【KPIだけで人は動かない】社員が自ら動く組織の作り方 

更新日:2025年6月11日

人材マネジメントを担う皆さんは、日々こんな悩みを抱えていませんか? 

  • 「目標数値を設定しても、社員が自律的に動かない」 
  • 「メンタル不調による離職や休職が増えている」 
  • 「成果は出ているのに、なぜかチームが疲弊している」 

これらの背景には、「数字のために働く文化」が浸透しすぎているという問題があります。 
KPIは重要です。しかし、KPI「だけ」で人は動きません。 

今回は、社員が「意味」と「納得感」を持って動ける組織のつくり方を、メンタルヘルスの観点からお伝えします。 

1. KPIの限界:数字で動いているうちは、限界が来る

KPI(重要業績評価指標)は、経営における羅針盤のような存在です。 
個人や部署ごとの目標を明確にし、進捗を可視化する。 
特に売上、成約率、離職率、エンゲージメントスコアなど、数値管理は組織運営に不可欠です。 

しかし、ここに落とし穴があります。 

KPIが目的化すると、社員のモチベーションが「外発的動機」に偏ります。 
つまり、「怒られないため」「評価のため」「インセンティブのため」に動くようになるのです。 

これが続くと、次のような弊害が出てきます。 

  • やらされ感が強まり、自律性が低下する 
  • 失敗を恐れて挑戦を避ける 
  • 心理的安全性が低くなる 
  • 仕事の意味が感じられなくなり、バーンアウトが起きやすくなる 

KPIは「方向性」を示すには有効ですが、「動機」や「熱意」を生み出すものではありません。 

 

2.メンタル不調は“数値主義”の副作用

職場のメンタルヘルスは年々重要視されてきており、 

実際、厚生労働省の調査によると、働く人の約6割が、強いストレスを感じていると回答しています。 
その要因の上位には、「仕事の質・量」「人間関係」に加えて、**「評価のプレッシャー」**が含まれています。 

特に、KPIに基づく人事評価ノルマが強い企業ほど、休職・離職率が高まる傾向があります。 

「頑張っても数字が足りないと否定される」 
「数字以外の貢献が評価されない」 

──そうした環境は、社員の心を少しずつすり減らしていくのです。

3.人が動くのは「意味」に共感したとき

社員が本当に動き出すのは、「意味」「納得感」に触れたときです。 

  • 「この仕事が誰かの役に立っている」 
  • 「会社のミッションと自分の価値観が重なっている」 
  • 「数字の奥に、お客様の喜びがあると実感できる」 

このような内発的動機があるとき、人はストレスを感じにくく、主体的に動けるようになります。 
Googleの「プロジェクト・アリストテレス」でも明らかにされたように、 
心理的安全性と目的意識のあるチームは、パフォーマンスも高いのです。 

4.組織が持つべき「もうひとつのKPI」

私たちは、KPIと同じくらい重要なものとして、**「意味のKPI」**を提案します。 
これは、数値では測れないけれど、確実に組織を支えている“指標”です。 

たとえば: 

  • 「メンバーが自分の仕事の価値を語れるか?」 
  • 「直属の上司が、数字以外でメンバーを承認しているか?」 
  • 「今月、感謝の言葉がチーム内で何回交わされたか?」 
  • 「チームに“雑談”の余白があるか?」 

一見すると曖昧ですが、これらはエンゲージメント、創造性、定着率、健康指標と深く関係しています。 

5.経営と人事ができる3つの実践アクション 

1. 数字と意味のバランスを取る 

KPIはあくまで「結果」であり、「行動」や「意図」も評価する文化をつくりましょう。 
プロセスの中での学びや姿勢、チャレンジの意欲を認めることで、社員は前向きになれます。 

2. 上司が「意味づけの翻訳者」になる 

部下にとって、会社のビジョンや数値目標は、ときに抽象的でピンとこないものです。 
だからこそ上司の役割は、それを部下一人ひとりの業務に紐づけて“意味づける”ことです。 

たとえば、 

「このプロジェクトが会社全体にどう貢献しているか」 
「お客様のどんな課題を解決しているのか」 
「この業務があなたの成長につながる理由は何か」 

そうした**“翻訳”を日々のコミュニケーションで行うこと**が、社員の納得感と主体性を生み出します。 
これはリーダーシップの本質でもあり、特別なスキルではなく、日々の対話で培えるものです。 

3. 「心理的安全性」の土壌づくり 
  • ミスを責めない 
  • 意見を歓迎する 
  • 弱音も言っていい空気を作る 

これらは、メンタル不調を未然に防ぎ、創造性を高める土台になります。 

6.成果と人を両立する組織へ

社員を数字で動かすのは、短期的には効果があるかもしれません。 
しかし、長期的に見れば、「意味で動く組織」こそが持続可能な組織です。 

経営者や人事の役割は、社員を「成果を出す人材」に育てるだけでなく、 
**「心の健康を守る環境」**をつくることでもあります。 

それが結果的に、離職率を下げ、採用コストを抑え、ブランド価値を高め、 
企業の競争力を支えることにつながるのです。 

 

7.あなたの会社に「意味のKPI」はあるか

KPIがあるのに人が動かないとき、 
その組織に必要なのは「より厳しい目標」ではありません。 
必要なのは、**その数字の先にある「意味」を伝える力」**です。 

社員が自ら動く会社は、社員一人ひとりが「なぜこの仕事をしているのか?」を知っています。 
KPIのその先に、“心が動く理由”があり、 

あなたの会社にとって、その「もうひとつのKPI」が必要なのです。 

 

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