季節性うつ病とは

 更新日:2022年2月2日

 北欧、アラスカなどの緯度の高い地域で、毎年冬場になると発病し、春になると良くなるうつ病があることが知られ、1984年に季節性うつ病・冬季うつ病と名付けられました。

特徴としては、若い女性に多く、気分が落ち込むだけでなく、過食になります。特に甘い物を食べたくなり体重が増えます。また、過眠の傾向も出るので、まるで冬眠する動物のような状態です。

最近では、うつ病の人の20%が何らか季節の影響を受けることが分かりました。うつ病では比較的よく起こる現象のために、季節性うつ病という独立した病名はなくなりました。「季節型」といううつ病の一つのタイプとして考えられるようになっています。

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季節の変わり目で具合が悪くなる理由

健康な人でも、季節の変わり目や冬場はあまり調子が良くない人もいます。それは季節によって日光の量が変化し、それを感じとった脳でセロトニンとメラトニンの2つの物質の分泌量が変化するためです。

セロトニンとは「幸せ物質」と言われるように気分に関係する物質です。分泌量は夏場に多く、冬場に少なくなるという年間を通したリズムがあります。そのために、人は冬場よりも夏場の方が活動的になります。セロトニンの分泌が通常よりも少なくなるとうつ病パニック症、摂食障害などの病気になります。

メラトニンは、「睡眠ホルモン」と呼ばれ、これが増えると眠気が出てきます。分泌量はメラトニンとは逆で、夏場に少なく、冬場に多くなるというリズムがあります。そのために、人は夏場よりも冬場に眠くなるのです。

光に感受性の高い人は、冬に日光が少なくなるとそれに敏感に反応し、通常よりもセロトニンの分泌が減り、メラトニンの分泌は増えてしまいます。こうしたことから気分が落ち込み、睡眠過多となって、うつ病に影響を与えてしまうと考えられています。

セロトニンとメラトニンの1日の変動

セロトニンとメラトニンの分泌は1日の間に変動があります。人は朝日を目で感じると脳が朝を認識して脳内が活動モードにリセットされます。そこでセロトニンの分泌が増え、メラトニンの分泌が止まります。この14~16時間後にメラトニンは少しずつ分泌されて徐々に増えて行きます。

この時にセロトニンが原料として用いられ、セロトニンの分泌は減っていきます。メラトニンが脳内に増えるに従い自然な眠気が出るようになります。夜に眠くなるのはそのためです。また、メラトニンは細胞の新陳代謝を促し体の疲れをとる作用もあります。

このように、朝日がスイッチとなって、セロトニンとメラトニンの1日のリズムが起こり、私たちの日々の活動がつくられています。

日光でないと脳のスイッチが入れられない理由

なぜ日光でないと脳のスイッチが入らないのでしょうか?部屋の蛍光灯ではだめなのでしょうか?脳のスイッチを入れるためには、1500~2500ルクスの日光のようなつよい光を15分くらい浴びることが必要です。部屋の蛍光灯の明るさは500ルクス程度ですから脳のスイッチが入りにくいのです。

以上のことから、うつ病で季節型の人や、冬場に調子が悪くなる人は、朝日を浴びることが予防になることが分かります。朝15分くらいの散歩ができたら最高ですが、通勤時間を利用して日を浴びながら歩くことも良いでしょう。外出しない場合でも、窓から1メートル以内で15分くらい日に当たることでも良いと言われています。

日光の代わりになる器具

季節型うつ病の治療に高照度光治療というものがあります。日光を浴びる代わりに、室内で特殊な照明器具を使って毎朝30分~1時間程度つよい光に当たる治療です。軽症の場合は、抗うつ薬に劣らない効果があると言われています。自宅でも気軽にできるもので、病院によっては器具をレンタルしているところもあります。

同じものをアマゾンなどの通販でも1万円程度で購入することができます。基本的に副作用はありませんが、稀に躁状態になる人もいるので、すでに通院中の人は購入する前に主治医に相談しましょう。

日光はビタミンDの生成にも大切

日光の大切さは、これだけではありません。皮膚は紫外線を浴びることでコレステロールからビタミンDをつくります。ビタミンDは、骨や歯をつくる、免疫作用、体内時計にも関わる重要な物質です。うつ病や認知症とも関連があります。

日々食事からも取っていますが、1日に必要な量の2/3は皮膚で合成されています。やはりうつ病でふれたのと同様に、皮膚がビタミンDをつくるためには、毎日15分程度の光を浴びる必要があると言われています。

まとめ

朝日を浴びると誰しも気持ち良いと感じるはずです。日光も私たちの栄養の一つなのです。朝日をわずか15分間だけ、光の栄養を取ることでメンタルヘルスも改善されていきます。

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