うつ病治療への誤解

 更新日:2022年4月13日

  スマホの検索機能で医学の知識が簡単に手に入れられる時代です。医師に負けないくらい、たくさん医学知識をもっている患者さんもいます。ただし、ネットの知識のすべてが正しいわけではなく、間違った知識が独り歩きすることもあります。

今回は、うつ病の治療に関する誤解を4つ紹介しましょう。

1. プラス思考になれば治る

 うつ病で気持ちが落ち込むと、考え方もマイナスになってしまいます。また、マイナス思考が原因で気持ちの落ち込みが起きることもあります。

 認知療法は、このマイナス思考を修正して、うつ病を治すカウンセリング治療のひとつです。心理学では、感情が思考をコントロールすると考えられていましたが、思考が感情をコントロールすることも可能であることが知られるようになり、それを応用したものが認知療法です。

 では、認知療法はうつ病のマイナス思考をプラス思考にする治療かと言うと、少し違います。カウンセラーから、「それは思い込みですから、別の考え方にしてください」と一方的に言われても納得ができません。無理やりプラス思考になろうとしても、感情はついてこないのです。

 実際にどうするかと言うと、マイナス思考になってしまう現実の原因を探すことから始めます。例えば、いつも「自分は人に嫌われている」という考えに囚われている人がいます。その根拠となっている現実的な証拠をいくつも挙げてみるのです。

 証拠といっても友人のちょっとした言動だけで、よく考えていくと明確な証拠を挙げることができないことがあります。むしろ、家族から大事にされている証拠の方が多く上がることになると、「自分はそれほど嫌われていないのかな」と自然に考えが修正されていきます。

 

 認知療法は、マイナス思考の根拠となる証拠を集めて、自分の考え方が理性的に正しいかどうかを検討していく治療です。決して、無理やりプラス思考にする治療ではありません。

 ただし、認知療法は急性期の状態には向いていません。また、治療する人の技量にも左右されます。薬の治療の補助として捉えた方が良いでしょう。

2. 薬を飲みたくない人は磁気治療がよい

 磁気治療はTMSと呼ばれ、薬を使わない画期的な治療と言われています。機械をつかって磁場をつくり、うつ病の原因部分に電流を流すことで、神経を刺激するというものです。

 

 何回か続けなくては効果がありませんが、治療は短時間で済み、痛みや大きな副作用はありません。最近では健康保険が適用されるようにもなりました。

 

 ただし、効果に関しては、薬が効かない人の30%に効果がありますが、うつ病の人すべてに効果があるかどうかは証明されていません。まず薬の治療を試みてから、それが効かない場合に選択する治療です。

 

3. 薬がやめられなくなる

 うつ病の回復には個人差があり、長くかかるケースでは薬を長期に飲む人もいます。早く治れば、それだけ早く薬をやめることができます。長期に服用している人は、なかなか治らないのであって、薬の依存症になっているのではありません。

 うつ病治療に使う薬は、基本的に麻薬ではありませんので依存性はありません。麻薬系の薬もありますが、処方には制限がかけられており、安易に処方できないようになっています。

 また、ベンゾジアゼピン系の安定剤や睡眠薬に依存性があると一時指摘されていた時期がありましたが、医師の指示通りに服用する分には問題はありません。

4. 妊婦は精神科の薬を飲んではいけない

 

 うつ病治療で使われる薬は、リーマスやデパケンなどの気分安定薬を除いて、基本的に胎児に大きな影響はありません。服用しながら妊娠出産が可能です。念のために主治医の指導のもとで量を減らしてから計画的に妊娠する人もいます。

 むしろ、妊娠のために薬を勝手にやめてしまうことは良くないことです。お母さんの気持ちが不安定で妊娠することは胎児に悪い影響があり、出産後にうつ状態が悪化して子どもを育てられなくなることもあります。

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