精神科・心療内科・カウンセリングの違い

 更新日:2021年8月7日

 メンタルヘルス問題を相談しようと病院を検索してみると、精神科、心療内科、神経科、神経内科、メンタルヘルス科と色々出てきます。はたしてどこに相談したらよいのでしょう。

【メンタルヘルス問題は精神科】

 結論から言うと、心の病気を診療するところは精神科です。メンタルヘルスの問題は基本的に精神科が担当しています。正式な名称は精神神経科で、精神科を神経科と呼ぶこともあり、これらは同じ意味です。

 神経内科は脳神経の病気を診る内科です。脳梗塞、パーキンソン病、アルツハイマー病などを診療し、心の病気は診察しません。

【精神科と心療内科】

 精神科とよく間違えてしまうのが心療内科です。心療内科とは、ストレスが関連する体の病気を診療する内科の一つです。簡単に言うとストレスによる体調不良で通うところです。

 実は、心療内科とは、50年前に日本で誕生した日本だけにある診療科です。体の病気を心の面からも治療する「全人的医療」というものを行っています。心理的影響が大きい気管支喘息、胃潰瘍などの心身症の治療が出発でしたが、身体症状がある精神疾患も診療の対象になりました。癌の緩和ケア、軽症の摂食障害、うつ病などがこれに当たります。そのため精神科と心療内科で重なる部分があります。

【心療内科が世間に広まった理由】

 心療内科の名前が社会に知られるようになったのは、1996年から病院の看板に表記する許可が下りたことがきっかけでした。翌年には、「心療内科医・涼子」というドラマが話題を呼びました。架空の大学病院の心療内科を舞台に、破天荒な女医が心の病気を治療するストーリーでした。

この頃から精神科と心療内科が混同されるようになりました。心療内科は軽症の精神疾患を診るソフト精神科、精神科は精神病を治療するところのイメージで定着するようになったのです。

 本当のところを言いますと、心療内科の専門医をもっている医師は日本全国に300人程度しかいなく非常に少ないのです。病院で心療内科と書いてあっても実は精神科医が心療内科を名乗っていることが多いのです。精神科には「薬漬け」、「鉄格子」という暗いイメージがあり、メンタルヘルスを相談したいけれども精神科には通いづらい、でも心療内科なら敷居が低くなると言われています。そこで心療内科と書いて患者さんが通いやすくしているのです。

 中には内科医がメンタルヘルスのことを勉強して心療内科を担当している病院もありますが、専門性のことを考えるとあまり好ましいことではありません。

なぜ混同されてしまったのか?

 精神科と心療内科が混同されている背景には、諸外国に比べて日本の専門医制度があいまいであったことも理由にあります。医師が自分の専門を名乗るのに、国で統一されたルールがなく自由なところがあったのです。ようやく2018年から、日本でも統一した専門医制度が始まりました。今はこの制度のもとで医師が専門を名乗ることが原則になっています。精神科や内科であるのに心療内科を名乗るということは専門医制度に反することになります。

 最近では、精神科の暗いイメージを払拭するため、メンタルヘルス科という名称が出てきました。これからは、精神科や心療内科の代わりに、メンタルヘルス科と名乗る病院が増えてくるでしょう。

【精神科とカウンセリングの違い】

 ところでメンタルヘルスを相談する時に、精神科医とカウンセラーはどこが違うのでしょうか?

 基本的に精神科医は心の病気を治すのが仕事で、カウンセラーは心の悩みの相談を受けるのが仕事です。精神科医の治療は健康保険が使えますが、カウンセラーの相談は医療行為ではないので使えません。

 しかし、心の悩みと病気は境界がないので、精神科医とカウンセラーの仕事にも完全には境界線を引けません。特に最近では、カウンセラーが認知行動療法などので心の病気の治療を担当することがあります。

 2017年に公認心理師というカウンセラーの国家資格が誕生しました。それまでカウンセラーの資格が明確でなかったため、医療分野では十分な活動ができませんでした。今後は、カウンセラーが医療分野でも大きく活躍していくことになるでしょう。

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