産業医の正しい選び方は

 更新日:2023年12月19日

産業医は企業で働く従業員の健康を維持するために必要な存在です。事業場の従業員数が50名を超えた企業には、産業医の選任が義務になりました。産業医は従業員の心と体を守るため、労働安全衛生や健康相談、休職・復職の支援など職員の健康をトータルサポートしてくれます。

従業員の健康維持に重要な役割を果た産業医ですが、医師にもそれぞれの特徴があるため、選び方を間違えると良い結果を得られないばかりか逆効果になってしまうでしょう。そこで本記事では産業医の選び方を解説し、産業医選びを失敗しないポイントを紹介します。

産業医の選任基準と業務を理解する

事業場に産業医を置くという基準は、労働安全衛生法に規定されています。産業医の選任は「事業場で常時使用する従業員50人以上」で、さらに「従業員が50人以上に達した日から14日以内」に産業医を選任し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

事業場とは支店や支社、店舗も含まれ、50人以上が働く事業場は必ず事業場ごとに産業医を選任しなければいけません。そして産業医を選任されると、次の業務を行うことになります。

1.安全衛生委員会の構成員になり、アドバイスを行う(義務)

2.事業場を巡回し、危険な箇所など問題があれば改善のために助言・指導する(義務)

3.従業員に健康・衛生管理の研修を行う

4.従業員の健康診断結果を確認し、異常が見つかれば就業判定を行う

5.従業員からの健康相談を受ける

6.休職者・復職者との面談

7.ストレスチェックの計画・実施・判定

8.高ストレス状態の従業員との面談・指導

9.長時間労働が認められた従業員との面談・指導

産業医は医療行為を行わない代わりに、従業員の心身の健康を守るために高い知識とスキル、メンタルヘルスへの理解が必要な存在です。しかし、産業医であればだれもがこうしたスキルを持っているとは限らず、企業のニーズとミスマッチを起こすこともあります。特に産業医をこれから導入しようと考える企業からは、主治医のように医療行為を提供されると思い込み、産業医の役割と認識にズレが生じることもあります。

そのために産業医を選ぶ際は、自社のニーズに合った正しい産業医の選び方を企業側も知っておく必要があるのです。

産業医を選ぶ際に相談できる場所

普段から職員検診などで近隣のクリニックなどを利用している場合、そのクリニックの医師に産業医としての見識があれば問題はありません。しかし、現実にはそのように上手くいくケースばかりではなく、産業医をゼロから探し始めることが多いことでしょう。

そこで産業医を選ぶにあたって、相談先としておすすめの4つを紹介します。それぞれにメリット・デメリットがあるので、その点も紹介していきます。

●定期健康診断を行っている病院等

●都道府県や地域の医師会

●近隣のクリニックなど自社の人脈

●医師紹介会社

定期健康診断を行っている病院等

企業が普段から健康診断を行っている病院や検診団体であれば、従業員の健康状態を把握しやすく、従業員んも顔見知りの医師で安心感があるでしょう。

・メリット

①医師を選任する時間が大幅に短縮できる

②従業員が顔見知りの医師なので安心感に繋がる

・デメリット

①病院によっては産業医契約に対応していない

②自社のニーズに適しているとは限らない

病院に依頼する際は事前に産業医契約が可能か、自社に最適な産業医を確保できるか検討してから利用してください。

都道府県や地域の医師会

医師のほとんどは医師会に登録されているため、医師会を経由すれば産業医契約が可能な医師を紹介してもらうこともできるでしょう。都道府県だけでなく、地域によっては自治体ごとの医師会もあるので相談してみてください。

・メリット

①都道府県の医師会はその地域に属する医師を把握しているので、ニーズに最適な産業医の紹介を受けやすい

②近隣の医師を紹介してもらえることが多いので、相談しやすい

・デメリット

①医師会によっては産業医の紹介を行っていないこともある

②医師会から紹介してもらった産業医が自社に適しているとは限らない

③紹介を受けることはできても、その後の契約交渉は企業の担当者が行う必要がある

医師会が行うのは紹介までであって、その後の交渉は企業の担当です。条件面で折り合わない、産業医としての経験がないなどの課題があったとしても、解決するのは企業側の努力が必要になります。

近隣のクリニックなど自社の人脈

企業によっては日頃から社員が利用しているクリニックや、協業する他社が契約している産業医を利用することも手段の1つです。

・メリット

①産業医と日常的な繋がりがあるため信頼関係が築かれている

②他社から産業医の評判など情報を得やすい

・デメリット

①自社に最適な産業医とは限らない

②従業員によっては相談しづらいと感じることもある

近隣のクリニックや他社でも契約している産業医なら元々の信頼関係があるだけでなく、相談しやすいので企業にとっても任せやすい人材になるでしょう。ただし、相談しやすくても自社のニーズとミスマッチが起こる可能性はあるので、事前に産業医として適しているか検討することは大事です。

医師紹介会社

医師専門の人材派遣会社に相談する方法も有効な手段です。

・メリット

①医師紹介会社は企業からヒアリングして、最適な産業医の紹介を行ってくれる

②これから産業医と契約する場合でも、別の産業医と契約したい場合でも紹介を受けられる

③契約後のサポートも医師紹介会社が行ってくれることがある

・デメリット

①紹介手数料などの料金が発生する

②医師紹介会社によって登録されている産業医が異なることもありうる、必ず求めた人材を紹介できるとは限らない

企業側にとっても最も効率よく産業医を探す方法が、医師紹介会社に依頼する形です。契約交渉から契約後のサポートまで、医師紹介会社が行ってくれることも多いので、企業側にとっても負担が少ないでしょう。

産業医選びで失敗しないために知っておきたいポイント

産業医は嘱託・専属問わず企業との契約が発生する以上、期間や条件が定められます。そのため契約してから「この産業医はやめておけばよかった」と後悔しても、すぐに新しい産業医と変更することは難しいことでしょう。

産業医選びで失敗しないためには、2つのポイントを意識して検討してください。

●良い条件だけを見て判断しない

●産業医の業務をきちんと理解する

良い条件だけを見て判断しない

企業にとっては産業医との契約にもコストが発生します。そのため「契約金」「交通費」など諸経費が発生するため、「出来る限り安く済ませたい」と考えるのは当然です。

しかし、産業医は前述の通り、高い見識とスキル、面談ではコミュニケーション能力に課題解決能力も求められます。条件面だけでなく、総合的に自社に必要な産業医であるか否かを検討してください。

産業医の業務をきちんと理解する

メンタル不調者が多いから、メンタルヘルス対策を行うために精神科医の産業医を選ぶ、不健康な従業員が目立つから、内科医の産業医を選ぶなど、企業担当者が産業医の業務をきちんと理解しないまま、産業医と契約をし、産業医側と揉めることが多くなっています。

企業担当者は、きちんと産業医の業務を理解し(産業医は治療ができない、企業側と労働者側の中立的立場である等)、自分の会社に合った産業医を選ぶことをおすすめします。

まとめ

産業医は従業員との面談だけでなく、労働環境改善のために具体的・総合的なアプローチができる人材を選びべきです。従業員が50人以上の事業場には産業医を配置する義務がある以上、誰でも良いわけではなく、自社に最適な産業医を探すことが大事です。

本記事で紹介した相談先や失敗しないポイントをぜひ参考にして、自社に合った産業医を選んでください。

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