休職期間は何ヶ月が適切?3ヶ月と1年6ヶ月のメリット・リスクと就業規則の決め方

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従業員がメンタルヘルス不調や病気で長く働けなくなったとき、会社は何ヶ月まで休職を認めるべきなのでしょうか。「うちは3ヶ月にしている」「大企業は1年半くらいらしい」など、休職期間の考え方は会社によってさまざまです。

休職期間は、一度就業規則に定めると簡単には変えられない重要な設計項目です。短すぎれば無理な復職や人材の流出につながり、長すぎれば会社のコストや人員計画に負担がかかります。

本記事では、企業調査のデータから休職期間の設定状況を確認したうえで、3ヶ月とした場合のリスク、1年6ヶ月とした場合のメリットとデメリット、そして自社に合った休職期間を決めるためのポイントを、人事・労務ご担当者様向けに解説します。

この記事でわかること

・  休職期間に関する法律上のルールと就業規則の位置づけ

・  企業が定めている休職期間の上限の分布(企業規模別の傾向)

・  休職期間を3ヶ月とした場合の5つのリスク

・  休職期間を1年6ヶ月とした場合のメリット・デメリット

・  通算規定・延長規定・復職判定など、休職制度を機能させる設計のポイント

 

目次

休職期間は法律で決まっている?就業規則との関係

休職とは?欠勤との違い

休職とは、従業員が労働契約を維持したまま、一定期間、労働義務を免除される制度です。業務外の病気やけがで働けない状態が続いた場合、そのまま欠勤が続けば、労務を提供できない状態として解雇が問題になることもあります。休職制度は、こうした場合に一定期間の猶予を与え、療養に専念してもらうための「解雇猶予」の役割を持つ制度と理解されています。

欠勤は本来働くべき日に休むことであり、休職は会社の命令や承認によって労働義務が一定期間免除される状態です。多くの会社では、一定期間の欠勤が続いた後に休職へ移行する仕組みをとっています。

私傷病休職の期間に法定の基準はない

最初に押さえておきたいのは、業務外の病気やけが(私傷病)による休職期間の長さについて、法律で定められた一律の基準はないという点です。休職制度を設けるかどうか、設ける場合に期間をどのくらいにするかは、基本的に各社が就業規則で定めることになります。

なお、業務上の負傷や疾病(労働災害)による休業は、労働基準法による解雇制限など別のルールが適用されます。本記事で扱うのは、私傷病による休職です。

制度を設けるなら就業規則への記載と周知が必要

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が義務づけられています。休職制度は、すべての労働者に適用される定めをする場合に記載が必要となる「相対的必要記載事項」にあたるため、制度を設けるのであれば就業規則に明記する必要があります。

また、就業規則の内容は合理的なものである必要があり、従業員に周知されていなければなりません。合理的な内容が周知されていれば、その内容が労働条件となり、会社も従業員もそのルールに従うことになります。

休職期間満了時の扱いも定めておく

休職期間が満了しても復職できない場合に、「自然退職(当然退職)」とするのか「解雇」とするのかといった満了時の扱いも、就業規則に定めておきます。ただし、規定があるからといって機械的に退職扱いにできるわけではありません。実際にその従業員が復職できない状態かどうかは、個別の事情に即して判断する必要があります。

後からの変更は「不利益変更」に注意

休職期間を短くするなど、従業員に不利な方向へ就業規則を変更する場合は、変更の必要性や内容の相当性などに照らして合理的であることが求められます。つまり休職期間の長さは、会社の考え方がそのまま表れる設計項目であり、後から簡単に見直せるものではありません。最初の設計がとても重要なのです。

休職期間の平均・相場は?企業調査のデータ

休職期間は企業によって大きく異なり、「1年6ヶ月超」も26.1%

では、実際に企業はどのくらいの休職期間を定めているのでしょうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2012年に、常用労働者50人以上の企業を対象に行った調査があります。この調査で、病気休職制度がある企業の休職期間の上限は次のように分布していました。

休職期間の上限

企業の割合

6ヶ月以下

22.9%

6ヶ月超〜1年

22.3%

1年超〜1年6ヶ月

17.2%

1年6ヶ月超

26.1%

出典:労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」(2012年調査)をもとに作成。主な区分のみ抜粋。

この4区分で見ると、最も多いのは「1年6ヶ月を超える」の26.1%で、次いで「6ヶ月以下」が22.9%、「6ヶ月超から1年まで」が22.3%、「1年超から1年6ヶ月まで」が17.2%でした。いずれの区分も2割前後を占めており、短い企業と長い企業がそれぞれ一定の割合で存在していることがわかります。

企業規模が大きいほど休職期間は長い傾向

特徴的なのは、企業規模による差です。正社員1,000人以上の企業では、上限が1年6ヶ月を超える企業が66.4%にのぼります。反対に、正社員49人以下の企業では、6ヶ月以下とする企業が29.6%でした。企業規模が小さいほど、休職期間を短めに設定する割合が高い傾向があります。

大企業で休職期間が長い背景には、代替要員を確保しやすい人員規模や、福利厚生として長期の療養を支える余力があると考えられます。一方、小規模な会社では一人の不在が業務に与える影響が大きく、長い休職期間を設定しにくい事情があります。大企業の水準をそのまま取り入れるのではなく、自社で現実に運用できる期間かどうかを見極めることが重要です。

なお、これは2012年時点の調査結果であり、現在の状況をそのまま表したものではありません。ただ、この分布からも分かるように、休職期間の設定は企業によって大きく異なり、「何ヶ月が普通」という一つの正解はありません。自社の規模や体制を踏まえて設計することが大切です。

休職期間を3ヶ月とした場合の5つのリスク

人員に余裕のない会社では、休職期間を3ヶ月程度と短めに設定しているケースがあります。代わりの人を早く確保したい、長期の不在では現場が回らない、という事情は十分に理解できます。しかし、メンタルヘルス不調を想定すると、3ヶ月にはいくつかのリスクがあります。

リスク1:療養期間として短すぎる可能性がある

うつ病などのメンタルヘルス不調では、症状が落ち着くまでの時期、生活リズムを整える時期、職場復帰に向けて体力と集中力を戻していく時期と、段階を踏んで回復していきます。3ヶ月ではこの過程が終わらないことも少なくありません。

リスク2:焦りによる無理な復職と再発

期間満了が近づくと、本人は「戻らなければ退職になる」というプレッシャーを強く感じます。その結果、十分に回復しないまま復職し、再び不調に陥るおそれがあります。

メンタルヘルス不調は再発が課題になりやすい疾患です。前述の2012年の調査で、復職した社員の再発状況を企業に尋ねたところ、「ほとんど再発はない」と答えた企業の割合は、身体疾患では79.3%だったのに対し、メンタルヘルスでは47.1%にとどまりました。これは企業ごとの回答の割合であり、個人の再発率を示すものではありませんが、メンタルヘルス不調では再発への備えがより重要であることがうかがえます。

リスク3:期間満了時の判断が難しくなる

満了の直前に、主治医から「復職可能」という診断書が提出されることがあります。しかし、主治医の診断書があるからといって、それだけで従前の業務を遂行できると決まるわけではありません。会社は、産業医などの意見も踏まえて、業務を遂行できる状態かどうかを確認する必要があります。休職期間が短いと、この確認や復職に向けた準備に使える時間が限られてしまいます。

リスク4:療養中の生活への不安が大きくなる

休職期間が短いと、回復の途中で退職となる可能性が高まります。療養中の収入を支える健康保険の傷病手当金は、会社の休職制度とは別の制度で、一定の要件を満たせば退職後も継続して受給できます。それでも、職を失うかもしれないという不安は、療養中の本人にとって大きな負担となり、回復そのものを妨げる要因にもなりかねません。

リスク5:経験豊富な人材を失う

長く活躍できたはずの経験豊富な従業員を、数ヶ月の不調で失う可能性があります。新たな採用と育成にかかるコストを考えると、会社にとっても大きな損失です。

休職期間を1年6ヶ月とした場合のメリット

次に、休職期間を1年6ヶ月とした場合を考えてみます。

回復と復職準備の時間を確保しやすい

最大のメリットは、回復や復職準備に使える時間を確保しやすいことです。本人が焦らずに治療に取り組み、生活リズムの回復や復職に向けた準備を段階的に進める余裕が生まれます。

療養中の見通しを立てやすい(傷病手当金との関係)

ここで注意したいのが、健康保険の傷病手当金との関係です。傷病手当金は、業務外の病気やけがで仕事を休み、給与が支払われないなどの要件を満たす場合に、支給開始日から実際に支給された期間を通算して1年6ヶ月まで受け取れる制度です。

「1年6ヶ月」という数字は共通していますが、傷病手当金は会社の休職期間とは別の制度であり、退職後も一定の要件を満たせば継続して受給できます。そのため、休職期間を1年6ヶ月に設定しても、両者の開始日や終了日が必ず一致するわけではありません。それでも、休職期間に余裕があれば、本人は在籍したまま療養を続けられる期間を把握しやすくなります。

人材の定着と採用面でプラスになる

「病気になっても会社が待ってくれる」という安心感は、従業員の会社への信頼を高めます。また、採用の場面でも、病気になっても働き続けるための制度として説明できる点は強みになります。

満了前に評価や調整を行う余地が増える

期間に余裕があれば、産業医との面談や試し出勤などを通じて、復職の可否や必要な配慮を時間をかけて確認することができます。

休職期間を1年6ヶ月とした場合のデメリット

一方で、1年6ヶ月にはデメリットもあります。

社会保険料などのコスト負担

休職中の給与を無給としている会社でも、従業員が在籍している限り、社会保険料の会社負担分は発生し続けます。1年6ヶ月となれば、その負担は小さくありません。

人員計画が立てにくい

いつ戻るか分からないポジションを長期間空けておくことは、特に小規模な職場では大きな負担になります。代替要員を採用すると、今度は復職したときの配置に悩むことになります。

長期離脱で復職のハードルが上がることも

職場から離れる期間が長くなるほど、業務の内容や人間関係が変わり、本人が職場に戻る自信を失ってしまうことがあります。長く休めることが、必ずしも復職しやすさにつながるわけではないのです。

休職・復職の繰り返しへの対応が必要

休職と復職を短い間隔で繰り返すケースへの対応も必要になります。期間を長くするのであれば、それを適切に運用するルールが欠かせません。

【比較表】休職期間3ヶ月と1年6ヶ月の違い

観点

3ヶ月

1年6ヶ月

療養・復職準備の時間

不足しやすい

確保しやすい

無理な復職・再発のリスク

高まりやすい

抑えやすい

満了時の復職判断

時間が限られる

評価・調整の余地がある

会社のコスト負担

小さい

社会保険料などが続く

人員計画への影響

小さい

代替要員・配置の調整が必要

従業員の安心感・定着

得にくい

得やすい

 

どちらにも一長一短があり、単純に「長いほど良い」「短いほど良い」とはいえません。次章で紹介するように、期間の長さだけでなく、制度の組み立て方と運用ルールを組み合わせることで、両者のバランスを取ることができます。

自社に合った休職期間を決めるための4つのポイント

ポイント1:勤続年数に応じて段階的に設定する

一律の期間ではなく、勤続年数に応じて期間を段階的に設定する方法があります。たとえば次のように区切れば、会社の負担と従業員の安心のバランスを取りやすくなります。

勤続年数

休職期間の上限(設定例)

1年未満

3ヶ月

1年以上3年未満

6ヶ月

3年以上

1年

 

ポイント2:通算規定を設ける

復職後、一定期間内に同一または類似の理由で再び休職した場合は、前の休職期間と通算する、という定めです。これにより、短期間の復職と休職を繰り返すことで休職期間がリセットされる事態を防げます。メンタルヘルス不調では診断名が変わることもあるため、「同一または類似の事由」と幅を持たせて定めておくのが一般的です。

ポイント3:延長規定を設けておく

「会社が特に必要と認めた場合は延長することがある」と定めておけば、回復の見込みがあるケースに柔軟に対応できます。期間を短めに設定する会社ほど、この延長規定が実務上の安全弁として役立ちます。

ポイント4:復職判定の手順を明確にする

主治医の診断書に加えて、産業医などの意見も踏まえ、業務を遂行できるかどうか、どのような配慮が必要かを確認する。必要に応じて試し出勤を取り入れる。こうしたプロセスを就業規則や規程に定めておくことで、期間満了時の判断にも根拠を持たせることができます。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」も、手順を整備する際の参考になります。

試し出勤は、正式な復職の前に、通勤や短時間の勤務を試行して回復状況を確認する仕組みです。本人にとっては職場に戻る感覚を取り戻す機会になり、会社にとっては業務遂行能力を確かめる材料になります。ただし、試し出勤中の処遇(賃金の有無や労災保険の適用など)や期間をあらかじめ定めておかないと、トラブルの原因になりかねません。導入する場合は、目的・期間・処遇をルールとして整理しておきましょう。

あわせて決めておきたい休職中の運用ルール

期間や判定手順に加えて、次のような運用ルールも事前に決めておくと、トラブルを防ぎやすくなります。

  • ・休職中の連絡の頻度と方法、会社側の窓口
  • ・診断書の提出時期と提出先
  • ・期間満了が近づいた際の通知(満了日と、それまでに必要な手続きを本人に書面で知らせる)

突然の退職扱いは、本人にとっても会社にとっても不幸な結果を招きます。休職期間の長さそのものよりも、期間中に会社がどう関わり、どのように復職を判断するのか。この運用の部分こそが、休職制度を機能させる鍵になります。

就業規則に定める休職規定の条文例

ここまでのポイントを就業規則に落とし込むと、たとえば次のような規定が考えられます。あくまで一例であり、実際の条文は自社の実情に合わせ、社会保険労務士などの専門家と相談しながら作成してください。

休職規定の例(抜粋)

(休職)第○条 従業員が業務外の傷病により欠勤し、欠勤が連続して1ヶ月を超えたときは、休職を命じることがある。

(休職期間)第○条 休職期間は、勤続年数に応じて次のとおりとする。ただし、会社が特に必要と認めた場合は、期間を延長することがある。

(休職期間の通算)第○条 復職後6ヶ月以内に同一または類似の事由により欠勤または休職したときは、前後の休職期間を通算する。

(復職)第○条 休職中の従業員が復職を申し出る場合は、主治医の診断書を提出しなければならない。会社は、産業医の意見等を踏まえて復職の可否を判断する。

(休職期間満了)第○条 休職期間が満了しても復職できないときは、満了日をもって退職とする。

 

条文を作成する際は、「欠勤が何日続いたら休職とするのか」という休職開始の要件もあわせて明確にしておくことが大切です。開始の基準があいまいだと、休職期間の起算日をめぐって認識のずれが生じやすくなります。

休職期間に関するよくある質問

Q. 休職期間中の給与は支払わなければなりませんか?

私傷病による休職中の給与について、法律上の支払い義務はなく、就業規則で定めた内容に従います。無給とする会社も多く、その場合、従業員は要件を満たせば健康保険の傷病手当金を受給できます。ただし、無給であっても社会保険料の負担は続く点に注意が必要です。

Q. 主治医が「復職可能」と診断すれば、必ず復職させなければなりませんか?

主治医の診断書は重要な判断材料ですが、それだけで従前の業務を遂行できると決まるわけではありません。主治医は日常生活レベルの回復をもとに判断していることもあるため、会社は産業医の意見や実際の業務内容も踏まえて、業務を遂行できる状態かどうかを確認します。

Q. 一度決めた休職期間を短くすることはできますか?

従業員に不利な変更となるため、変更の必要性や内容の相当性などに照らして合理性が求められます。変更を検討する際は、従業員への十分な説明や経過措置の検討が欠かせません。だからこそ、最初の制度設計が重要です。

Q. 勤続年数の短い従業員にも休職を認める必要がありますか?

休職制度は法律上の義務ではないため、勤続年数や試用期間中かどうかによって、適用の有無や期間に差を設けることも可能です。ただし、その区分は就業規則に明記し、従業員に周知しておく必要があります。前述の段階設定は、このような考え方を制度に反映させたものです。

Q. 休職期間満了で退職とする際、どのような点に注意すべきですか?

満了日が近づいたら、本人の回復状況を確認し、復職の可能性を検討する時間を十分に確保することが大切です。本人の状態や業務内容によっては、従前の業務以外の業務への配置などを検討すべき場合もあります。満了日と必要な手続きは書面で事前に通知し、判断の経緯を記録として残しておきましょう。

まとめ:休職期間は「長さ」と「運用」をセットで設計する

休職期間の上限は企業によって大きく異なり、一律の正解はありません。2012年の調査では、企業規模が小さいほど6ヶ月以下とする割合が高く、大企業では1年6ヶ月を超える設定も多く見られました。

  • ・3ヶ月という短い設定は、無理な復職や満了時の判断の難しさにつながるおそれがある
  • ・1年6ヶ月は回復や復職準備の時間を確保しやすい反面、コストや人員計画への負担を伴う
  • ・勤続年数に応じた段階設定、通算規定、延長規定、復職判定の手順を組み合わせることでバランスを取れる

大切なのは、自社の規模や人員体制に合わせて期間を設定し、通算規定や復職判定の手順とあわせて運用していくことです。

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