依存について4つのこと

 更新日:2023年6月9日

「やめたいのに、やめられないこと」はありませんか?例えば、「体重を減らしたいのに甘い物がやめられない」、「肝臓に問題が出ているのにアルコールをやめられない」、といったような「やめたいのに、やめられない物」。それから、「お金がないのにブランド物の買い物がやめられない」、「勉強があるのにゲームがやめられない」といったような「やめたいのに、やめられない行為」。このような、やめられない物や行為を依存症ではないかと悩んでいる人も多いかも知れません。

最初は、辛いことを忘れるために始めたことが、いつのまにか習慣になることがあります。楽しみとか趣味と言えるレベルなら良いのですが、生活の中で大きな比重をしめるようになり、「やりすぎだから少しやめないと」と感じるようになります。これは習慣を超えて、依存かも知れません。依存には広い意味があり、軽症から病気である依存症のレベルまであります。このレベルなら軽症であり、やめることはそれほど難しくありません。

ところが、人によっては心を完全に支配されてしまい、朝から晩までそのことばかりを考え、他のことには集中できなくなることがあります。家族や社会的な立場など大切なものを失っても、まるで何か取りつかれたように、そのことをやろうとします。これが依存症です。依存症とは、「やめたいのに、やめられない」を通り越して、「やめなくてはいけないのに、やめられない」という状態です。依存症は、病気であり、自分の力だけで治すことはできません。

依存症といえば、アルコール依存症や、競馬などのギャンブル依存症を思い浮かべる人が多いと思います。最近増えているのは、ネットゲームやオンラインカジノなどのインターネットを通じた依存症です。身近なスマホが依存症の原因になる時代です。

やめたいことをやめるにはどうしたら良いでしょうか?また、依存症にならないためにどうしたらよいのでしょうか?今回は依存についての説明をしましょう。

依存について4つのこと

1.脳の仕組み

そもそも人は、楽しいこと、気持ちのよいことを求め、それを繰り返すようにできています。このような快楽を繰り返す本能は、仲間や家族をつくり、社会を発展させるための大切なものです。これには、脳の中にある報酬系という部分が関わっています。報酬とは「ご褒美」という意味です。人は何か楽しい思いをすると、それを記憶して、それがご褒美となり、ご褒美を楽しみにすることで元気になります。これが脳の報酬系の働きです。

報酬系の働きがあるので、人は辛い時でも、楽しいことを目標にして頑張ることができます。苦労の後に幸せが待っていると考えることができるのです。ですから、気持ちを楽にしてくれることが習慣や依存になることは、脳の仕組みからも当然のことです。

2.報酬系の暴走と依存症

何かに依存を続けていると、慣れが生じて、最初ほど気分が良くなりません。人によっては、脳の報酬系が暴走するようになり、よりつよい刺激を求めて依存にハマっていくことがあります。まるで何かに取りつかれたようになり、嘘をつき、人の信頼を失っても依存をやめず、もちろん治療も受けようとしません。これが依存症です。

依存症になりやすい人の特徴として、脳の中のセロトニンの分泌が低下していることが知られています。セロトニンが不足していると言えば、うつ病、パニック症、不安症、強迫症、摂食障害などの病気もそうです。ですから、こうした心の病気やその傾向を持っている人は、依存症になりやすいのです。元の元気が良くなってくると、依存も減っていきます。

3.依存と環境

麻薬類やアルコールは、報酬系に直接作用するために、依存性が高い物質です。特に、覚せい剤やヘロインなどは依存性がつよく、1回でも使用すると依存症になるようなイメージがあります。しかし、覚せい剤やヘロインを使用したからと言って、実際に依存症になるのは20~30%の人です。依存症になるのは、薬そのものよりも、その人の体質や環境の影響がとても大きいのです。

1970年代、ベトナム戦争では、たくさんのアメリカ兵がベトナムに派遣されました。戦場の恐怖から逃れるために、アメリカ兵の中にはヘロインを常用する人が大変多かったそうです。ベトナム近辺には麻薬の産地があり、簡単に入手ができたのです。戦争が終わり、故郷でも同じようにヘロインの依存が続いたかと思いますが、実際はそうではありませんでした。なんと90%のアメリカ兵は、自然にヘロインをやめることができていたのです。ベトナムと違って、違法にしかヘロインが手に入らないという事情もありますが、戦争の恐怖から解放されることで、薬物への依存がなくなったのです。

この事実から、戦場のようないつも緊張している環境では、依存症になりやすいことが分かります。不安や孤独、生活への不満、つよいストレスがあることが、人を依存症にさせてしまうのです。ですから、環境を変えることで依存を改善させることも理解できるでしょう。

4.依存をやめる方法

辛いことがあった時、受け止めきれないことが起きた時、そのままでは心が壊れてしまいそうであれば、逃げ場を探すことも大切です。ゲームをする、思い切った買い物をする、お酒を飲む、このように好きなことをして、気持ちを逃がしてあげることはとても大切なことです。

しかし、「ちょっとハマり過ぎているな」と感じたら、立ち止まってみましょう。ハマり過ぎてしまう背後には、心の苦しみがあるのです。無理のしすぎ、我慢のしすぎ、孤独、絶望、こうしたことを抱えているのです。

最後に

依存症にならないためには、一つことばかりにのめり込まずに、できるだけたくさんの気分転換や逃げ場を持つようにしましょう。特に、自分の気持ちを人に話すことはとても大切なことです。家族や友人、心理カウンセラーと話す機会を持ちましょう。誰かに相談して、辛い気持ちを理解してもらえるだけでも心は楽になります。また、仕事を変えるなど、思い切って生活全体を見つめ直すことも必要かも知れません。そうすれば、依存は自然に消えてくるようになります。「カウンセラーに悩みを話したら、あまりゲームをしないで済むようになった。」「仕事を変えたらお酒の量が減った」という感じです。

このように、「やめたいのに、やめられないこと」があるならば、「やめよう、やめよう」と我慢するよりも、根っ子にある心の苦しみを楽にすることが解決方法なのです。

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