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ストレスチェック制度の基本的な対象範囲
2015年12月から義務化されたストレスチェック制度では、すべての労働者が一律に対象となるわけではありません。労働安全衛生法に基づく本制度には、明確な対象基準が設けられています。
企業の人事担当者や衛生管理者の方々から「派遣社員やアルバイトもストレスチェックを実施する必要があるのか」という質問を頂くことがよくあります。この疑問について、法的根拠を踏まえながら詳しく解説していきます。
(※2028年からはすべての会社で義務化されます⇒詳細記事はこちら)
対象者の判定基準となる2つの要件
ストレスチェックの対象者となるかどうかは、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。
1. 契約期間に関する条件
雇用契約が「1年以上継続することが見込まれる」労働者が対象です。ここでいう「見込まれる」とは、契約書上の期間だけでなく、更新の実態や慣例も考慮されます。
具体的には:
- 無期雇用契約の場合は自動的に該当
- 有期雇用で契約期間が1年以上の場合は該当
- 契約期間が1年未満でも、更新により1年以上の雇用が見込まれる場合は該当
2. 労働時間に関する条件
週の所定労働時間が、通常の労働者の4分の3以上である必要があります。
例えば、正社員の所定労働時間が週40時間の企業であれば、週30時間以上働く労働者が該当します。
派遣社員のストレスチェック実施義務はどこにあるのか
派遣社員の場合、ストレスチェックを実施する義務があるのは派遣元企業です。派遣先企業ではありません。
これは、労働契約関係が派遣元企業と派遣社員との間に存在するためです。派遣元企業は、自社で雇用している派遣スタッフに対して、上記2つの要件を満たす場合にストレスチェックを実施する法的義務を負います。
ただし、派遣先企業においても、職場環境の改善という観点から、派遣社員の心理的負担を把握し、必要な配慮を行うことが望ましいとされています。
アルバイト・パートタイム労働者の取り扱い
アルバイトやパートタイム労働者についても、雇用形態そのものが除外理由にはなりません。判断のポイントは、あくまで前述の2要件を満たすかどうかです。
対象となるケース
- 週4日以上のシフトで長期勤務しているアルバイト
- 1日6時間以上、週5日勤務のパート社員
- 学生アルバイトでも1年以上の継続勤務が見込まれ、週30時間以上勤務する場合
対象外となるケース
- 週2日、1日4時間程度の短時間勤務者
- 繁忙期のみの短期アルバイト
- 数ヶ月単位の短期契約で更新の見込みがない労働者
対象者を正確に判定するための実務上のポイント
企業がストレスチェックの対象者を正確に判定するには、以下の点に注意が必要です。
雇用契約書の確認
各労働者の雇用契約書を見直し、契約期間と週の所定労働時間を確認しましょう。契約書に明記されていない場合でも、実際の勤務実態が重要になります。
更新実績の考慮
有期契約であっても、過去に複数回更新されている場合や、同様の契約で長期勤務している前例がある場合は、「1年以上の継続が見込まれる」と判断される可能性が高くなります。
シフト制勤務者の扱い
シフト制で勤務時間が変動する労働者の場合、直近数ヶ月の平均労働時間を算出して判定することが一般的です。
ストレスチェック未実施のリスク
対象者に対してストレスチェックを実施しない場合、企業には以下のようなリスクが生じます。
- 労働基準監督署からの指導対象となる可能性
- 従業員の精神的健康問題の見落とし
- メンタルヘルス不調による休職・離職の増加
- 企業の安全配慮義務違反と判断されるリスク
50人以上の事業所では、ストレスチェックの実施結果を労働基準監督署に報告する義務もあります。
対象外の労働者への配慮
法的にストレスチェックの対象外となる短時間労働者であっても、企業の判断で任意に実施することは可能です。むしろ、職場全体のメンタルヘルス対策という観点からは、可能な範囲で全従業員を対象とすることが理想的です。
特に以下のような労働者については、法的義務はなくても実施を検討する価値があります。
- 責任の重い業務を担当している短時間労働者
- 顧客対応など精神的負担の大きい業務に従事する者
- 本人から希望がある場合
まとめ:適切な対象者把握が制度運用の第一歩
ストレスチェック制度を効果的に運用するためには、まず対象者を正確に把握することが不可欠です。
派遣社員やアルバイトであっても、「1年以上の継続雇用が見込まれる」「週の所定労働時間が正社員の4分の3以上」という2つの要件を満たせば、ストレスチェックの対象となります。雇用形態のラベルではなく、実質的な勤務状況で判断することが重要です。
各企業の実情に応じて、法的義務の範囲を正しく理解しつつ、従業員の心の健康を守るための取り組みを進めていきましょう。
