女性のうつ病について【女性の方が男性より2倍うつ病になりやすい】

 更新日:2022年11月26日

ごく最近の調査では、日本人の6~7人に1人が、一生のうちにうつ病を経験することが分かりました。これを性別で見てみると、男性の場合、10人に1人が一生のうちにうつ病を経験し、女性の場合は5人に1人という数字が出ています。なんと女性の方が2倍もうつ病になりやすいのです。

 

【女性がうつ病になりやすい理由】

女性がうつ病になりやすい理由は2つあります。1つ目は卵巣で分泌される女性ホルモンの問題です。エストロゲンという女性ホルモンは、全身に働いて女性らしい美容や健康を保ち、脳にも良い影響を与えます。うつ病には、脳のセロトニンという物質が関わっていますが、エストロゲンは、このセロトニンの分泌にも影響を与えます。そのために、エストロゲンの分泌の変化が、うつ病の発症と大きな関係があるのです。

2つ目の理由は、女性の方が、生活上の役割に変化が多いためです。男性にはない出産育児があるので、男性のようにずっと同じ会社で働いているということがあまりありません。共働き、出産、子育て、介護など、女性の方が人生に変化が多いのです。生活の変化がストレスになると、うつ病を発症しやすくなります。

年をとるに従って、人生にはさまざまな出来事があります。これをライフステージと言います。女性には、思春期、成熟期、更年期、老年期といったライフステージがあり、ホルモンバランスが変わることが加わり、それぞれにうつ病になるリスクがあるのです。

今回はライフステージごとに見られる女性のうつ病について説明しましょう。

【ライフステージごとの女性のうつ病】

1.思春期うつ病

子供であっても、小学生からうつ病があります。最近では、小学生ではクラスの1割程度、中学生では2割程度にうつ病の傾向があると調査で出ています。女子は10才くらいからエストロゲンが分泌されるようになり、月経が始まります。そのために、中学生以上では女性の方が多くうつ病になります。また、家庭、友人関係、恋愛、勉強や進路などの問題なども発症に関わっています。

思春期のうつ病の特徴は、やる気がなくなり、学校を遅刻や欠席するようになることです。同時に睡眠時間が長くなり、朝が起きられません。症状は体に出やすく、倦怠感、頭痛、腹痛を訴えることがあります。また、気分のムラがあり、家では怒りっぽくなります。こういった症状のために、「怠け」とか、「わがまま」と誤解されてしまうことがあります。

2.月経前症候群・PMS

 月経前の約1週間に、腹痛・イライラなどの不調が起きることを月経前症候群・PMSと呼んでいます。これは、エストロゲンの急激な変化による症状です。特に、うつ気分やイライラなどの心の症状がつよく出る場合を月経前不快気分障害(げっけいまえふかいきぶんしょうがい)・PMDDと呼んでいます。重症の場合は、イライラで仕事や人間関係に大きな支障が出ることもあります。

3.失恋・浮気によるうつ病

年齢に関わらず、失恋や浮気をされたことはトラウマとなり、うつ病の大きな原因になっています。失恋うつ病の特徴は、まるですべてを失ったように虚しさがつよく、心はいつも過去にとらわれるようになります。相手に裏切られたことが頭から離れません。自信を失い、自分は価値のない人間と思ってしまいます。

「たかが失恋で・・・」「浮気されたぐらいで・・・」と思う男性もいるようですが、大きなダメージを受けて長期に患う女性もいます。仕事や家庭生活に支障が出る場合、特に不眠や食欲不振がある場合には、早めに精神科を受診しましょう。薬の治療を受けて、睡眠や食欲を整えることが必要になるでしょう。

4.産後うつ病

「マタニティーブルー」と言う言葉を聞いたことがあると思います。これは妊娠の初期に理由もなく気分が落ち込むことです。妊娠の2割くらいの人に見られ、つわりと重なることがあります。エストロゲンの変化によるもので、ほとんどは出産によって治ります。ところが、出産後3週間たっても、気分の落ち込みが続く場合を産後うつ病と呼びます。

産後うつ病は、女性のうつ病の中で最も多いものです。その特徴は、涙が出る、怒りっぽい、など、情緒の不安定さが目立ちます。子供をかわいいと思えないことや、育児をきちんとできないことから自分を責めてしまいます。自分は罪深い人間だと思うようになり、自殺を試みる人も多く、出産後の母親の死亡原因の1位になっています。

背景に夫や夫の実家との関係が良くないことが影響していることがあります。慢性化することもあり、その後の子育てに悪い影響を与えてしまいます。

5.更年期うつ病

45才から50才くらいにかけて、エストロゲンが徐々に減り、生理が止まるまでの時期を更年期と呼びます。エストロゲンは、ゆるやかに減るのが普通ですが、急激に減る場合に、自律神経失調や痛みなどのさまざまな症状が現れます。これを更年期障害と呼んでいます。その中でも、気分の落ち込みなどのうつ症状が見られる場合を更年期うつ病と呼びます。

更年期は体の変化だけでなく、子供の自立、親の介護や死別、管理職になる、などの大きな出来事も起こる時期です。これらの出来事が更年期うつ病の背景になっています。特に、子供が家からいなくなる孤独からうつ病になるケースが最も多く、これを空の巣(からのす)症候群とも呼んでいます。

6.老年期うつ病

老年期になるとエストロゲンの分泌はなくなってしまい、美容の衰えや生活習慣病が起ります。こうした健康上の問題に加えて、配偶者との死別や孤独な生活がうつ病になると引き金になります。65才以上のうつ病を老年期うつ病と呼びますが、認知症の症状が出てくる時期とも重なります。気持ちの落ち込み、物忘れ、共に似たような症状があるため、区別が大変難しくなります。

まとめ

以上、女性特有のうつ病を紹介しました。女性のうつ病は、女性ホルモンの変化が大きな原因です。しかし、ライフステージごとに見てみると、発病の背景に家族関係の問題も大きく関わっていることを理解していただけたかと思います。良くしていくためは病院での治療だけでなく、家族の協力も必要なのです。

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