用

  • EAP(従業員支援プログラム):会社が契約している外部相談窓口
  • こころの耳(厚生労働省運営):働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
  • かかりつけ医・精神科・心療内科への受診

 

6-3. セルフケアで取り組めること

  • 睡眠の確保:まず「7時間以上の睡眠」を優先する
  • 適度な運動:週3回・30分程度のウォーキングでも効果がある
  • 人とのつながり:信頼できる人に話すだけでストレスが軽減されることがある
  • 休暇の取得:有休を計画的に使い、仕事から距離を置く時間をつくる

 

7. 会社・組織としての活用法:集団分析と職場環境改善

ストレスチェックの真の目的は、個人の問題発見にとどまりません。部署・チーム単位での集団分析を通じた「職場環境の改善」が本来の目的の一つです。

 

  • 特定の部署で仕事量的負担が集中していないか
  • 特定の職場で上司・同僚サポートが低くなっていないか(ハラスメントの示唆)
  • 「働きがい」「仕事の適性度」が全体的に低い職場はないか

 

これらを組織全体で分析することで、人員配置の見直し・業務量の平準化・研修の実施など、具体的な改善アクションにつなげることができます。

 

まとめ:ストレスチェックを「流れ作業」で終わらせないために

 

この記事のポイント

  1. 57項目は4領域(A仕事のストレス要因・B心身のストレス反応・C周囲のサポート・D満足度)で構成
  2. 高ストレス判定で最重要なのは領域B(心身のストレス反応)
  3. レッドカード:領域B評価点合計12点以下早急に産業医へ
  4. イエローカード:領域B17点以下かつA+C合計26点以下産業医面談を積極的に
  5. 棒グラフは「網かけ部分にがあるか」、チャートは「輪の大きさ」で判断
  6. 高ストレス者判定は「病気の診断」ではなく「サポートが必要なサイン」

 

ストレスチェックは、毎年の義務だからこそ「流れ作業」になりがちです。しかし、正しく読み解けば自分の心と体を守る強力なツールになります。今年の結果をぜひ丁寧に確認し、必要であれば専門家に相談することを躊躇わないでください。

 

 

参考資料

・厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

・職業性ストレス簡易調査票(57項目版)

・厚生労働省「数値基準に基づいて高ストレス者を選定する方法」