ストレスチェックによる職場解析
テレワークによって職場のストレス負担が増えた例
更新日:2021年7月16日
前回の稿では、ストレスチェックの職場解析の基本的な見方を説明しました。
職場解析で見るポイントとして、以下のものがあります。
(1)職場の高ストレス者の数
(2)仕事の量と質の問題からくるストレスの影響を職場ごとに数値化した健康リスクA
(3)職場の人間関係からくるストレスの影響を職場ごとに数値化した健康リスクB
(4)健康リスクAとBを加算した総合的な職場ストレスを数値化した総合健康リスク
具体的なケース
ここでは、具体的なケースについてお話していきたいと思います。コロナ禍での在宅勤務の影響により職場のストレスが悪化したケースです。
(※今回の内容は、実際の企業様にご許可をいただき、さらに特定できないように多少の改変をして出させていただきます)
従業員数60名程度のIT関係の会社です。開発、営業、総務の3部署があります。毎年のストレスチェックでは高ストレス者は3名前後で、産業医面接では職場状況に問題は見つかりませんでした。健康リスクもマイナスの数字が出て問題がありませんでした。
ところが2021年度のストレスチェックでは、高ストレス者が7名に増え、従業員の12%となりました。高ストレス者が10%を超える場合は職場のストレスに要注意のサインです。
総合健康リスクを見てみると、会社全体では大きな健康リスクはほぼ0で問題はありませんでした。そこで部署ごとに健康リスクを見てみると、営業部の総合健康リスクが高くなっていました。他の部署の健康リスクが低かったため、会社全体の健康リスクは相殺されて問題がなかったのです。実際に高ストレス者のほとんどが営業部からでした。どうやら営業部に何か問題があるようです。
コミュニケーション不足が判明
そこで、営業部の健康リスクを見てみると、総合健康リスクが8ポイント高く、うつ病などのメンタルヘルスに障害が出る可能性が、通常の職場よりも8パーセント多い確率が出ていました。さらに、健康リスクA、健康リスクBを見てみると、健康リスクAが3ポイント高く、健康リスクBが5ポイント高く出ていました。人間関係を示しているBがより高いということは、営業部内の人間関係で何か問題が発生しているようです。従業員間でのコミュニケーションがうまくとれていないことが数字で出ているのです。
さらに営業部の高ストレス者の産業医面接において、面接参加者が口をそろえて訴えたのは、コロナ禍の在宅業務での従業員間でのすれ違いでした。オンライン作業のために、相手の表情がよく見えず相手の意図を深く読み取れない、質問があっても直接聞けば簡単に答えを得られるのに、リモートなのでよけい複雑になる、と言った声でした。これが健康リスクBに反映されていたようです。
仕事効率も落ちる
さらに、コミュニケーションが悪いために仕事の効率も悪くなっており、それが健康リスクAに反映されていたと推測できました。人事の方いわく、従業員様の中には、上司が部屋に一人でモニター越しに話すので、注意する時は周囲に誰もいないかのように厳しく注意されていたそうです。そのために、注意をされる度にモニター越しにみんなにも聞かれてしまい、さらし者のように感じていたそうです。相談相手もみつからずに一人で悩み、孤立感を感じていたそうです。
改善指導の結果
以上の解析結果を産業医と総務部長に伝え、営業部の改善を指導してもらいました。具体的には、在宅勤務時間を減らし、コロナ感染予防に注意しながらできるだけ職場で仕事をするように勤務形態を改善させました。
こうした職場改善の後、およそ3ヶ月が経過しましたが、先ほどの高ストレス者になった従業員の産業医面接では、仕事がしやすくなったという言葉を聞くことができています。
まとめ
ストレスチェックによる職場解析とその利用の仕方について、最近の事例をもとにお話しました。コロナ禍の在宅勤務による従業員間のコミュニケーションの不足がストレスとなっているケースでした。
在宅勤務によるストレスは多くの職場で起きている問題のようです。このようにストレスチェックが職場環境の改善につながることを願ってやみません。
【その他参考ブログ】