健康経営を推進する!効果を高めるメンタルヘルス研修とは

更新日:2024年7月22日

社員に向けたメンタルヘルス研修を行なうとなると、社員に効果的な研修を行ない、会社の健康経営にもつながる教育を行なうことが理想かと思います。この記事では、効果的なメンタルヘルス研修、健康経営につながる教育方法をお伝えします。 

この記事はこのような方におすすめです。 

  • 効率的かつ効果的に、メンタルヘルス研修を行なう方法が知りたい
  • 健康経営認定要件を満たした教育を実践したい

ここからはさっそく具体的手順について掘り下げていきます!

1. メンタルヘルス研修とは

メンタルヘルス研修とは、メンタルヘルスケアが適切に実施されるために、社員にメンタルヘルスに関する知識等を付与することです。どのような意義や目的あるのでしょうか。具体的にみていきましょう。 

メンタルヘルス研修の意義

なぜメンタルヘルス研修を行なう必要なのでしょうか。 

メンタルヘルス不調の早期発見や支援の障壁として、メンタルヘルス・精神疾患に関する知識不足があると考えられています。適切なメンタルヘルス研修を行なうことで、不調を早期発見し、適切な支援を受けることへの効果が期待されます。 

メンタルヘルス研修を通じて、個人のリテラシー向上(心の健康に関する知識、その知識を使う能力を高めていくこと)を高めていくことが重要です。 

【メンタルヘルスリテラシーとは】

  1. 心の健康を維持するために何をすべきか理解していること
  2. メンタルヘルス疾患の症状とその対処方法を理解していること
  3. 精神疾患に対して偏見を持たないこと
  4. 精神的な問題で困った時に、いつ、どこで助けを求めるのかを理解していること。その相談先で何を期待できるのか、何が得られるのかを理解していること

を挙げています。

(参考元:国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)

2. メンタルヘルス研修のメリット

メンタルヘルス研修のメリットとして、大きく3つ挙げられます。

メンタルヘルス不調の早期発見・未然防止

社員自らが正しい知識を習得することで、自身のストレスに気づき、早い段階でストレスに適切に対処できる効果が考えられます。 

ストレスを感じていたにも関わらず、自身の不調に気づかずに対処が遅くなり、結果として休職してしまった‥という結果にならないようにしたいですよね。 

正しい知識を身につけることは、自身のみではなく、周りの社員が異常に一早く気づくことにもつながります。 

メンタルヘルス疾患の発症・重症化を悪化する前に適切な対応を行なうことが出来る知識を身につけることが重要です。 

労働生産性の低下防止

メンタルヘルス不調になると、本来その人が持っていた業務パフォーマンスを十分発揮できなくなります(普段なら半日でできていた仕事が1日かかるようになるなど) 

業務パフォーマンス低下のみではなく、メンタルヘルス不調による欠勤・遅刻・早退が増えることも考えられ、会社にとっては貴重な戦力を失うことへつながっていきます。 

個人のみの問題ではなく、職場雰囲気の悪化や他の社員の業務負担の増加などが起きると、他の社員のパフォーマンスまでもが低下し、職場全体の生産性の低下が起こる可能性もあります。このように、メンタルヘルス不調は会社の労働生産性と大きく関わっているのです。 

メンタルヘルスケアを実践することで、社員自身によるストレスへの気づきのノウハウを身につけたり、メンタルヘルス不調を早期発見・早期対処できれば、これらの発生や悪化を防止することが期待できます。 

ワークエンゲージメントの向上

仕事に活力や熱意を持って向かえるように、メンタルヘルスのケアは欠かせません。 

「仕事が楽しい」「能力が高められる」という実感があってはじめて、その機会を提供してくれた会社に対して感謝の気持ちが生まれます。もらった恩を返したくなる「好意の返報性」という心理学の原理に基づき、組織への愛着(社員エンゲージメント)が高まっていくのです。 

帰属意識の低い会社にはどのような弊害が出ると考えられるでしょうか。社員のモチベーションが低く、人材が定着しないことにより離職率が上がり、会社のパフォーマンス・労働制先生低下にもつながってしまいます。 

そのような事態を回避のために、メンタルヘルス研修を実践していく必要があります。 

3. メンタルヘルス研修の対象者

職場におけるメンタルヘルス対策の原則的な実施対象者は4つのケアに定められている中の社員、管理監督者、産業保健スタッフに実施するのが望ましいです。(労働安全衛生法第70条の2第1項に基づく指針:メンタルヘルス指針) 

社員 ─「セルフケア」を促進するための研修を─ 

年に一度、自身のストレスへの気づき・メンタルヘルスに関する知識を深める機会として、社員への研修を行なう機会を設けましょう。基本的な研修内容としては「ストレスやメンタルヘルスに関する正しい理解」「ストレスへの気づき、対処方法」です。リラクゼーション法など具体的に実践できる方法も研修していくのも良いでしょう。 

管理監督者 ─「ラインによるケア」を促進するための研修を─ 

してもらうことが重要です。部長・課長クラスのみではなく、職場のリーダー職に対しても研修を行なうことが有効です。なぜなら、リーダー職は社員にとって一番身近な存在となり、関わりが多い存在となるためです。

ここで重要となるのが、見落としがちな「管理職自身のメンタルヘルスケア」の実施です。部下の指導や長時間労働も多くストレスを抱えやすい管理職ですが、自身のメンタル不調を誰にも相談できず、抱え込んでしまうことが多いものです。職場のラインケア研修と併せて「管理職自身のメンタルヘルスケア」を考える機会を与えることが重要です。

【研修内容】

  • 職場環境等の把握と改善
  • 労働者からの相談対応
  • 職場復帰における支援
  • 管理職自身のメンタルヘルスセルフケア

産業保健スタッフ─「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」を促進するための研修を─

実効性のあるメンタルヘルス対策を進めるためには、組織的、計画的な体制づくりと、これを運用する担当者の知識習得が必要です。担当者に必要なメンタルヘルス対策に関する知識を包括的に学ぶ必要があります。下記のような団体の研修制度を活用すると良いでしょう。最新の情勢・知識を取入れた研修カリキュラムを受講することができます。

4. メンタルヘルス研修を行なう機会

会社においてメンタルヘルス研修を行なうにはどのような機会を活用すればよいのでしょうか。あまりピンとこないかと思いますが、意外にも会社における様々な場面を活用することが出来ます。具体的に下記のとおりです。 

新入社員研修

新入社員がメンタルヘルスの不調を訴える背景として、新しい職場・人間関係・業務内容などによる環境の変化が挙げられます。また、入社前の仕事へのイメージと、入社後に直面する現実とのギャップがストレスを生んでいます。新入社員のストレス要因と対処法を理解し、新入社員が持っているエネルギーを仕事に活かせるように環境を整えていきましょう。 

新入社員研修では、下記のような内容を研修コンテンツに盛り込んでいきます。 

  • ストレスとは 
  • ストレス反応 
  • 基本的な対処方法 
  • 生活習慣と睡眠(からだの元気を保つために重要なポイントである、入浴や食事、睡眠など毎日の行動) 
  • 社内相談窓口 
  • 外部支援サービスの紹介 

集合研修に加えて、産業保健スタッフによる個人面談を実施することで効果が増します。 

産業保健スタッフの顔を知ってもらい、困ったときの相談の窓口を理解することで会社への信頼・安心感を得ることにつながります。まずは信頼関係を構築することに重点を置きます。緊張を和らげるために、面談では雑談を交えつつ、新入社員自身が話しやすい場となるよう心がけましょう。傾聴しつつ、入社の動機、学歴、家族歴などに加え、持病の有無や既往歴、健康上配慮が必要な点はないかなどを確認していきます。

管理監督者研修

年に一度は、管理職・中間管理職を対象にメンタルヘルス研修を行ないます。 

研修を実践することで、下記の効果が期待できます。 

  1. 部下の不調を早期に発見できる 
    部下のメンタル不調に気が付かず症状が悪化することで休職や退職になることを防ぐためには、管理職による早期発見が必要です。この早期発見を行うポイントについてを研修で学び自部門における早期発見に役立てることが可能です。早期発見ができれば、早急な対応を取ることで症状が悪化する前に対応することもでき長期的な休職にならずにすむことも多いため、早期発見は管理職の職務としても重要な項目となります。 
     
  2. 安全配慮義務の理解 
    安全配慮義務とは、社員が健康と安全を保ち、働きやすい環境でつねに業務に従事できるよう会社が配慮する義務を指します。会社は、社員に対してこの義務を持っており、義務を守るためにも管理職による管理が必要です。研修を受けることで、この義務についての管理方法を学び法令厳守の対応を取ることが可能になります。 
     
  3. 復職支援 
    研修を通して、休職等の後に復職する人材のサポート方法を学びます。休職後の復職は本人も周囲のメンバーも不安を抱えるものです。そうしたフォローを行いながら復職をサポートし業務に復職させることも管理職の役割です。メンタルヘルス研修では、こうした復職サポートの方法と注意事項について学ぶことができます。また、本人だけではなく受入れを行う周囲のメンバーへの働きかけ方についても学ぶことができます。 

上記のような知識提供に加え、メンタルヘルス事例を用いて、ケーススタディ(事例研究)を行なうことも有効です。具体的には、メンタルヘルス不調に陥った部下を想定した事例に対し、適切な対応方法等をグループワークを通じて検討します。そうすることで、さまざまな意見を知ることができ、実際にケースに遭遇した場合の適切な対処方法を事前に学ぶことが出来ます。 

衛生委員会

産業医・産業保健スタッフにより、衛生委員会の場を活用し、メンタルヘルスに関する健康講話を行ないましょう。なぜなら、衛生委員会は総括安全衛生管理者・管理監督者が多く出席する場となり、経営層を筆頭にメンタルヘルスへの知識を深めることができます。結果として、会社全体のメンタルヘルスの健康風土を構築する機会となり健康経営へつながります。 

ただしデメリットとして、衛生委員会で講話した内容は、一部の社員のみしか講話を聴講することができません。一部の社員のみではなく、社員全体へ講話内容を広めメンタルヘルスの知識を習得してもらいたいですよね。そのような場合には、下記のような対策を行ないましょう。 

職場安全衛生委員会の活用

職場安全衛生担当者を活用し、講話内容を各職場へ教育してもらう機会を設けましょう。職場安全衛生担当者がいない場合には、衛生委員会での講話を事前に動画撮影し、職場安全衛生委員会で流すことも有効です。社員全体に向けての教育することを想定し、有効に活用していきます。 

社内イントラネットの活用 
社内イントラネットで、衛生委員会での講話資料を掲載してみましょう。社員全員が講話資料をいつでも確認することができます。 

ストレスチェック

年に1回のストレスチェック実施が法令で定められています(労働安全衛生法第66条の10) 

ストレスチェック実施時期はメンタルヘルスの知識を深める期間として、全社員に向けてメンタルヘルスに関する研修を行なうことが有効です。 

ストレスチェック制度を通じ、自身のストレスへの気づき・対処方法を見直す機会となります。社員数が多いケースには、オンラインでのe-learning研修も活用しましょう。 

研修内容は下記のような内容を盛り込みます。 

  • ストレスチェック制度の概要 
  • ストレスチェック制度の活用方法 
  • メンタルヘルス不調や心の病への理解を深める 
  • メンタルヘルス不調を未然に防止するための具体的なアクションを学ぶ 

研修実施後には、理解度テスト、メンタルヘルス研修への内容の意見や内容要望を確認します。そうすることで、次回の研修のブラッシュアップへつながります。 

健康診断

健康診断は身体の異常所見を把握するのみの機会ではありません。健康診断の項目にもメンタルヘルス不調に関する項目が含まれています。 

具体的には下記のような健診項目があります。 

  • 食欲がない
  • よく眠れない 
  • ゆううつだ 
  • イライラしている 

該当している項目がないかを産業医が判断し、メンタルヘルス不調の未然防止対策として、個別に面談を行なうことが有効です。必要に応じて医療機関への受診勧奨を行うことも検討します。 

健康診断項目へ「社員が抱えている不安や心配などを産業医に相談する」「どのようなことを相談したいか」といった項目を追加することも効果的です。社員にとっては、個人的に心身の不調を自ら訴えることができるチャンスとなります。ただし、安全配慮義務を守るために社員の知り得た健康情報に対しては、確実にフォローを行なう必要があります。十分に注意を払い、早期対応を心がけましょう。

5. メンタルヘルス研修の効果を高めるポイント 

メンタルヘルス研修の方針の明確化

メンタルヘルス研修の成功には、会社が社員に対して明確な方針を示すことが不可欠です。単なる形式的な研修や浅い理解だけでは、本来の効果を得ることが難しいでしょう。 

具体的なアプローチの流れは下記のとおりです。 

①社内の心の健康づくり計画を策定・衛生委員会での承認 
②中長期計画などの会社全体の計画にメンタルヘルス研修の方針を明示 

明確な方針の下で研修が実施されれば、効率的かつ効果的なメンタルヘルス研修が実現できるでしょう。 

メンタルヘルス研修の内容を定期的に見直し

メンタルヘルス研修は、一度組んだ内容をそのまま使い回すのではなく、定期的に研修内容を見直し、その都度最適な内容にアップデートすることが重要です。 

なぜなら、新入社員と入社数年が経った社員では、メンタルヘルス研修に対する受け取り方や必要な知識・スキルのレベルが異なるからです。受講者の変化やニーズを把握し、適切なプログラムを提供することが研修の効果を高めるためには必要です。 

また、研修後にはアンケートなどのフィードバックを実施し、受講者からの意見や感想を収集することも重要です。これにより研修内容をブラッシュアップし、より効果的な研修プログラムを構築することができます。 

6. 健康経営との関連性

健康経営とは

健康経営とは、社員の健康管理に努めることを、社員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。この概念は、健康な社員が収益性の高い会社を作る、という主張に基づいています。健康経営を推進することで、社員の活力向上や生産性の向上による組織の活性化が期待でき、それが業績の向上や株価向上といったプラスの結果につながるとされています。 

健康経営度調査票とは

健康経営度調査とは、健康経営の取り組み状況や経年での変化を分析し、健康経営銘柄の選定や健康経営優良法人の認定に向けた基礎情報を得るための調査です。 

健康経営優良法人認定には、中小規模法人部門と大規模法人部門があります。 

健康経営優良法人に認定された会社は、外部へ大きくアピールできます。そのため、会社のブランディングや知名度向上、優秀な人材確保などの多くのプラス要素を得られるのがメリットです。 

健康経営を推進するためのメンタルヘルス研修

具体的にメンタルヘルス研修に関わる設問が、健康経営度調査票にはあるのでしょうか。 

実際の健康経営度調査をご紹介します(参考元:令和5年度健康経営度調査) 

多くの調査項目でメンタルヘルス研修が関与していることが明らかです。事前に健康経営度調査内容を把握してから、具体的に研修に取組んでいくことが健康経営の要件を満たす近道となります。 

制度・施策実行(社員の健康課題の把握と必要な対策の検討) 

①健康課題の具体的な内容とその根拠(200字以内) 

②数値目標を定めている場合、その具体的な内容、現在値、今年度の目標値、最終目標値、達成期限 

③健康課題に対応する今年度の取り組みの推進計画(200字以内) 

 

メンタルヘルス不調等のストレス関連疾患の発生予防・早期発見・対応(職場環境の改善等)社員の健康意識の向上を図るために、健康保持・増進に関する研修をどのように行っているか。 

①具体例記載 

②対象人数、参加・実施人数 

 

メンタルヘルス不調の予防や不調者への復職支援、就業と治療の両立支援として、どのような取り組みを行っているか。 

①メンタルヘルスについての相談窓口の設置および周知 

②ウェアラブルデバイスにより社員自身のセルフチェック等を支援 

③マインドフルネス等の実践支援 

7. メンタルヘルス研修と関係法令

研修を行なうかどうかは会社判断でよいのでは?と考える方もいるかもしれません。 

実際にはそうではありません。法令で研修の実施についても定められています。 

メンタルヘルス研修に関する関係法令をご紹介します。 

労働安全衛生法:第六十九条(健康研修等) 

事業者は、労働者に対する健康研修及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。 

 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。 

労働安全衛生規則:第十四条 (産業医及び産業歯科医の職務等) 

七 健康研修、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。 

労働者の心の健康の保持増進のための指針 

(1) メンタルヘルスケアを推進するための研修研修・情報提供 

ア 労働者への研修研修・情報提供 
イ 管理監督者への研修研修・情報提供 
ウ 事業場内産業保健スタッフ等への研修研修・情報提供 

8.さいごに

いかがでしたでしょうか。 

今回は、メンタルヘルス研修の目的や内容、実施するメリットやポイントなどを解説しました。また、健康経営を推進する上でも、非常に重要な分野です。 

メンタルヘルス研修は、社員が自身のストレスに気づけたり、周囲の社員が異常にいち早く気づけたりするために行われる重要な研修です。メンタルヘルス研修を効果的に実践し、会社全体の健康経営へ努めていきましょう! 

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