うつ病の最低限知っておくべき知識

 更新日:2022年3月2日

うつ病は、世界で3億人がかかっていると言われ、WHOは2030年までに最も重要な病気になると警告を発しています。敵を倒すにはまず敵を知ることが大切です。

今回は、うつ病で最低限知っておくべき知識を6つにまとめました。

【動画解説はこちらから】

うつ病で知っておくべき6つの知識

1.うつ病は生きるエネルギーが枯れた状態

うつ病を簡単に言うと、生きるエネルギーが枯れてしまった状態です。土日や連休に短期間休んだだけでは改善されないので、単なる疲労とは違います。

具体的な症状は、気持ちの落ち込み、不安感、意欲の低下などがあります。身体の症状が多いのも特徴です。頭痛、肩こり、腰痛、胃腸障害、動悸、息苦しさなどの身体の症状が目立つ場合もあります。

うつ病は血液検査やCT、MRIなどの検査では異常がでません。質問形式の心理検査がありますが、病院での診断は医師が問診で行います。

2.ストレスや過労などが引き金で起きるが、原因は脳の働きの低下

うつ病になるきっかけは様々です。職場の人間関係や学校のいじめなどの心理的なこと、働きすぎのような物理的なこと、出産や更年期などの生物的なことなど、引き金はたくさんあります。

これらによって脳神経のセロトニンという神経伝達物質の分泌が低下して、脳の機能が低下することで発病します。うつ病の正体は脳の働きが低下していることです。決して「怠けている」「頑張っていない」といった気持ちの問題ではありません。

3. 効果が認められているのは薬と休養

うつ病の治療は、脳のセロトニン分泌を正常化させることです。そのために睡眠薬や安定剤で睡眠や食欲を回復させて、自然にセロトニン分泌が回復するのを後押しします。

それでも回復できない場合は直接セロトニン分泌を促す抗うつ薬を使います。薬の力で脳の状態を正常化させることにより、自然の力による回復を後押しして、最終的には薬なしでも正常なセロトニンの分泌ができるように導きます。

うつ病の治療で確実な効果が認められているのは、服薬と休養です。また、休養中は夜更かしをしないで規則正しい生活をしましょう。少しずつ回復してくるので、家事から始めて、やって楽しめることを中心にチャレンジしてみましょう。軽い運動もお勧めです。

認知療法などのカウンセリング、磁気治療、サプリメントなども効果があると言われていますが、効果は人によって差があるので、補助的なものと考えてください。

良くなってからも、1年間が最も再発しやすいので、しばらく無理は禁物です。

4. 抗うつ薬を10年以上服薬する人もたくさんいる

抗うつ薬を飲むと70%の人が回復し、2カ月から1年くらいで本来の生活に戻ることができます。ただし、引き金となった元の仕事や学業に戻ると、ほぼ半分の人は再発してしまいます。

無理をしないと生きていけない時代です。うつ病が完全に治るまでのんびりできるような経済的に余裕のある人はいません。そのために薬を長期間にわたり飲む必要性があります。

うつ病の30%くらいの人が、抗うつ薬を10年以上服用します。抗うつ薬は血圧の薬などと同じように長期に飲めるものです。世に出てすでに70年たちますが、長期服用で大きな問題が出たことはありません。

良くなれば薬は自然にやめられるものなので、自分の都合でやめようとしない方が良いでしょう。難しい手術やリハビリをしないでも、数粒の薬を飲むだけで問題が解決するならばそれで良しと考えましょう。

薬を飲まないで元気だった昔に戻る必要はありません。健康でなんでもできる人生よりも、ハンディを背負っても頑張っている方が立派な人生だと思います。新しい価値観で生きていきましょう。

女性の場合、最近の抗うつ薬は胎児への影響がほとんどなく、服用しながら子どもを作ることができます。むしろ服用をやめて、うつ状態のまま妊娠する方が胎児に悪い影響を与えます。ただし、母乳に薬が混じるので、赤ちゃんに母乳は飲ませない方が良いこともあります。

5. 難治性の場合は、双極性障害の可能性がある

抗うつ薬を飲んでも良くならず、むしろ変に気分が高揚して、その後にさらに辛いうつ状態がくる人がいます。これは双極性障害の可能性があります。

主治医は抗うつ薬から気分安定薬に変更して処方してくれますが、残念ながら双極性障害はなかなか良くならない病気です。

また、難治性のうつ病に心理的な影響が関わっている場合もあります。孤独、お金の心配、将来の心配、家族が治療に協力してくれない、などがうつ病の回復を遅らせてしまいます。

6. 公的な援助を利用する

うつ病は、中等度以上になると、これまでやってきた仕事ができなくなります。そこで問題になるのがお金のことです。お金の心配をできるだけ減らせるように、うつ病には公的な支援があります。

主治医に診断書を書いてもらい役所に提出すると、自立支援医療が利用できます。これにより治療費が1/3になります。同時に障害手帳を作成すると、公的な乗り物や施設の割引、公営住宅の優先入居、スマホ基本料金の割引、障害者雇用の申請、税金の控除などを受けられます。

また、休職中は健康保険を通じて給料の2/3の傷病手当金を受け取ることが出来ます。休職が続く限り、1年半にわたって受け取ることができます。さらに長期に回復しない場合は、障害雇用や障害年金を利用することもできます。

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