中小企業における職場復帰までのプラン(産業医がいないケース)

 更新日:2021年4月6日

  大企業に限らず、中小企業でも休職者が出てしまうのは、現代社会において、避けられないことかも知れません。しかし、中小企業では、マニュアル作成やメンタルヘルス対策を行っていない場合が多いので、実際に休職者が出た場合、どのように対応すればよいのかわからないケースが多いようです。

労働者が50名以上を越える事業所では、産業医の選任が義務化されていますので、休職者対応のアドバイスを産業医からもらえます。しかし、労働者が50名未満の事業所の数が多いため、産業医がいないケースが多いのが一般的です。

今回は、その際にどのように対応していけば良いかをご説明していきます。下記は厚生労働省の指針にあります職場復帰までのプロセスになります。

職場復帰における一番の問題点は、一度職場復帰したものの、病状が再発し再休業となってしまい、休復職を繰り返してしまうことです。うつ病はとても再発の可能性が高いにも関わらず、職場でのメンタルヘルスの知識が不足している管理者が、職場に復帰したから「完治した」という認識を持ち、その労働者に通常通りの業務をさせてしまうケースが多く見られます。うつ病は長期的に付き合っていかなくてはならない疾患であるため、ケアを怠り、再発するというケースが多いのです。

 

【ステップ1】病気休業開始および休業中のケア

労働者がうつ病を患って、休業を申請してきた場合、会社はとても驚くと思います。「まさかこの人が」、「この間まで元気そうだったのに」など予想外の人が休業する可能性もあります。今までマニュアル作成などしていなかった会社では、休業対応を急いで調べるなどするかもしれません。

労働者がうつ病になった際に、働きながら治すか休業させるか判断が問われます。基本的には本人の意向をくみ取り、対応を決めていきますが、重症度が高い場合は、できるだけ休業するように勧めます。

職場は、安全配慮の義務から専門家の書いた診断書に従うことになり、休養をする労働者の業務を他の社員に引き継がせ、当面の対外的な支障が最小限となるような体制を整備しなければなりません。

「休んで治す」方向で対応することになれば、職場側は、労働者の精神的な孤独だけでなく、職場復帰や今後のキャリアについての不安などに対し、フォローしていく必要もあります。

しかし、休職中に、会社側から頻繁に連絡することは、本人の負担となりますので、できるだけ避けるのが賢明です。本人の同意を取った上で、家族などに支援してもらうように伝えるのも方法かもしれません。

【ステップ2】主治医による職場復帰可能の判断

職場復帰が可能であると判断する目安としては、①医学的側面(就業に耐えられる状態、治癒している必要はない)、②本人の側面(職場復帰の意思があり、かつ準備が整っている)、③職場の側面(職場復帰を支援する準備が整っている)、という3点があげられます。

これらの条件がそろわないとスムーズな職場復帰は困難と考えます。①は主治医による判断ですが、②③は本人と職場との責任になります。

【ステップ3】職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成

産業医がいる場合は、産業医と精神科主治医と連携をとり、職場復帰の可否を判断します。産業医のいない中小企業では、精神科主治医に出された意見書をもとに、本人と会社で話し合いを行い、判断します。メンタルヘルス会社が介入してくれると専門的なアドバイスがもらえるため良いのですが、そうでない場合、人事担当者と本人との話し合いになるため、人事担当者がメンタルヘルス知識を持っておくことが重要になります。

【ステップ4】最終的な職場復帰の決定


最終的な職場復帰の決定は、事業主が行います。しっかりと本人と会社側で話し合った上で職場復帰を決定するようにしましょう。また、できるだけ主治医から聞いた無理のない働き方をするようにします。

【ステップ5】職場復帰後のフォローアップ

適切な準備を行い、慎重に職場復帰を判断したにもかかわらず、職場復帰後、数か月で休職になることは多々あります。あらかじめ作成しておいたマニュアル通りいかなくとも、状況に応じて臨機応変に対応することが求められます。

一般的にうつ病の再発率は60%と言われているため、今まで通りの働き方はさせられません。本人も「上手な働き方」というのを探りながら働くため、戸惑いながらの手探り状態であると言えます。随時会社側のフォローが必要になります。とは言え、周り含め過度に気をつかわれてしまうと働きづらくなる可能性があるため、難しい問題です。

また、働きながら治療も続けるので、診察に行く時間を確保してあげるなどの配慮も必要になってきます。

そもそも休業になった原因が過重労働やハラスメントなど職場による問題が主だった場合、根本的な職場改善を図らなくてはなりません。そこを怠ってしまうと再発は防げず、また次の休職者がでてしまう可能性も大いにあります。

⇒「社員が休職した場合の対応|会社ですべきこと、すべきでないこと

【参考文献 精神神経学会雑誌 2021 VOL.123 No.2 休複職者の現状と実践的な対策 高野 知樹】

資料請求・お問い合せはこちら