ストレスチェック後の産業医面談を受けない人が多い?

 更新日:2023年12月13日

50名以上の労働者を抱える事業場では、年に一回ストレスチェックテストの実施が義務付けられています。

 

ストレスチェック実施後、高ストレス者には産業医面談を受けることが推奨されています。しかし、実際に産業医面談を受ける労働者の割合は非常に少ないと言われています。なぜ、高ストレスと判定されていても、産業医面談を受けないのでしょうか。今回は、ストレスチェック後、労働者が産業医面談を受けない理由について解説していきます。

 

 

まず、ストレスチェックとは何でしょうか?

ストレスチェック制度とは?

ストレスチェックとは、労働者の日々の心理的なストレス程度を把握するための質問形式の検査のことを言います。57項目の質問に回答していき、日々のストレス度合を測ります。20146月に改正された労働安全衛生法に基づき、201512月から労働者50人以上の事業場では、会社がストレスチェックを実施することが義務化されました。ストレスチェック制度の主な目的は「労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)」とされています。

 

ストレスチェックを実施することで、労働者自身でメンタルヘルスへの予防に取り組んでもらうことや、集団分析などを活用し職場全体としてメンタルヘルス対策を行うことが期待されています。また、ストレス程度の評価に基づき高ストレス者と判定されたものに対しては本人の申し出により医師と面談を行い、必要に応じて会社による適切な措置につなぐことが可能です。

 

このようなストレスチェック制度ですが、ストレスチェック後、高ストレスと判定されても、産業医による面談を受けないことが問題となっています。

 

ストレスチェック後、産業医による面談を受けないことが問題となっている

ストレスチェック制度実施初年度の実施状況を明らかにするために、全国の常勤労働者3891人を対象とした調査が行われました。その結果、労働者数50人以上の事業場に勤務している対象者のうち、実際にストレスチェックを実施した者は、1879人でした。そのうち高ストレス者は266人で、この266人のうち実際に産業医面談を行ったものは、49人でした。

 

 

 

一方で、平成29年度の厚生労働省によるストレスチェック初年度の実施状況の報告では、労働者のストレスチェック受検率は78.0%、医師による面談指導を受けた労働者の割合は受検者全体の0.6%と報告されています。

 

これらの数値からも高ストレスと判定された場合でも、産業医による面談を受けないケースが多いのがわかるでしょう。また、会社でストレスチェックの実施に携わったことがある方は、産業医面談を希望してくる社員がほとんどいないことを感じたことがあると思います。

 

では、なぜ産業医面談を受けない人が多いのでしょうか?理由として、産業医との面談を受けるためには、会社側に自分が高ストレスに該当することを開示する必要があるからと言われています。基本的にストレスチェックの結果は守秘義務のため、自分自身しか見ることができません。しかし、産業医による面談を受けるためには、会社側に自分が高ストレスであるということを開示し、面談をとりつけてもらう必要があるのです。高ストレスであることが会社側に知れても、解雇、減給、降格など不利益な扱いをしてはならないのですが、自分が高ストレスであるということを会社側に知られたくないという気持ちは理解できるでしょう。

 

以上のような理由から、高ストレス者と判定された場合でも医師による面談を受けないとされています。

 

 では、どうしたら良いのでしょうか?

 

ストレスチェック制度の課題の解決策

解決策として、高ストレス者であることを会社側に知られずに労働者が産業保健スタッフと面談ができる仕組みをつくることがあげられます。社内で産業保健スタッフを雇用するのが難しい場合、外部機関に委託することも候補として考えましょう。外部機関ではカウンセラーが対応することが多く、医師に相談するよりも相談しやすい体制づくりがなされています。大企業では、内部と外部どちらにも相談窓口があり、中小企業では、費用面から外部に委託するケースが多いようです。産業医でも、産業保健スタッフでも、外部機関のカウンセラーでも、労働者の状態によって、一度精神科医に診てもらう必要があると判断した場合、労働者に精神科に行くよう勧めます。

よくここで勘違いが起きるのが、産業医が精神科医ならばその場で治療してくれるのではないか。ということです。産業医における面談は医療行為ではないため、産業医は労働者の治療を行ってはいけません。また、産業医が自分のクリニックに連れてきてそのまま治療を担当することも基本的にNGであると言われています。そのため、産業医が労働者に治療の必要性を感じた場合は、精神科に行くよう勧めます。

 

ある調査では、高ストレス者のうち、専門家へ紹介が必要なメンタルヘルス不調の疑いのあるものは47.3%と報告されており、高ストレス状態を放置していることは大変危険であると言えます。労働者は積極的に専門家へ相談することが必要ですが、会社側は労働者が相談しやすい体制づくり、サポート体制をつくることが求められています。

 ストレスチェックを実施するだけになっていませんか?ストレスチェックは実施するだけでは意味がありません。実施した後、メンタルヘルス不調者に対して適切な対応をすること、職場全体のメンタルヘルス対策をすることが必須です。ミーデンでは、ストレスチェック、産業医面談、また会社に知られずに相談できる外部相談窓口を承っています。職場に本質的なメンタルヘルス対策を取り入れたい企業様はぜひお気軽にご連絡ください。

【参考文献 「精神科 第36巻 第4号」 編集 精神科編集委員会 発行 科学評論社
「ストレスチェック制度に関する最近の話題」 佐々木 那津、駒瀬 優、川上 憲人】

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