大人の発達障害の種類

 更新日:2023年5月29日

学生の頃はそれなりにできていたのに、社会に出たら、誰でも普通にやっていることができないと悩む人がいます。みんなと同じように人付き合いができない、仕事で成果を上げられない、ミスが多い、など、自分としては一生懸命に頑張っているのに、周りから努力不足と誤解を受けてしまうのです。

いままでは気づかなかった何かの能力に問題があるのかも知れません。そのために無力感に苦しんだり、自分を責めたりします。

このような生きづらさの原因の一つが、どうやら脳の構造にあることが分かってきました。生まれつき脳の発達に偏りがあるため、考える力、人の気持ちを読み取る力、感情をコントロールする力など、脳の働きに問題が起こります。これを発達障害と呼んでいます。

障害には軽いものから重いものまでレベルがあり、軽い場合は、社会に出るまで気づかれないこともあります。ところが、就職や結婚してからの生活を通して、他の人と違うものが初めて明らかになるのです。大人になって気づかれる発達障害と言う意味で、これを大人の発達障害と呼びます。

大人の発達障害には種類があり、代表的なものに境界知能、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症があげられます。今回はこの3つの発達障害について説明しましょう。

大人の発達障害の種類

1 境界知能

知的な能力を数字で表したものが知能指数・IQです。読み書きの力、推理力、記憶力、考える速さなどを、知能検査で調べて測ることができます。世の中には、知的能力の高い人から低い人までいますが、平均100として偏差値で表します。

IQ100は中学で勉強することを完全に理解できるレベルです。天才アインシュタインのIQは190もありました。それとは逆に70より低い場合は、読み書きができないなどの日常生活に支障をきたしてしまうため、知的能力障害と呼ばれています。

IQが70から85くらいは、正常と障害のグレーゾーンに当たるために、境界知能と呼びます。高校は卒業できても、職場においては、常識がない、上司の言うことを正確に理解できない、仕事にミスがある、などの問題が起きます。例えば、算数が苦手なため、何パーセント割引と言われても値段が分かりません。

実は、日本人の14%の1700万人が境界知能に当たります。職場では仕事ができないと怒られ、かといって福祉の援助を受けたくても、なかなか障害と認められません。個性を生かして成功する人もいますが、社会での行き場がなくなり、うつ病になるケースもあります。

2 自閉スペクトラム症・ASD

自閉症は、自分の世界に閉じこもり、周囲との関わりを持とうとしない発達障害です。自閉症よりは障害が軽く、言葉の問題はありませんが、やはり相手の気持ちや、場の空気を読み取る能力に劣る場合をアスペルガー症候群と呼びます。

自閉症とアスペルガー症候群には境界線がなく、連続した障害であることから、これらをまとめて自閉スペクトラム症・ASDとも呼んでいます。

アスペルガー症候群は、知的な問題がないため、勉強の成績で評価される学校生活では障害が目立ちません。「大人しくて良い子」「天然さん」と呼ばれます。むしろ勉強ができて、優等生として高い評価をもらう場合もあるでしょう。ところが、難関大学を卒業しているのに、職場の共同作業ができないといったことで障害に気づかれます。

個人プレーや決められた仕事をこなすのは得意ですが、人の気持ちを読み取れないため、対人関係で問題が起きます。雰囲気を読み取れずに、一方的に話したり、悪気がないのに傷つくことを平気で言ってしまいます。また、何事にもこだわりがつよく、自分のやり方を変えられません。職場の仲間と連携がとれず、いつも浮いてしまいます。

職場だけでなく、結婚してからの家庭生活でも問題が起きます。パートナーや子供の気持ちを読み取れないことから、コミュニケーションが取れません。家庭の中で嫌われて、やはり浮いてしまうのです。子供との付き合い方が分からないといって悩む人もいます。

3 注意欠如多動症・ADHD

知的に問題はありませんが、不注意で落ち着きがないのが注意欠如多動症・ADHDです。我慢ができずに、思ったらすぐに行動してしまうという衝動性も見られます。

職場では気が散りやすく、仕事に集中できません。つまらないミスが多く、何度も言われても同じ失敗を繰り返すので、事務系の仕事は向いていません。地道にコツコツと努力することが苦手です。短期で怒りっぽい人もいます。しかし、こうした傾向が良い方向に働いて、営業職や経営者で成功する人もいます。

家庭では、片付けが苦手なため、だらしない印象を与えてしまいます。主婦の場合は、毎日同じように家事をすることができず、家族から文句を言われることがあるでしょう。浪費も多く、一攫千金を狙って、儲け話でお金のトラブルに巻き込まれることがあります。

子育ても苦手です。毎日同じように子供と接することができません。ちょっとしたことでイラっとして、子供を怒鳴りつけてしまうこともあります。

まとめ

大人の発達障害の代表的な3つを紹介しました。これらは全く別々のものではなく、合併することもあります。合併の場合は、特に傾向のつよいもので診断名をつけます。

大人の発達障害の人は、生きづらさからうつ病やパニック症などの精神疾患になることが大変多くあります。そこで精神科を受診して、初めて発達障害があることが指摘されます。

もっと早くに気づけていれば、辛い思いをしなかったかも知れませんが、決して遅いことはありません。精神疾患をゆっくり治して、次は自分の苦手を前提とした生き方を選ぶようにしましょう。最近では、軽い障害への理解や受け入れも進んでおり、障害雇用や福祉の輪も広がっています。こうしたものをどんどん利用してきましょう。

ハリウッドスターのトム・クルーズは、発達障害であることをもカミングアウトしています。文字を読むことに障害があるために、脚本が読めないそうです。人気が出るまでは、障害がバレないように、家族に脚本を読んでもらい耳で覚えていたそうです。成功の裏には大変な努力があったのです。しかし、これは極めて稀なケースです。

発達障害の人がみなトム・クルーズになる必要はありません。できないものはできないで良いのではないでしょうか?努力して健康な人と同じになることが幸せとは限りません。毎日背伸びをして生きていくよりも、周りの人に障害をよく理解してもらい、自分に合った無理のない生活を選んで生きる方が幸せです。

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