ストレスチェック制度とは

 更新日:2024年2月09日

事業場労働者数が50名を超えた場合、年に1回実施義務とされているストレスチェックですが、どのように対応したら良いのでしょうか。

ここでは、ストレスチェック制度について解説していきます。こちらのブログを見ればストレスチェックの詳細、目的、具体的なストレスチェックの手順や、やるべきこと、やってはいけないことが分かりますので、ご参考ください。

 【ストレスチェック制度とは】


ストレスチェックとは、57項目の質問に回答することで、労働者の心理的なストレス程度や心理状況を把握することができる検査です。平成27年12月から、労働者50名以上の事業場に実施することが義務付けられ、年に1回は必ず実施する必要があります。

この制度の主な目的は労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを促すことです。これによって、働きやすい職場づくりを進め、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(一次予防)が可能となります。

【ストレスチェック制度の実施義務を有する事業所】


常時50名以上の労働者を使用する事業場には、ストレスチェック制度の実施義務があります。パートタイム労働者や派遣先の派遣労働者も含まれます。また、常時50名未満の事業場については、ストレスチェック制度の実施は努力義務とされておりますが、メンタルヘルス不調の未然防止のために実施することが推奨されています。

 常時50名以上の労働者を使用する事業場とは、簡単に言うと、1つの場所に常時50名以上の労働者が所属している、と考えると良いでしょう。例えば、東京本社と大阪支店があったとします。東京本社では、60名の労働者、大阪支店では30名の労働者が所属している場合、東京本社でのストレスチェックの実施が義務となります。

東京本社60名、大阪支店60名の場合はどちらも50名を越えているので、どちらの事業場でもストレスチェックの実施が必要です。東京本社30名、大阪支店30名では、合計すると60名を越えますが、どちらも1事業場に50名いる訳ではないので、実施義務ではありません。

また、常時50名以上とは、労働時間に関わらず、継続して雇用している労働者をカウントします。週1日勤務のアルバイト・パート社員も含まれます。しかし、ストレスチェックの対象者は定期健康診断の対象者と同じで、正社員の週所定労働時間の4分の3未満であるアルバイト・パート社員や休職者に対しては実施しなくても問題ありません。

【テレワークの場合は】

 コロナウイルスの影響でテレワークを導入する会社が増えてきました。実際にオフィス出社をする人が少なくなりましたが、事業場所属としては50名を超えている場合、ストレスチェックの実施義務があります。実際にオフィスに出勤しているか、していないかは関係ありません。間違えないようにしましょう。

【ストレスチェック制度の手順】


①ストレスチェックのスケジュールの設定と通知

ストレスチェック実施スケジュールを設定します。労働者ができるだけ多く実施できるような時期で設定しましょう。また、高ストレス者が多く出た場合、産業医による面談希望者が多くなる可能性があるので、産業医が対応できる時期を考慮することも大切です。ストレスチェック委託先や社内体制によって質問回答をWebで行うか、紙で行うかは異なります。あらかじめ決めておきましょう。ストレスチェックの実施期間が決定したら、それを労働者に周知します。

【実施体制について】

事業者
実施計画に基づく管理を行う実務担当者を指名し、実施体制を整備します。
実務担当者
事業所側の責任者。ストレスチェック実施計画を策定したり、管理したりと、実質的な責任者になります。
実施者
実際にストレスチェックを実施する者。医師、保健師、その他厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師といった有資格者である必要があります。



②ストレスチェックを実施

ストレスチェック実施期間になったら、各労働者にストレスチェックを実施してもらいます。事業場のストレスチェック実施は義務ですが、個々の労働者が実際にストレスチェックを行うかは、個人の自由になります。そのため、ストレスチェックを行うことを会社側から労働者に強制することはできません。しかし、ストレスチェックを行うことは、本人にもとても意義があるので、ストレスチェックの重要性をあらかじめきちんと説明した上で、できるだけ実施してもらうようにしてください。


③ストレスチェック結果通知

ストレスチェックの回答が完了したら、結果を本人に通知します。その際、個々の結果を会社側は見てはいけません。各労働者は自分の結果をしっかりと見て、今の心の状態を把握するようにします。


④産業医による面談

高ストレス者であった労働者のうち、産業医による面談を希望する場合、会社の担当者に申し出をします。その後、産業医と日程を調整し、面談を実施します。労働者の面談の申し出、ストレスチェック結果、面談指導結果を理由とした解雇、人事評価への影響、部署異動、減給など不利益な取り扱いをすることは法律で禁止(不利益取り扱いの禁止)されています。

不利益取り扱いの禁止があっても、産業医による面談を希望する者は高ストレス者の1%にも満たないと言われている報告もあります。これは、自身が高ストレス者であることを会社の担当者に申し出をしなくてはならないため、躊躇してしまうのが原因と言われております。

これを解決する方法としては、会社側に特定されない専門家のいる外部の相談窓口を取り付けることで、労働者が相談しやすい環境を整えてあげることが推奨されています。

相談窓口・EAPとは


⑤当該労働者に対して適切な措置を講じる

産業医面談を行った後、労働者の状態について事業者は、産業医の意見を聴取し、労働者に対して適切な措置を取ります。例えば、本人が働きすぎによるストレス負荷が強い場合、事業者は残業時間を減らしたり、ハラスメントなどが発生している場合、早急に対応するようにします。

しかし、ハラスメントや本人があまり会社側に知られたくないことなどは、プライバシー保護の観点から産業医側も会社側も注意して取り扱うようにしてください。産業医側も労働者から会社に伝えて良い事や伝えてはいけないことをあらかじめ確認しておくことが必要です。


⑥ストレスチェックの集団分析

ストレスチェックには、部署ごとに集団の分析をすることができます。どの部署でストレス負担が出ているかを把握することは大切です。会社によっては、担当者が集団分析の見方が分からないというケースも多くありますので、委託先や産業医などに集団分析の見方を必ず教えてもらうようにしてください。

また、部署の労働者が10名未満の場合、集団分析はできませんので、気を付けてください。


⑦職場改善

集団分析や産業医による面談後の意見聴取から、職場で問題となっていることに対して適切な対策を講じる必要があります。ストレスチェックをやりっぱなしで会社として何も対応しないのが一番良くありません。

⑧検査結果の報告

常時50名以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期的に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」労働基準監督署に提出しなければなりません。報告書には、受験者数、面談指導を受けた労働者数、集団分析実施の有無を記入します。

さらに、「実施者」、面談指導を実施した医師の背景と、産業医であれば氏名、所属医療機関の名称及び所在地、捺印が必要になります。報告書の提出時期は、各事業所における事業年度の終了後など、事業所ごとに設定して差し支えありません。部署ごとに順次行うなど、年間を通じてストレスチェックを行っている会社では、暦年1年間でも受験数を記入し、それに伴う面談指導を受けた者の数を報告するようになっています。

まとめ

以上、ストレスチェック制度について解説しました。ストレスチェック制度は、日本で最初の具体的なメンタルヘルス対策と言えます。ストレスチェックを有効に活用することによって、メンタル不調を予防し、働きやすい職場を目指しましょう。

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