ストレス熱と咳
更新日:2022年2月15日
新型コロナの流行で、毎日の体温や咳のチェックが当たり前になりました。熱や咳があるので、慌てて病院に行き検査をしたのに、「異常がないので心配ありません」と言われることはありませんか?それでは、何の熱や咳なのでしょうか。実は、病院にかかるような熱や咳のかなりの多くが、ウイルスや細菌の原因でなく、ストレスによって起きていることがあります。
ストレスによって起きる病気を心因性と呼んでいます。ストレスは情動を不安定にして、それが自律神経系やホルモン系を通じて、さまざまな体の問題を起こします。今回は心因性の発熱と咳について説明します。
心因性発熱
大きなイベントを控えて、突然40度近い高熱が出ることがあります。試験、試合、発表会、手術の前など、まるで参加したくない気持ちがそのまま反映したかのように高熱になります。血液などの検査をしても異常がありません。解熱剤がほとんど効かず、それでいてイベントが終わるとスーと解熱します。
はたらか見ていると、心の問題が原因で起きているように見えるので、心因性発熱と呼ばれています。このような一過性の高熱は子供に多く見られ、発熱で病院を受診した子供の20%くらいが心因性発熱であるというデータもあります。もちろん大人でも見られます。
また、37度前後の微熱が慢性的に続くこともあります。特に過労や心配事などのストレスが長く続いた時に起こり、体がだるく、日常生活にも支障をきたすこともあります。検査をしても異常はなく、やはり解熱剤があまり効きません。これも心因性発熱と呼ばれています。大人にも多く見られ、2週間以上続く37度以上の発熱で病院を受診する半分近くが心因性発熱であるというデータもあります。
心因性発熱は、ストレスによって情動が不安定になり、自律神経系が刺激されて体温を上げてしまっている現象です。これに対して通常の発熱は、ウイルス・細菌の侵入や外傷などにより炎症が起き、そこで作られる炎症物資が脳を刺激して発熱するものです。
病院で行う血液検査ではこの炎症物質を測っているので、心因性発熱では検査に異常がでません。解熱剤は、この炎症物質がつくられるのを抑えるのが役割なので、心因性発熱には効果がありません。
心因性発熱の治療は、原因のストレスから解放されることしかありません。「気のせいなのだから、気持ちで克服する」という発想は間違いです。自分のキャパを越えたストレスに心身がSOSを出しているのです。また、背景にうつ病がある場合には、抗うつ薬が効くことがあります。発熱だけでなく、気分や気力の低下がある場合は精神科を受診しましょう。
心因性の咳・心因性咳嗽(がいそう)
職場にいる時だけ咳が止まらない、という症状があります。自宅や友人との飲み会では全く咳が出ないのに、なぜか仕事の時だけにコンコンと乾いた咳が出て、大事な話ができなくなることがあります。嫌な上司と話す時だけ咳が止まらないという人もいます。
病院に行って胸のレントゲンを撮っても異常はなく、軽い気管支炎とか喘息と診断されて薬が処方されますが効きません。そもそも気管支炎や喘息の咳は常に出るもので場面によって出たり出なかったりということはありません。薬よりも胸や肩甲骨周辺のマッサージが効くことがあります。また、ストレッチやヨガなどの体を動かすリラクゼーションで楽になることもあります。
これは心因性咳嗽(がいそう)と呼ぶものです。ストレスにより情動が不安定になり、自律神経系を介して咳の中枢を刺激してしまうのが原因と考えられています。また、ストレスにより免疫が低下して気管の炎症が慢性化しているとも考えられています。
治すためには、原因となっているストレスを解消することが大切です。寝不足や、疲労が原因の場合もあるので、ゆっくり休むようにしましょう。咳や喘息の薬は効きにくいのですが、柴朴湯(サイボクトウ)や半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)など、漢方薬が効くことがあります。