ストレスチェック後の産業医面談を受けない人が多い?

 更新日:2023年12月06日

ストレスチェック実施後、高ストレス者には産業医面談を受けることが推奨されています。しかし、実際に産業医面談を受ける労働者の割合は非常に少ないと言われています。なぜ、高ストレスと判定されていても、産業医面談を受けないのでしょうか。今回は、ストレスチェック後、産業医面談を受けない理由について解説していきます。

【ストレスチェック制度とは】


2014年6月に改正された労働安全衛生法に基づき、2015年12月から労働者50人以上の事業場では、事業者がストレスチェックを実施することが義務化されました。ストレスチェック制度の主な目的は「労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)」とされています。

ストレスチェックを実施することで、労働者自身でメンタルヘルスへの予防に取り組んでもらうことや、集団分析などを活用し職場全体としてメンタルヘルス対策を行うことが期待されています。また、ストレスの程度の評価に基づき高ストレス者と判定されたものに対しては本人の申し出により医師と面談を行い、必要に応じて事業者による適切な措置につなぐことが可能です。

⇒ブログ:【ストレスチェック制度とは


【ストレスチェック後、医師による面談指導を受けないことが問題となっている】


ストレスチェック制度実施初年度の実施状況を明らかにするために、全国の常勤労働者3891人を対象とした調査が行われました。その結果、労働者数50人以上の事業場に勤務している対象者のうち、ストレスチェックを実施したと回答した者の割合は52.5%、そのうち実際にストレスチェックを受検した者の割合は、92.0%でありました。

高ストレス者の割合は、受検者全体の14.2%でありました。受検者全体のうち、医師による面接指導を申し出た者は2.6%であり、「高ストレス者」と判定された者で、医師による面談指導を申し出た者は18.6%でありました。ストレスチェックを受検した労働者のうち、自身の職場で職場環境改善が実施されたと回答した者の割合は3.3%でありました。

つまり、3891人のうち、ストレスチェックを実施した者は、1879人。そのうち高ストレス者は266人で、この266人のうち実際に産業医面談を行ったものは、49人ということがわかります。

一方で、平成30年「労働安全衛生調査(実態調査)」において厚生労働省が実施した事業場調査によると、ストレスチェック制度の実施義務対象事業場のうち、90.9%の事業場がストレスチェック制度を実施しており、うち集団分析の実施率は77.9%と報告されています。平成29年度の厚生労働省によるストレスチェック初年度の実施状況の報告では、労働者の受検率は78.0%、医師による面談指導を受けた労働者の割合は受検者全体の0.6%と報告されています。

これらのことから医師による面談指導の申し出を行わない人が多く、問題視されております。では、なぜ医師面談を受けない人が多いのでしょうか?それは医師による面談を受けるためには、事業者側に自分が高ストレスに該当することを開示する必要があるからです。ストレスチェックの結果により、降格、減給、左遷などを行ってはならないという法律がありますが、労働者本人が事業者側に高ストレスであることを開示することをためらってしまうのは理解できることです。

⇒ブログ:【産業医面談って意味ないの?

【ストレスチェック制度の課題と今後の展望】


高ストレス者に対する医師面談では、面談を申し出ない労働者への支援が不足することから、高ストレス者であることを会社側に知られずに労働者が産業保健スタッフと面談ができる仕組みを事業者が検討することも重要であります。高ストレス者のうち、専門家へ紹介が必要なメンタルヘルス不調の疑いのあるものは47.3%と報告されており、医師面談による適切な医学的アセスメントと早期の医療機関受診勧奨は意義があります。


ある調査では、ストレスチェックを実施するだけでなく、職場環境改善などの事後対応を組み合わせることで労働者のストレス反応の改善や有用性の実感が得られることが示されております。

職場改善に関する全国の事業場調査では、ストレスチェック実施後に何らかの職場環境改善の取り組みが行われた事業場の割合は1年目(2016年)に37.0%、2年目(2017年)で44.2%と徐々に増加しているが、その内容の多くが「経営層への報告と説明」となっており、現時点で科学的根拠が最も蓄積している「労働者参加型職場環境改善」を行った事業場はそのうちわずか4~7.5%でありました。


エビデンスに基づく労働者のメンタルヘルス対策としてストレスチェックをさらに有効に活用するため、科学的根拠の収集とともに実務上の現場の課題を軽減させる対策を急ぐ必要があります。

【まとめ】

ストレスチェックを実施するだけになっていませんか?ストレスチェックは実施するだけでは意味がありません。実施した後、メンタルヘルス不調者に対して適切な対応をすること、職場全体のメンタルヘルス対策をすることが必須です。
ミーデンでは、ストレスチェック、産業医面談、また会社に知られずに産業保健スタッフに相談する相談窓口を承っています。職場に本質的なメンタルヘルス対策を取り入れたい企業様はぜひお気軽にご連絡ください。

【参考文献 「精神科 第36巻 第4号」 編集 精神科編集委員会 発行 科学評論社
「ストレスチェック制度に関する最近の話題」 佐々木 那津、駒瀬 優、川上 憲人】

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