セルフケアに役立つ!ストレス対処方法|メンタルヘルス

 更新日:2023年11月13日

新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中に生活の変化をもたらしました。特に、将来への不安、雇用状況の悪化、外出する機会が減ったことなどから、メンタルヘルスにも大変悪い影響を与えました。世界中で自殺者が増え、2007年から減少傾向にあった日本の自殺者数も、2020年からは増加傾向に転じています。

                  

死ぬことに恐怖を感じない人はいません。その恐怖に打ち勝って、死を選ぶということはどのような心の状態なのでしょうか?調査によると、自殺者の70%には遺書がありません。遺書を書き、覚悟をして自殺を試みる人はごく稀です。自殺のほとんどが衝動的な行為であり、亡くなった人たちの心の状態については推測するしかないのです。

自殺を試みても、辛うじて命が助かり、意識不明のまま救命センターに運ばれてくる人もいます。体調が回復した後に、精神科医が心のケアとして、死を選ぶに至ったプロセスを聞くのですが、不思議なことに、ほとんどの人が前後のことをハッキリ憶えていません。不安で頭が混乱してしまったところまでは記憶があるのですが、気が付いたら救命センターのベットの上だったというのです。

自殺とは、自分の意志で実行するというよりも、死にたい気持ちを抱いている時に、何かのきっかけでスイッチが入り、理性が働かない状態で実行しているようです。いわゆる解離状態というものを起こして、心が体から離れてどこかへ飛んでいった瞬間に危険な行為をします。「死んだらどうなるのだろう?」「痛くないだろうか?」「家族を悲しませる」と、死を目の前にして普通ならば思いつくようなことを考えるスキもなく、まるで死神に操られたように自殺を試みてしまうのです。

                  

 

今回は自殺に至るプロセスについて、さらに詳しいことを5つ紹介しましょう。最後には、自殺を予防するための大切なことを説明します。

【自殺に至るプロセスについて5つのこと】

 

1 心が弱ると、死にたい気持ちが湧いてくる

何事もなかったのに、ある日突然自殺をするということはありえません。必ず、自殺に至るまでの長いプロセスがあります。

お金や仕事の心配、人間関係の悩みなど、生きていく上で悩みがない人はいません。しかし、心には、辛いことに耐えられる限界があり、それを超えてまで辛いことがあると、心は徐々に弱っていきます。多くは、うつ状態になり、いつも落ち込んだ状態が続き、何かをする気力も萎(な)えてしまうのです。ここで、自分の様子がおかしいと感じて、誰かに助けを求められたら良いのですが、「努力が足りない」「怠けている」と勘違いし、「こんなことも乗り越えられないなんて、情(なさ)けない」と自分を責めてしまう人もいます。


さらに、この状態を放置していると、「ダメな人間だ」「価値がない人間だ」という声ならぬ思いが、心の中に湧いてくるようになります。特に、統合失調症という病気では、「お前は必要のない人間だ!」「死ね!」という罵声が実際に聞こえます。まるで死神に取り憑かれ、耳元で言葉をささやかれている状態です。

このような死にたい気持ちを抱えている人が、何かのきっかけで衝動的に自殺を試みます。引き金になるのは、いじめや争いごとで、心が傷つく言葉を浴びせられることが最も多いようです。最近、ネットの悪口で自殺を試みた有名人がいますが、悪意ある言葉が引き金になりました。心が傷ついて理性が飛んだ瞬間に、死神に命を持って行かれたのです。

 

2 身近な人が引き金を引いてしまう

意外なことに、自殺の引き金になる悪意ある言葉は、身近な家族、先生、パートナー、親友の口から発せられています。親しい間柄だと、話を聞きながらも、「しっかりしろ」「気にしすぎだ」と言って、相手の気持ちを否定しがちです。早く問題を解決したい気持ちから、説教になってしまい、むしろ相手を追い詰めてしまっていることも多いのです。また、「死ぬ勇気もないくせに」「死ねるものなら、死んでみろ」と自殺を煽(あお)ってしまう人もいます。

 

3 相談相手がいないとリスクが高くなる

自殺者は、どの国でも圧倒的に女性よりも男性に多い統計データが出ています。これは、平均して女性の方が、コミュニケーション能力が高く、困ったときに助けを求めることができるからです。実際の調査でも、男性の方が、相談相手のいないケースが多く、辛い時に弱音を吐くことを嫌う人も多いという結果も出ています。孤独で相談相手がいないことや、「弱音を吐いてはいけない」という考えを持っていることが、自殺につながる大きなリスクであることが理解できるでしょう。

 

4 アルコールや薬物で心が弱った時に起きやすい

最も自殺を起こしやすい状況として、アルコールや薬物で理性が低下している時があげられます。また、睡眠不足で疲れ切っている時、昼夜逆転などの生活リズムが狂った時などもリスクの高い状態です。理性が低下していると、心のブレーキが利かなくなり、死神につけこまれるスキができてしまうのです。

 

5 最後に・自殺を防ぐためには

人が自殺に至るまでには長いプロセスがあります。最初は、心が弱ってきて、自分は価値がないと思い込むようになり、死神に取り憑かれてしまう段階です。そして次は、悪意ある言葉が引き金になり、理性が飛んでしまい、死神に命をもっていかれる段階です。

最初の段階で、人は雰囲気が変わります。元気がない、表情が暗い、笑わなくなった、言葉が少なくなった、朝から酒臭い、など、身近な人ならば必ず気づくことができるサインが出ています。これが2週間以上続くならば、その人にはすでに死神が取り憑いているかも知れません。

自分から死神を追い払うには、カウンセラーなどの相談相手を探せたら良いのですが、プライドがあって弱音を吐くことが苦手な人は、逆に人を避けて孤独を好むようになったり、アルコールなどの嗜好品に頼る傾向があります。

自殺を防ぐためには、周りの身近な人の対応が重要です。もし、死にたいと相談されたら、「何で死にたいの?」「何が辛いの?」と聞いてあげましょう。「その考え方はおかしいよ」と、無理やり相手の考えを修正しようとしては逆効果になります。また、自分も苦労していることや、それを乗り越えた話をしても意味がありません。


話を遮(さえぎ)らずに聞いてあげて、気持ちを理解してあげることが大切です。自殺を食い止めようと努力するよりも、気持ちを理解してあげようと努力するべきなのです。寄り添ってあげる人がいれば、死神の居場所がなくなります。死神を追い払うことができるのは、相手を思いやる優しい心だけです。

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