うつ病とパニック症はなぜ一緒に起きるの?
更新日:2021年10月20日
【うつ病とパニック症はなぜ合併するのか?】
脳の働きは神経伝達物資で営まれています。特にドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンは3大神経伝達物資と呼ばれ、脳の活動の重要な役割を果たして心の安定を保ちます。
ドーパミンとノルアドレナリンは感情に関わる物資で、ドーパミンは快感を、ノルアドレナリンは意欲を担当しています。セロトニンは、これらの物資を制御することで、情緒の安定に関係します。安心感や幸福感に関わる大変重要な物質なのです。それだけでなく、覚醒や緊張の状態、体のリズム、睡眠、体温調整、痛み、など、たくさんの脳の活動と関係しています。
過度のストレスで、つねに気を抜けない状態が続いていると、セロトニンの分泌が低下し、ドーパミンやノルアドレナリンの分泌にも影響を与え、心の状態が不安定になります。こうしたことから、うつ気分、無気力、不安、焦り、不眠、自律神経の失調などの症状が現れます。これがうつ病やパニック症になるのです。
うつ病もパニック症もともにセロトニンの分泌が少なくなることで起こるために、合併することがあるのです。
【その他のセロトニンに関わる病気】
実は、他にもセロトニンが関わる病気があります。強迫症、摂食障害、社交不安症、慢性疼痛などです。
強迫症とは、自分でもつまらないことと分かっていても、それにこだわってしまう病気です。例えば、汚れや泥棒に入られるなどの不安から、手洗いや戸じまりなどの確認が止まらなくなります。
摂食障害とは、太ることを気にし過ぎて、食事のコントロールがつかなくなる病気です。無理なダイエットをして、過食と嘔吐を繰り返すことがあります。
社交不安症とは、人の目が気になってしまう病気です。人前に立つことや会食ができなくなります。
慢性疼痛とは、検査で大きな問題がないのに、首や腰などに激しい痛みが長く続く病気です。
これらの病気もセロトニンの分泌が少なくなることで起こる病気ですので、どれもうつ病と合併する可能性があります。
【セロトニン分泌を増やす方法】
それではどのようにしたらセロトニンの分泌を増やすことができるのでしょうか?
大事なこと
うつ病やパニック症の場合、仕事の休み、食事と睡眠をよくとり、規則正しい生活をすることでセロトニンの分泌は数か月で通常に戻り、本来の脳の活動を取り戻します。しかし、食事や睡眠が十分にとれなかったり、何らかのストレスが続いている場合は、自然に回復することは難しく、薬で後押しする必要があります。
抗うつ薬にはセロトニンを増やす働きがあります。その中でも特に優れているのがSSRIという薬です。具体的にレクサプロ、ジェイゾロフト、パキシル、デプロメールなどが処方されています。うつ病、パニック症、強迫症、摂食障害、社交不安症、慢性疼痛などの治療で、共通してこれらの薬が使われているのは、セロトニンを増やすのが目的です。
直接口に入れても意味がない
セロトニンが足りないからと言って、直接セロトニンを口に入れても脳には取り入れられません。脳は特殊な膜で包まれているためです。その代わりにトリプトファンというアミノ酸を原料として脳の中で合成されます。トリプトファンが含まれている食べ物は、肉、魚、豆、ナッツ、豆乳、乳製品などのタンパク質が多く含まれているものです。
一人暮らしでカップラーメンやコンビニのおにぎりだけで済ませているという方は、このような食物を多く食べるように意識するのも良いかもしれません。特に女性は男性よりもトリプトファン不足がセロトニン不足につながりやすいと言われています。
ドラッグストアにはサプリメントやプロテインもありますが、逆に取り過ぎになる危険性があります。多く取ると肝臓などに害があるため、できるだけ食べ物から取るようにしましょう。
運動も大事
セロトニンを増やすためには、運動も大切な要素です。激しい運動でなく、早歩きのウォーキングなどの有酸素運動が良いでしょう。ヨガなどの呼吸法を伴う運動も効果があります。1回に長時間をやるのでなく、1回は20~30分、週4日程度がお勧めです。
まとめ
日本はストレス社会であり、メンタルヘルスに支障をきたす人がたくさんいます。過剰なストレスは脳のセロトニン分泌を低下させることで様々な病気をつくり出します。仕事などで無理をし過ぎないように注意し、食事、睡眠、運動に気を配った規則正しい生活を心がけましょう。