ストレスチェック 高ストレス者対応の問題点
更新日:2024年11月18日
ストレスチェックとは労働安全衛生法に基づき、2015年12月から労働者50人以上の事業場で実施を義務付けられているストレス検査です。2024年10月、労働者50人未満の事業場でもストレスチェック実施を義務づける方針を決定しました。
事業場において労働者のメンタルヘルスケアは、取り組みの段階ごとに、3つに分類されます。①労働者自身のストレスへの気付き及び対処の支援並びに職場改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防ぐ「一次予防」、②メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う「二次予防」、③メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する「三次予防」に分けられます。ストレスチェックは、この一次予防を主な目的としており、50人以上の労働者を抱える事業場では、すべての労働者に対して年1回の実施が義務付けられています。
2024年
労働者側はストレスチェックを受検するかどうかは任意となりますが、できるだけ全員が受検することが望ましいとされています。また、実施にあたり、労働者の個人情報を適切に取り扱う必要があります。そのため検査結果を事業場側が見ることはできません。
ストレスチェック実施後に、事業場の1割程度の労働者が高ストレスとして判定される可能性がありますが、高ストレスを受けた労働者は、産業医面談を受けることが推奨されます。しかし、産業医面談を受けるためには、会社側に自分が高ストレスであるということを開示する必要があるため、実際に産業医面談を受ける者は1%以下という報告もあります。
ストレスチェック実施に対して、不利益取り扱いの禁止が適用されるため、会社側に自分が高ストレスであると伝えたからと言っても、減給、降格、部署異動、解雇など不利な扱いをすることは禁止されています。
それでも産業医による高ストレス面談を受ける人が少ないというのが現状です。確かに、自分に高ストレス判定通知が来た際に、わざわざ会社側に開示し、産業医との時間調整を行ってもらい、面談を受けるよりも、そのまま近所の精神科や心療内科に行った方が簡単かもしれません。
それでも、自身に対するストレス状況を把握でき、病院につながったことはストレスチェックを受検したことがとても有意義であると言えるでしょう。
しかし、産業医面談を受けるにあたり、会社側に高ストレスであるということを開示すれば、職場改善を図ることができます。産業医面談を受けることなく、会社側がストレス原因が把握できないままであると、職場改善ができず、根本の問題解決ができないのです。
現在、以上のことがストレスチェックの問題点として、とりあげられています。ストレスチェックには労働者のメンタル不調を未然に防止するという目的がありますから、ストレスチェック後の職場改善は必須と言えます。
では、ストレスチェックで職場改善をするためにどうしたらよいでしょうか?
まず一つ目はストレスチェック結果における集団分析をきちんと行い、専門家のアドバイスをきちんと受けることです。現在ストレスチェックの個人集計だけで終わるという会社もありますが、これでは実施意味をなさないため、集団分析は必須となります。
そして次に社外相談窓口の設置です。社外相談窓口の設置をすることで、産業医面談を申し出ない高ストレス者に対して、ケアをするだけでなく、職場改善にも反映できます。
基本的に相談窓口では匿名性が守られているため、会社側に特定されることはありません。相談者のストレス問題が職場の問題である場合、本人と話し合いながら、会社側にうまく伝えていくことも可能です。
職場でのストレス問題がハラスメントの場合、産業医面談で対応することは難しく、カウンセラーなどのハラスメントの専門家が仲介に入ることが望ましいとされます。また、社内の相談窓口と社外の相談窓口では効果が全く異なります。そもそも社内の相談窓口に相談する労働者はほとんどいなく、仮に相談してきた場合は、すでに大事までいってしまっているケースが多いと言われています。しかし、社外相談窓口では、匿名性や社内の人間ではないという安心感から労働者は相談しやすいというメリットがあります。
以上のように社外に相談窓口を設置することで、メンタルヘルスケアの「一次予防」、「二次予防」、「三次予防」の全てを網羅することができます。そして働きやすい会社にするための職場改善を行うことができるのです。