燃え尽き症候群とは
更新日:2021年11月13日
ボクシング漫画の名作「あしたのジョー」のラストシーンを憶えていますか?チャンピオンとの死闘を終えて、すべてを出し尽くしたジョーはコーナーに座ったまま立ち上がれません。そして、最後に「燃え尽きたぜ、真っ白にな」とつぶやきます。
顧客サービスを提供する仕事では、頑張り過ぎでジョーのように燃え尽き、働く意欲を失ってしまう現象があります。本来の元気な姿が消耗しきって別人のようになるため、そのまま「燃え尽き症候群」とか「バーンアウト」と呼ばれています。
今回は燃え尽き症候群について説明します。
【動画解説はこちら】
【医療従事者や介護職に多い】
コロナ医療を担当する医療者たちにも燃え尽き症候群になる人がたくさんいます。次から次と運ばれてくる患者さんに休む暇もありません。「困っている人に奉仕して、その人たちの喜ぶ顔が見たい」と理想を抱いて医療現場に入ったものの現実は違いました。患者さんから感謝の言葉すら聞くことができず、ただ仕事に追われる毎日に情緒は枯れていきます。
その上、通常の医療が縮小されたために病院の経営も危うくなり、以前よりも頑張っているのに給料は下がってしまいました。人によっては同僚や患者さんに不愛想になったり、冷たい態度をとるようになりました。さらに仕事への意欲を失った人もいます。
【燃え尽き症候群とは】
燃え尽き症候群とは正式な病名ではなく、情緒の使い過ぎで発症するうつ病と考えたら良いでしょう。そもそも優しさや思いやりなどの情は、人からもらわないで、ただ人に与えるだけでは心が枯れてしまうのです。
どんな病院にも愛想がなくて冷たい医師や看護師がいます。患者さんたちはその態度や言葉に傷ついてしまうことがあります。もしかするとその医師や看護師は燃え尽きを起こしているのかも知れません。実は、医師や看護師には精神科に通って抗うつ薬や睡眠薬を飲んでいる人がとても多いのです。
【その他の職種でも起こる】
燃え尽き症候群は、医療や介護だけでなく、教員、レジャーや宿泊施設の従業員、CA、営業職、飲食店での接客など、顧客サービスを提供する仕事全般に起きることがあります。特にやる気がある人、ひたむきな人、人との関りが好きな人がなりやすいと言われています。
顧客サービスを提供する仕事の方で、次のような症状がある場合は燃え尽き症候群かも知れません。ぜひチェックしてみてください。
【燃え尽き症候群6つのチェック項目】
1.心も体も疲れ果てている
希望をもって仕事を始めたのに、最初の頃の満足感はなくなり、最近ではともかく疲れが残ってしまいます。肩こりがひどく、頭も重く、ただ寝ていたい、という感じです。
2 .お客さんへの気配りが面倒くさいし、顔を見るのも嫌
あれほどお客さんと話すのが好きだったのに、今ではお客さんが来ないことを願ってしまいます。お客さんが来ても、以前のように気持ちよく接待することができず、早く用件だけ済ませて帰ってもらいたいと感じます。気持ちが伴わずに機械的に働いてしまいます。
3.同僚と話したくない
同僚とは仕事終わりに飲みに行ったり、仲良くやっていたのに、最近はあまり関わりたくありません。嫌いになった訳ではないのですが、付き合いが面倒になりました。できれば仕事中も話したくありません。
4.職場に行くのが辛く、仕事中はいつも早く帰りたいと思っている
眠りが浅く、早朝に目が覚め、職場に行くことを考えると辛い気持ちになります。日曜の夜は1週間が始まるかと思うと暗い気持ちになります。仕事中は早く帰ることばかり考えて、しょっちゅう時計を見てしまいます。
5.仕事がつまらないし、辞めたい
この職業につくためにあれほど努力してきたのに、不思議なくらい興味がなくなりました。今では仕事の嫌な部分ばかりが目につきます。お金にゆとりがあれば、仕事を変えたいというのが本音です。
6.仕事の実績や評価はどうでも良くなった
最初の頃は仕事で優秀な成績を上げて、出世するのが目標でした。最近はどうでも良くなっています。1日の仕事を終わらせることしか頭にありません。
これらの症状が思い当たる方は燃え尽き症候群かも知れません。どうしたら良くなるのでしょうか。
【良くなる方法】
燃え尽き症候群の治療は基本的にうつ病の治療と同じです。まず仕事量を減らして、できるだけ休む時間を増やしましょう。十分に休みがとれないならば、休職や仕事をやめることも考えましょう。
仕事への向き合い方を変えることも大切です。ただ仕事の手を抜けば良いわけではありません。燃え尽き症候群は、仕事だけに幸福を求めている人がなりやすいと言われています。家族や友人との交流、趣味の時間など、仕事以外で楽しい時間や生きがいをつくりましょう。こうした時間は、心の中の情をはぐくむ大切な時間です。
プライベートが充実すれば、患者さんやお客さんにいくら情を使っても枯れることはありません。仕事の中に幸福を感じ続けるためには、仕事ばかりせずにプライべートも充実させることがコツです。仕事とプライベートのバランスのとれた生活を送りましょう。
ただし、不眠や食欲不振があるようならば薬の治療も必要です。十分な休養をとっても改善がない場合は精神科を受診することをお勧めします。