企業のメンタルヘルス対策とは?

 更新日:2024年11月21日

  企業におけるメンタルヘルス対策はどのようなことが期待されているのでしょうか?メンタルヘルス対策への全国的な注目が増すなか、企業ではどういった対策が行われているのか、そもそもメンタルヘルス不調とはどういう状態のことを指すのでしょうか?

企業のメンタルヘルス対策の取り組みについて解説していきます。

メンタルヘルス不調とは

メンタルヘルスとは簡単にいうなら「心の健康状態」を表します。

厚生労働省によると、メンタルヘルス不調とは「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう」とされています。
(厚生労働省・労働者の心の健康の保持増進のための指針より)

メンタルヘルス不調は「心の健康がおびやかされ、体の健康にも悪影響を与えている状態」ということです。メンタル不調に陥ると不安感や深い悩み、気力が出ない、倦怠感などの症状が現れ、もっと悪化すると自殺につながるリスクもあります。

令和2年度の年間自殺者数は全国21,081人、そのうち被雇用者・勤め人は6742人とされており、自殺者の3割がどこかの企業に勤める人という結果でした。つまり自殺者を減少させるためには、企業によるメンタルヘルス対策への積極的な取り組みが求められているのです。

メンタルヘルス不調により生じるリスク

メンタルヘルス不調によりリスクを生じるのは、労働者だけではありません。

企業にとっても、労働者がメンタルヘルス不調に陥ってしまうことで様々なリスクが生じるとされています。

(厚生労働省・こころの耳より)

1.職場の生産性の低下

労働者の気力・活力の低下、判断力の鈍化によって、業務の処理能力が低下し、部署内の生産性低下に繋がります。また企業の長期休業者の約半数がメンタルヘルス不調によるとされており、企業に求められているのは早期の発見、早期の対処です。

メンタルヘルス不調は早期発見、対処出来るほど、早い回復が見込めるため、研修による企業全体での意識付けが重要です。

2.モチベーションの低下

気力・活力の低下から労働意欲の低下につながります。研修を通して労働者自身にメンタルヘルスへの意識付けがされれば、早期に自ら上司や専門の窓口へ相談することで対処もできます。

3.仕事の事故・トラブルの発生

メンタルヘルス不調は集中力の低下、不眠や倦怠感よる注意力の低下にもつながります。部署内でのトラブルが取引先にも損害を与えるリスクも孕んでいるため、労働環境の改善や業務内容の変更が必要になるでしょう。仕事での失敗は労働者自身にとっても、ショッキングな出来事なので職場全体でサポートする必要があります。

メンタルヘルス対策の「3つの段階」と「4つのケア」

2015年のメンタルヘルス対策の義務化から厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」として、予防の「3つの段階」とメンタルヘルス対策の「4つのケア」を策定しました。

それぞれを紹介します。

3つの段階:一次予防(未然防止)、二次予防(早期発見)、三次予防(職場復帰支援)を、それぞれの段階に合わせてメンタルヘルス対策を行います。

4つのケア:セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4種類があります。それぞれケアを行う対象が異なるため、それぞれの違いを認識する必要があります。

予防の3つの段階

3つの予防の具体的な内容を見ていきましょう。

3つの段階

内容

一次予防【未然防止】

l  ストレスでメンタル不調を起こす前に予防しようとする段階。

l  労働者自身にメンタルヘルスへの知識を持ってもらい、ストレスへの対処を促す。

l  監督者側には労働環境の改善、対処法のアドバイスを行うことで労働者のメンタルヘルスへ配慮する職場環境改善と雰囲気作りを行う。

二次予防【早期発見】

l  メンタルヘルス不調を起こした労働者の早期発見、早期対応を行おうとする段階。

l  労働者が自発的に相談・対応することもあれば、専門家による治療が必要な段階で発見することもあるが、いずれも発見したら早期に適切な対応を行う。

l  労働者が相談しやすい職場環境、監督者側も労働者のメンタルヘルスへの配慮を行う。

三次予防【職場復帰支援】

l  メンタルヘルス不調により休職中の労働者が、職場復帰できるよう支援すると考える段階。

l  復職へ向けた精神面のサポート、体調に合わせた労働内容の変更、職場全体で治療への理解を進める段階。

l  三次予防の段階が不十分だと、再発や離職につながるため細やかな配慮が必要になる。

一次予防は、労働者・管理者を問わず、ストレスマネジメント研修や年1回以上のストレスチェックを行うことで、それぞれの立場に合わせたメンタルヘルスへの教育・意識付けを行う段階です。意識付けによりメンタルヘルスへの正しい認識を持ち、ハードルを下げることを目的にしています。

二次予防は、社内・社外でのカウンセラー等による相談窓口の開設、産業医と面談できる場の設定のほか、外部サービスとの連携を行う段階です。早期発見・対処するためには、メンタルヘルス不調に対応するための下地作りが必要となります。

三次予防は、精神科医との連携、外部EAPで職場復帰を支援し、再発を防止する段階です。職場全体で職場復帰への細やかな取り組みを行うことが、再発と離職を防止する1番の対策になります。

メンタルヘルス対策の4つのケア

4つのケアの内容をそれぞれを見ていきましょう。

4つのケア

内容

セルフケア

「自分の健康は自分で守る」という考えに基づいて、セルフケアを行うこと。

ラインによるケア

現場レベルの管理者が行うケア。職場環境の改善、相談などを行うこと。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医や心理スタッフ、人事・総務スタッフが行うケア。企業におけるメンタルヘルス対策の企画・立案を行う。

事業場外資源によるケア

社外の専門機関や専門家の支援を受けることによるケア。

セルフケアでは、年1回以上のストレスチェックで自らのメンタルヘルス状態に気付いてもらい、自ら予防対策をとってもらうことが目的です。

ラインによるケアでは、管理者にメンタルヘルス研修、労働環境の改善への意識を持ってもらい、現実に改善を目指すことが目的です。

事業場内産業保健スタッフによるケアでは、医師、保健師、衛生管理士などの専門スタッフによるカウンセリングや相談を通し、企業内のメンタルヘルス対策の拡充を目的にしています。

事業場外資源によるケアでは、外部EAPや専門家が介入することで、より高度な専門性を持ったスタッフによるケアで労働者へのメンタルヘルス不調に対処することを目的としています。

まとめ

2015年の法改正から、従業員50人以上の企業では年1回のストレスチェックや産業医の設置が義務化されました。今後もメンタルヘルス対策への意識は高まっていくことが予想されます。労働者のメンタルヘルス不調は企業の生産性にも直結する問題ですから、各企業のメンタルヘルス対策には今後も注目していく必要があるでしょう。

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