産業医という資格

 更新日:2021年7月20日

   「産業医」という資格の人を聞いたことがあるでしょうか。産業医には専属産業医と嘱託産業医があります。専属の産業医を置かなければいけない企業は従業員が1000人以上、嘱託の産業医を置かなければいけない企業は従業員が1000人未満から50人となっています。逆に言えば、50人以下の従業員の企業では産業医という人はいないはずです。

産業医になるためには、医師免許だけでは足りないのです。医師が産業医になる方法、産業医という資格を取得するのに必要な過程について解説します。実は、産業医という資格を得るためには産業医学を学ばなければなりません。

  

産業医学とは何か?

 一般の医学部では学ぶことのない産業医学、でも、この産業医学を医学部の授業として行っている大学が一つあります。それが、福岡にある「産業医科大学」という専門の大学です。この大学は学費を払わなくていい代わりに、卒業後9年間産業医学に携わる仕事をしなければなりません。これはあとでまた話が出てきます。

 産業医学というのは、労働環境、労働者の健康の関わりを研究し、追及していく学問です。労働者がどういった環境で働けば、健康をそこなわずに済むか、と言った方が簡単かもしれません。労働者は一日の大半を職場で過ごします。そのため、労働者と職場の環境というのは、健康のためには切っても切り離せない関係があります。

昔から現在に至るまで、職業病や作業関連疾患などの健康問題がたくさん発生しております。疾病の原因探求などの基礎医学的研究から、労働者の疾病を予防するなど、健康を保持し、さらに増進したり、実践活動まで、産業医学には幅広い範囲が含まれているのです。

産業医になるには~医師免許だけではなれない?~

 産業医というのは、医師免許とは異なります。医師免許を管轄するのは厚生労働者ですが、産業医を管轄しているのは日本医師会になります。では、医師免許取得者が産業医という資格を得るにはどうすればいいのでしょうか?

 産業医という資格は医師免許を持っていることに加えて、所定の講義を受ける必要があります。産業医の資格を取るための講習はあちこちで随時行われていますが、缶詰でもいいからまとめてとりたい、となると産業医科大学の講習が毎年7月に行われており、1週間ぶっ続けで講義を受け、産業医を取得するという講義もあります。

先ほど説明させていただいた通り、日本医師会の講習もしくは産業医科大学の講座を終了しないことには、産業医の資格を取ることはできません。また、この講習を終了しているからと言って、すぐに産業医になれるわけではありません。なりたいと思った医師が日本医師会に申請して初めて、「日本医師会認定産業医」となるのです。

また、産業医資格は5年更新制となりますので、5年間の間に、産業医学に関わる講習会などに参加してしかるべき単位を取得したことを、再度日本医師会に申請すると、更新ができます。取得はしたものの更新できなかった、というのもたまに聞く話です。そのため、産業医の仕事をやっている人は、きちんと更新ができているか、単位が足りているかなどしっかり確認が必要です。

産業医とは特殊な医師である

 産業医は、嘱託であれば50人以上の従業員がいる事業所、専属であれば1000人以上の従業員のいる事業所が設置を義務付けられています。では、労働者の健康を維持、増進するというのは、どういうことでしょうか。実は、産業の職務において、病気の診断・治療は基本的にしません。

医師は「診断・治療」を行う者というイメージがあるかと思いますが、薬を処方したりすることはできないのです。それゆえに、産業医がいる会社の皆さんは、「産業医の仕事はどのようなものだろう」と思ってしまうかもしれないですね。

⇒「産業医面談って意味ないの?

 産業医に会うことが多い人は、残業時間の多い人です。月に80時間以上の残業をしてしまうと、産業医との面談が義務付けられています。そこでは、体調に問題が出ていないか、残業を減らすためにはどうしていくか、と言ったことが話し合われます。また、休職の診断書を会社に提出した場合、その診断書を元にどう休職していくか、復帰可能の診断書であれば、どういう復職のプログラムに乗っていくか、復職プログラムがない場合はどうやって可能な範囲での配慮を行うかなど、そういったことが話し合われます。

最近はどこの事業所でもメンタルの不調をきたす従業員が増えており、これらの対応が産業医の業務としてメインになりつつあるため、産業医には精神科医が好まれ始めました。今までとは産業医の業務の範囲が広がっているんですね。

産業医の数

 産業医の数は約7万人いると言われており、これは医師全体の25%に当たります。しかし、産業医を必要としている事業所は約16万件にも上りますので、産業医の数としてはまだまだ不十分です。専任で産業医をしているよりも嘱託産業医の方が圧倒的に多く、普段の診療業務の合間を縫って産業医の仕事を行っています。

産業医を作るための大学、産業医科大学について

 産業医になる時に必要な講座として、先ほど「産業医科大学の産業医学基礎講座」というのがありましたが、日本には産業を専門とする医科大学である、「産業医科大学」という大学があります。学生は学費の一部を免除される代わりに、卒業後は決められた年数産業医業務を行うもしくは労災病院で働く必要があります。その決められた年限に従わない場合は免除されていた学費を請求されることになります。

まとめ

 今回は、産業医の資格、お仕事について解説しました。医師免許だけでは産業医にはなれないこと、産業医のなり方、そして昔は産業医学を実行していればいいだけだった産業医が現在ではメンタルヘルスまで幅広い役割を求められていることなどがわかったのではないかと思います。産業医というのはある種、遠い存在に思えるかもしれませんが、それを身近な存在として感じ、一緒に仲間として企業の中で働いてこと、産業医という資格が生かされる1番の方法です。

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