うつ病の知られていない16の症状

 更新日:2022年10月17日

 うつ病と言えば、少し前までは特別な病気というイメージでしたが、最近では誰もがなる病気になりました。世界保健機構・WHOでは、5大疾患として癌、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、精神疾患を上げるようになり、精神疾患は世界的にも大きな問題となっています。特にうつ病は世界で3億5000万人以上の人が患っていると言われ、私たちが最も注意しなくてはならない病気の一つになりました。

                       

 そもそも、うつ病とはどのような病気なのでしょうか。簡単に言うと、ストレスや過労などが引き金になり、生きるエネルギーが枯れてしまった状態です。「怠け」や「疲れ」と違うのは、土日に休んだだけでは改善されず、仕事や学業に何らかの支障をきたしてしまいます。

具体的には、気分の落ち込み、楽しめなくなる、気力がなくなる、睡眠や食欲の異常、といったものが代表的な症状です。ところが、うつ病ほど多彩な症状がある病気はありません。なぜなら、うつ病は脳の機能が低下する病気であるため、自律神経でつながった全身に様々な症状が出てしまうのです。

              

 実際にうつ病になった人の体験談から、あまり知られていない症状をまとめてみました。是非参考にしてみてください。

【うつ病の知られていない16の症状】

1.体の痛み

 うつ病による体の痛みは大変多くみられます。例えば、慢性の腰痛で整形外科を受診しても原因が分からず、痛み止めも効きません。ところが、精神科でうつ病と診断され、うつ病が良くなるとともに痛みが消えていくことがあります。うつ病の痛みは、頭、顔、首、肩、背中、手足、陰部など、全身に見られます。レントゲンや血液検査では異常が見つかりません。そのために医師から気のせいだと言われることがあります。

 体の痛みは脳の扁桃体という部分で感じ取りますが、うつ病ではこの扁桃体が過敏になっています。そのために、本来感じる痛みの10倍、100倍の強さを感じてしまうのです。痛みの場所では大きな異常が見つからないのですが、痛みを感じる脳が過剰に反応しているのです。

                       

2.当たり前のことができない

 疲れやすく、体が重く、何事も面倒になります。よく聞くのが、お風呂に入らなくなることです。髪を洗って乾かすのを面倒に感じ、それなら「入らなくていいや」となってしまうのです。気が付くと、「今週は風呂に1回しか入らなかった」ということもあります。

3.掃除ができず部屋が汚い

 掃除をする気力が出ません。「明日やればいいや」と先延ばしにして、気づいたら部屋がゴミの山になっています。どこから手を付けたら良いのか分からなくなり、よけいに片づけられません。「怠けているのかな」と思いますが、いつまでたっても行動に移せません。

4.孤独を感じる

 人が近くにいても距離を感じ、さみしさを感じます。みんなが楽しんでいると、自分だけのけ者のように感じます。何を言われても人と心が通じないのです。こんなに孤独でこれから生きられるのだろうかと思い絶望にも陥ります。

                     

5.離人感

 孤独感に似ていますが、自分と世の中に隔たり(へだ)を感じます。外の世界と自分の心が直接つながらず、モニター越で周りを見ているような感覚です。人によっては「見えない膜に包まれているようだ」とか、「水の中に入っているようだ」と感じることがあるようです。

6.誰にも会いたくない

 矛盾しているように見えますが、孤独で辛いにも関わらず、人を避けてしまいます。人に気を遣う力がないので、人と会うことが苦痛になるのです。虫歯があっても歯医者に行けない、髪が伸びても美容院に行けない、ということもあります。電話やインターフォンに出られないことがあります。

7.物忘れ

 脳の機能が低下するために、物忘れが多くなります。人の名前が出て来なかったり、乗り物に大切なものを忘れてしまうことがあります。認知症と勘違いし、あわてて物忘れ外来を受診しますが、そこでうつ病を診断されることがあります。

 うつ病の物忘れは、忘れたことを後から思い出すことができ、忘れっぽいことを深刻に悩んでしまいます。認知症の物忘れは、忘れていることも忘れてしまい、人に指摘されても思い出せません。また、忘れること自体をそれほど気にしないという特徴もあります。

                         

8.イライラして怒りっぽい

 うつ病というと落ち込んでいるイメージがありますが、イライラして怒りっぽくなることもあります。情緒が不安定になり、感情のコントロールができなくなるためです。以前は大人しかった人が、些細なことでもカーっと起こるようになると、うつ病の疑いがあります。

9.焦りでキャリア・アップを考える

 うつ病に不安の症状がありますが、それが高じると焦燥感という焦りの症状になります。さらに自分の評価を低く感じることも加わり、「このままではいけない」と焦り、資格を取ることや転職を考えるようになります。また、うつ病と診断され、休養しているにも関わらず、空回りして勉強をしたり、資格を取ろうとすることもあります。たいていの場合、集中力が続くかないために失敗して、よけい自分を責める結果になります。

10.音楽が聴けなくなる

 今まで当たり前に聴いていた音楽が聴けなくなります。集中力が落ちるため、音にまとまりを感じることができず、雑音にしか聞こえないのです。好きな曲ですら、鬱陶しく感じるようになります。通勤時に音楽を聴いていたのに、最近聴かなくなったという人は要注意です。

              

11.映画やテレビが見られなくなる

 バラエティや短時間の動画は、それほど集中力が必要ないために辛うじて見ることができますが、映画やドラマは続けて見られません。集中力が落ちているため、ストーリーを追うことに疲れてしまうのです。また、以前ほど物事に興味を持てなくなっていることも原因です。

12.テレビをつけていないと不安

 テレビは集中して見られないのですが、一人でいると不安や孤独を感じてしまうため、常にテレビをつけています。目や耳から入ってくる刺激で、不安や孤独から意識をそらそうとするためです。

13.眠りたくない・眠るのが不安

 翌朝を迎えるのが不安です。眠ったら明日になってしまうと思うと、眠りにつきたくない、眠るのが怖いということが起こります。深夜いつまでも動画を見たり、ゲームをしたり、なかなか寝床に入ることができません。睡眠時間が短いために朝が辛くなり、今日こそは早く床につこうと思いますが、夜になるとやはり眠りたくありません。

                    

14.お酒の量が増える

 お酒には一時的に気分を上げる効果があり、辛い気持ちを和らげるためにお酒の量が増えてしまいます。眠れないので、睡眠薬代わりに飲む人もいます。どんどん量が増えて行く時は要注意です。最悪の場合、アルコール依存症になってしまうこともあります。また、多量の飲酒はうつ病を悪くさせる作用があるので、辛い気持ちをお酒で誤魔化しているとよけいに状態は悪くなります。

15.気候の変化に弱い、雨の日が苦手

 うつ病の人は気候の変化に敏感です。また雨の日はよけいに気分が落ち込み、外に一歩も出られないということもあります。自分の行動が天気に左右されるため、以前は気にしなかった天気予報を毎日チェックするようになります。

                     

16.すぐにのどが渇く・飲み水がないと不安

 不安による自律神経症状からのどの渇きがあります。水を飲むことが安定作用になるので、つねに水を飲んでいます。不安がつよすぎて、水をいくら飲んでも渇きがとれない、という場合もあります。外出先、寝る時など、いつも手元に飲み水がないと心配になります。

 

まとめ

 うつ病は気の持ち方の問題ではありません。ストレスから脳の働きに異常が出る病気です。脳の機能が全般に低下するために、症状は日常生活のあらゆる場面に現れます。その内容は多彩で、今回紹介した以外にもたくさんあります。

 癌には、「早期発見、早期治療」という言葉がありますが、うつ病も同じです。早めに病気の存在に気づいて、治療や休養をとることで回復しやすくなります。逆に、放置していると重症化、慢性化することもあるので要注意です。気になる症状がありましたら、早めに精神科を受診することをお勧めします。

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